キミのおこした奇跡side S


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謎の壁と黒ラブ事件


中学生探偵始動


最近、


「あ、じゃあ蘭も誘おうか?」


あおいがやたらと蘭の名前を出す。
…気のせいか?


「オメーあおいになんか言ったか?」
「え?なんかって何?」
「いや知らねぇけど」
「はぁ?じゃあ私もわかるわけないじゃん!」


そりゃそうだ。
でもなぁ…。
上手く言えねぇけど、なーんか蘭の名前を不自然なくらい話題に出してる気がすんだよな…。
今までだって2人でメシ食ってたし、勉強だって2人でしてた。
だけど最近その「2人」ってのに蘭を入れたがってるような…。
そんな気がすんだよな…。
俺の気のせいか?


「今度蘭も呼んでさ、」


ほらな、また蘭。
なんでだ?
え、もしかして俺と2人でいたくない?
は!?マジで!?
でもいきなりそういう極論に持っていくのは…。
いや、だからって可能性を自分の私情で潰すのは!
いやいや、マイナス思考になりすぎるのもっ!
…だぁぁぁぁぁぁっ!!!
もう頭ん中がぐっちゃぐちゃだ!
あおいのこと考え始めると冷静な思考力っていう、探偵には必要不可欠なハズのものがあっという間になくなる。
…俺こんなんでホームズみてぇな探偵になれんのかよ…。


「工藤くんどうかした?」
「…別になんでもねーよ…」


どうかした?じゃねーっての!
オメーがどうしたんだ、って話だ。
でも別に避けられてるわけじゃ、ねぇんだよな…。
フツーに話すし、フツーにメシも食うし。
ただ2人きりになるのを…


「ま、まさか」


アレか?
俺がキスしたからか?
でも今さらじゃねぇか?
キスされんのが嫌で2人きりを避けるならもっと前からそうしてねぇか?
いきなりなんでだ?
俺他にもなんかしたか?
いや、してない!…ハズだ。


「どーっすかなぁ…」


気分転換も兼ねていつもの公園でいつものようボールを蹴る。
今日はいつにも増して人が多い。


「…よっ、…とぅ!」


ドガッ!!


「「「わぁぁぁ!!」」」
「……っと、…ゃあ!!」


ドガッ!!


「「「うわぁ!!」」」
「すっげぇ!!」
「ヒデだぁ!」
「ベッカムだぁ!!」


いつの間にかいた小さい観客の声援に、少し気分が上がってきた。


「よーし!特別にオーバーヘッドシュートを見せてやる!…オメーらは危ねぇから、ぜってぇマネすんじゃねーぞ?」
「「「うん!」」」
「…とっ、いっ」
「キミ!」
「いぃ!?」
「「「あはははは!」」」


ひ、人がこれからオーバーヘッド決めようとしてるときに声かけてくんじゃねぇよ!
危ねぇなっ!!!


「ごめんごめん。実は3日前のことなんだが…、この公園で僕を見なかったかな?」
「はあ?」
「朝の、10時半頃なんだけど…」


なんだこの人…。
頭大丈夫か…?


「あのねぇ、平日のそんな時間、公園にいる中学生なんて普通いませんよ。俺だって授業うけてたし!」
「そうか…。そうだよな…」
「…いったい」
「ありがと」


そう言って俺に尋ねてきた男は、別の人間の元に去っていった。
そこで同じ質問をしてる。
…なんだ、あの人。
それに…、あの木陰の2人組。
あれ刑事だよな?
…あの人を、尾行してる?
俺はこの時初めて「事件の臭い」ってヤツを感じた気がした。
男はそれから何人も何人も、同じ質問をぶつけていた。


「17人です」
「え?」
「あなたが僕に声をかけてから、1時間の間に同じ質問をした相手です。何か事情があるようですね?良かったら、相談に乗りますよ」
「相談、て…キミは中学生だろ?」
「ただの中学生ではありません。後ろに『探偵』がつきます」
「探偵?」
「もちろん、まだ自称ですけど。僕の幼馴染で同級生の父親が本物の探偵をやっていましてね。少なくとも、そのおっちゃんよりは推理力はあると思います」
「しかし…」
「たとえば、あそこに立っている2人の男。刑事ではありませんか?」
「…そ、そうだけどっ!どうして…?」
「若い男の方はわかりませんが、中年の男の方は検討がつきます。明らかに武道をやっているがっしりした体。雨風にさらされて薄汚れたコート。聞き込みを重ねて磨り減った靴。そして、一瞬たりともあなたから目を離すまいとする血走った目。全てが刑事であることを物語っています。しかも、古いタイプの、ね」


そう。
アイツのこと以外ならこんなにも冷静に周りの状況を把握できる。
なのに、なーんであおいが絡むとああもぐだぐだになっちまうんだ。
ほんっと、何から何まで厄介な女。
俺の冷静な洞察力にその男も感心したようで、夕暮れの公園でポツリポツリと語り始めた。

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bkm

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