キミのおこした奇跡side S


≫Clap ≫Top

ホビットカップル誕生


英英辞典


あのバカ女のせいで「酷い男」のレッテルを貼られ1日が過ぎていく。
いや、どっちかっつーと園子のせいか?
どっちにしろ、アイツと関わらなきゃこんなレッテル貼られなかったはずだ。


「工藤ー!お前呼ばれてんぞー!」


次は歴史かぁ、なんて思っていた時に、教室の入り口にいたクラスメートに呼ばれた。


「呼ばれてるって誰に?」
「…」


出たな、元凶。


「オメー学校で話しかけんなって」
「私呼んでないしっ!蘭に用があって来ただけだしっ!!」


はあ?
じゃあなんで俺今呼ばれたんだよ。
少し視線をあげると芳賀の後ろにいたクラスメートがニヤニヤしながらこっちを見てた。
…アホらし。


「蘭!お願い!英語の教科書と辞書貸して!」


席に戻る途中で、芳賀の声が聞こえた。
ああ、アイツなんかもうすっかり馴染んでっから忘れがちだけど転校生だから忘れ物借りれるヤツ限られてんのか。
チラッと見た蘭の反応だと、貸し出せないらしい。
仕方ねぇなぁ…。


「うーん、まぁなんとかいたっ!」
「英語の教科書と辞書。それでいーんだろ?」


他に借りれるヤツいねぇんだ。
俺が貸してやるしかねぇだろ。


「ありがと」
「オメー落書きでもしたらただじゃおかねーからな」
「しないから、そんなこと!」


いや、オメーならあり得る。
どーでもいい、くっだらねぇこと落書きしそう。


キーンコーン カーンコーン


「あ!ヤバイ!じゃあ借りてくね!ありがと、工藤くん!」
「次使うから終わったらすぐ返しに来いよ!」
「わかったー!」


教室から走り去っていく芳賀を見送ると、クラスメートがニヤけた顔で俺を見ていた。


「…なんだよ」
「英語の教科書と辞書!それでいーんだろ?だって!工藤ってばカッコいーんだから!」
「その顔キモいぞ、オメー」
「何あのさりげない優しさ!俺が女なら惚れるね!」
「オメーが女でも俺がお断りだ」
「バカだなお前ー!そこはやっぱりあおいちゃんに譲らないとだろー!」
「…はあ?」
「おっと!工藤くんの前であおいちゃんなんて言ったら怒られちゃう?」
「席つけー」


言い返そうかと思ったら先生が来た。
だから俺は別に好きじゃねーし、つきあってもいねーっての!
チビでもバカでもあおいでも好きなように呼べばいーじゃねーかっ!


「ちょっと工藤くんっ!!」


授業終了のチャイムが鳴って1分もしないうちに芳賀がうちのクラスに来た。


「早かったな」
「何この辞書!?」
「何って英語の辞書だろ?」
「フツー英語の辞書って言えば英和辞典でしょ!?なんで英英辞典なのっ!!?」


はあ?
何言ってんだ、コイツ。


「英語の辞書に変わりねーだろ?」
「おおありよ!お陰でちっとも役に立たなかったじゃないっ!!!」
「そんなん知らねーよ。オメーが英語できねーのが悪ぃんだろ?英英辞典なんか国語辞典と同じじゃねーか」
「全然違うっ!!英語出来ないから学校で勉強してんでしょーがっ!!英英辞典使えたら勉強しないわよっ!この役立たず!!」


や、役立たずだぁ!?
誰が辞書貸してやったと思ってんだっ!!


「使えない辞書借りても借り損よっ!!」


この女っ!!


「夫婦喧嘩だ、夫婦喧嘩」
「やっぱりなんだかんだで仲良いよなぁ?」
「そりゃーそうよ!あおいと工藤くんは喧嘩するほど仲が良いってヤツだし!」
「園子あんまりそういうこと言わない方が」


気がついたら人だかりの中心にいた。
この女のせいで、こんなんばっかりだっ!


「うるせーー!!見せもんじゃねーんだっ!オメーらあっち行けっ!芳賀、オメーも用が済んだらさっさと出てけ!!!」


思わず襟を掴んだら、思ってた以上に軽くて簡単に摘み出せた。
ほんと猫みてぇなヤツだ。
いや、猫の方がもう少し大人しくて可愛げがある。
芳賀が帰った後も、クラスメートの冷やかしが続いた。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -