キミのおこした奇跡side S


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夏休みの予定


専属生徒


「食べる時はご飯と一緒に口に入れてください」
「はあ?今度はなんだ?」
「塩加減間違えました…」


俺の出したカップラを食べた翌日。
案の定とでも言うか学校に行ったら、また新しい噂で持ちきりだった。
今回は噂の内容から園子じゃなく、チームメートが散弾銃を乱射したらしい。
でもまぁ…。
事実なわけだし、いちいち反応すんのもめんどくせぇし。
放っておくことにした。
そんなことがあっても日常は過ぎ、いつものように芳賀の作った夕飯をうちで食べようって時。
たまに芳賀んちの場合もあるけど、なんでかほとんどがうちになる。
スーパーから近ぇからだろーけど。
目の前には見た目はまぁフツーと思われる料理が出てきたわけだけど。
一口食って、コイツ実は俺に嫌がらせしてんじゃねーかって思った。


「オメーこれ何作ったって?」
「ゴーヤチャンプルです」
「どこらへんがゴーヤチャンプルなんだよ?」
「全体的にゴーヤチャンプルです」
「オメーこれ食ったか?」
「だから塩加減間違えたって言ってるじゃん!」
「間違えたって量じゃねーだろ!?病気になんだろっ!!!ゴーヤの味なんかしねーじゃねーかよ!塩だろ、これ!!オメー何したんだよっ!」
「…だ、って…」
「あん?」
「…塩もみするとゴーヤの苦味が取れるって書いてあったから」
「書いてあったからなんだよ?」
「塩もみした」
「…で?」
「したんだけど、」
「なんだよ?」
「…その塩を洗い流すの忘れてそのままフライパンに入れました…」
「…」
「…ごめんなさい」
「オメー寝ながら料理してんじゃねーだろうな?」


あり得ねぇ…。
絶対あり得ねぇ失敗だ。
塩もみした塩洗い流さずそのまま出すってなんだよ…。
つーかどの段階で塩洗い流し忘れたって気づいたか知らねぇけど、気づいたくせによく堂々と出せるよな、この塩料理…。


「これでも真剣なんです」
「全く真剣さが感じられねぇけどな」
「…」
「ほら、貸せ」
「え?」
「え?じゃねーよ。失敗作食ってやるって言ってんだそれ寄越せ」
「…工藤くん」
「あ?」
「腎臓悪くなっても私のせいにしないでね」
「…オメーとりあえず水持って来い」
「わかった」


ああ、俺そのうち腎臓と言わずに内臓全部がおかしくなるんじゃねーかって、自分でも思うわ…。
でもまさか生ゴミに捨てるわけにはいかねぇし。
塩と水の格闘でなんとか自称ゴーヤチャンプルを食べきった。


「あー、メシ食ったのか塩食ったのかわっかんねー夕飯だった」
「…お粗末さまでした」
「ほんっと、粗末なもん出すんじゃねーよ」


いやマジで。
塩分取りすぎて血圧上がったとか、中学生でそうなったら泣くぞ。


「…そーいやさ、」
「うん?」
「オメーどうすんの?夏休み」


母さんから電話でハワイに誘われた時から少し、気になってたこと。
予定、あんのかな…。


「どーするも何も部活?」
「弓道部毎日部活あんのか?」
「うーん…あるような、ないような」
「なんだそれ」
「あ、うち基本自由参加なんだって」
「…来年行けんのかよ、全中」


なんつーヤル気がねぇ部活だ…。


「工藤くんは?」
「あー…」
「うん?」
「俺は、さ、」
「うん」
「前半部活やってて、後半は、ちょっと、」
「出かけるの?」
「あー…、親と、さ、」
「うん?」
「た、ぶん、2週間くらいか?ハワイにちょっと」
「へぇぇ、お金持ちは違うね!」


うちの学校じゃ海外旅行なんてフツーだけど。
コイツは、そもそも旅行とか、どうなんだろう、な…。


「って、工藤優作!?」
「え?父さん知ってんのか?」
「え!?あ、う、ん、ほら!クラスメートが工藤くんちのお父さん、すっごい有名な小説家だ、って…」
「ああ…」


コイツが父さんの小説読むと思わないから知ってたことにビビったけど。
でもまぁ、うちの親は2人とも有名人だから学校のヤツらはみんな知ってるからなぁ…。


「じゃあオメーがファンとか言うわけじゃねぇんだな」
「あー…ファン、という、か、」
「うん?」
「闇の男爵、どんなのか興味あって買ったんだ、実は」
「は?マジで?…わざわざ買わなくてもうちにあっから貸すぜ?」
「いや、うん、買ったんだけどさ、」
「おー」
「買ったんだけど、難しい漢字が多くて読むの諦めた…」


すっげぇらしくて、もうツッコミようがなかった。


「…芳賀」
「はい」
「オメー一番得意な教科何?」
「…音楽?」
「だよなー、やっぱり」


間違っても数学や、英語とか。
そっちじゃねーよな、オメーは…。
心の中でため息が出た。


「蘭から聞いたけど」
「うん?」
「オメー補習なんだって?」
「て、転校してきたばっかりだったから!」
「いやそれだけじゃねーだろ」


うっ!って表情をして胸を抑えてる。
…元がバカなんじゃねーか、やっぱり。


「オメーさぁ、」
「うん?」
「今度教科書持って来い」
「は?」
「メシ食った後勉強見てやる」
「…え、見返りは何?」
「…人が食うまともな料理」


その見返りもあんま期待できねぇけど。
ものはついでだし?


「どっちにしろ俺も予習できてちょうどいーし。持って来たら教えてやるよ」
「…でも、」
「あ?」
「工藤くんがSすぎて勉強にならない気がす痛い痛い痛いっ!!」
「…人の好意に対して随分な言いようじゃねーか」
「痛い痛い痛いっ!!ごめんなさいっ!見てください!!お願いしますっ!!!」
「…わかればいーんだよ」


Sすぎてってなんだよっ!
俺のどこがSだっ!!
こんなに面倒見てやってんのにっ!!!


「とにかく」
「なに!?」
「…」
「…ごめんなさい」
「とにかく、夏休みの課題も、出たら持って来い。ハワイ行く前に片づくように見てやっから」


たぶん、夏休み1人になるだろうし、コイツ。
…同情って思われても仕方ねぇけど。


「え!?夏休みの宿題写させてくれるの!?」
「…オメーがやんだよっ!!」
「痛い痛い痛いっ!!!」


俺の心配をヨソに全くのマイウェイ。
だからバカなんだよオメーはっ!
コイツの成績が補習つかねぇくらいに上がるのはいつのことだとため息が出た。

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