キミのおこした奇跡side S


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ホビットカップル誕生


黒猫の涙


教室にいたらなんだかんだと言われる。
鬱陶しいから廊下に出ることにした。


「「あ」」


幸か不幸か元凶を見つけた。


「俺が言いてぇことわかるよな?」
「はい、すみませんでした」
「どういうことだ、あれは?」
「で、でもね!あれは私も被害者で園子がっ」
「オメーが園子にベラベラ喋ってなきゃこーならなかったんじゃねーのか?」
「…すみませんでした」
「だいたいなんだよ、ホビットカップルって!意味わかんねー」
「…え?ホ、ホビットカップルなんて言われたの?」
「おー。オメー意味知ってっか?」
「工藤くん児童文学とか読まなそうだもんね…」


よくわかんねぇけど、なんかすげぇ気まずそーな顔された。


「児童文学?まぁ…全く読まねぇわけでもねーけど?それがどうした?」
「…私に怒らないでね」
「あ?…なんだよ、言ってみろ」


芳賀は目を泳がせて言いにくそーにしてる。
…なんだ?ホビット。


「ホビットって、児童文学に出てくる小人族のことだよ」
「…」
「…」
「…」
「わ、私が言ったんじゃないよっ!!痛い痛い痛いっ!!」


小人族!?
小人族ってなんだよソレっ!!
オメーと一緒にいるせいで俺は小人族っ!!


「こんなところでじゃれてるなよー!」
「ほんっと仲が良いね!」


その声にハッとして周囲に目をやると、どいつもこいつも集団園子ってくらいニヤニヤした顔でこっちを見ていやがった!
ブチッて何かが切れたら音を聞いた気がした。


「テメーら見せもんじゃ、ねーーーっ!!!!」


ふざけんじゃねーよっ!!
俺だって好きで小さいわけじゃねーんだっ!!
それを小人っ!!


「工藤、今日荒れてたなー」
「…そんなことねーっすよ」


部活帰り、ゾロゾロと校門に向かう。
イライラしてた俺の練習はそりゃあひでぇもんだった。
…それもこれも全部あのバカ女の


「お!工藤ー!彼女も今お帰りだぜー!!」
「はあ?彼女って誰が」


まだ少しイライラしながら歩いてると、同級生のチームメートが声をかけてきた。
ソイツが指さす先を見ると芳賀もこっちを見てた。
気がしたけど、そのまま「とぼとぼ」ってのがピッタリな歩き方をして校門から出ていった。


「あれ?彼女気づかなかった?」


いや…、あれは気づいたけどそのまま行った、感じじゃねーか?


「でもほんっと小さいな!下向いてたせいもあるけど余計小さく見えた!」


そう、だよな?
明らかに俯いて歩いてた、よな?
なんか、あった、のか?


「あー、腹減った!」
「レモンパイ一口だけじゃ足りねーよな?」
「コンビニ寄ってなんか買って食うか!な、工藤!」
「…悪ぃ、俺用思い出したから帰るわ」
「え?あ、おいっ!」
「…あーあー、走って彼女の後追っかけてっちゃって」
「アレで好きじゃねぇって言うか?」
「なー?」


そんなこと言われてるなんて気づくハズもなく、先を歩いてる芳賀を追いかけた。
俺も走ったし、芳賀自体も歩くの早ぇわけじゃねーし。
すぐに追いついた。
けど、後ろから見ても明らかに肩を落としていてすぐに声をかけるのを躊躇った。
こうやって後ろから見るとほんっと小せぇよなぁ…。
俯いてるせいでいつにも増して小さく感じる。


「おい」


俺の声にも気づかずにほんと「とぼとぼ」って感じで歩く姿は哀愁を漂わせ猫背で歩く猫そのもの。


「芳賀」
「…もう泣きそう…」
「は?なんで?」
「え?って、工藤くんいつからいたの?」
「…悪ぃかよ」


いつからって…。
まぁあれだけ下向いてたら気づかねぇよな。


「で?」
「え?」
「泣きそーって?」
「…工藤くんに関係ないよ」


確かに俺には関係ねーかもしんねぇけどなぁ!
目の前でわかりやすく落ち込んでるヤツ放って帰るほど俺は酷い男じゃねーし!


「今日は?」
「え?」
「メシ」
「…お1人でどうぞ」


何があったのか知らねぇけど、しゃーねぇ。
コイツ帰っても1人で話聞いてやるヤツがいねぇんだし、つきあってやるよ。


「芳賀」
「何ー?」
「ついて来い」
「え?ち、ちょ、何!?ちょっと工藤くんっ!」
「仕方ねーから」
「え?」
「今日は俺がメシ作ってやるよ」
「…は?」


前も思ったけど、コイツ手首も小せぇよな…。
いや、細いって言うのか?
蘭は空手やってるせいかなんかもっとしっかりしてたような気がするけど、女ってこんなもんなのかな…。


「工藤くん」
「なんだよ」
「メシを作ってくれるというお話でしたが」
「作ってやったじゃねーかよ」


わざわざお湯沸かして、粉末もちゃんと入れてやったじゃねーか。
しかも味噌味のカップラ!


「これ私でも作れる…」
「そりゃ良かったな」
「…工藤くん、こんなのばっかり食べてるから背が伸びないんだよ」
「今日はたまたまだっ!!」


一言余計だっ!!


「3分経ったぜ?」
「…いただきます」


ちゅるちゅるちゅるちゅるちゅるー


2人向かいあって食ってんのがカップラって、なんか虚しいのは俺だけか?


「工藤くんて、」
「あん?」
「食べてる物は別として、いっつもこうやって1人で食べてたの?」
「あー、まぁ…だいたいそうだな」
「…私、」
「あ?」
「家庭科部も頑張るね」
「…おー」


そこまで言うと芳賀がいきなり泣き出した。
正直ビビッたけど、コイツはその家庭環境とかから、俺が想像つかないような「何か」を抱えてても不思議じゃねぇし。
やっぱり言えねぇなんかがあったんだろーな、って思った。


「泣くほどウメェか、そのラーメン?」
「う、うんっ!!」


女優の泣き顔を間近で見たことあるせいか、ぶっさいくな泣き方だとも思ったけど、でもそれがすげぇ、コイツらしいとか思った。


「工藤くん!」
「なんだよ」
「私、料理絶対上手くなるから!」
「…いーことだな」
「うん!毎日は無理でも工藤くんに美味しい料理作るからっ!」
「…美味しい料理が出来るようになってから言え」
「わかった!待ってて!!」


なんでそういう話になったのか俺にはさっぱりだけど。
それでもコイツが「誰かに美味しい料理を作る」って目標が出来たなら、まぁいーんじゃねぇの?
残りのカップラを2人で啜りながら、夜が更けていった。

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bkm

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