キミのおこした奇跡side S


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ホビットカップル誕生


機関銃が狙い撃ち


「そうだ!昨日もらった本にレモンパイ載ってたよ!しかも簡単そうだった!」
「いらねーからな」
「…工藤くんに作ってあげるなんて誰も言ってないんだけど」


俺以外に食わせる相手がいねーじゃねぇかよ。
どこにいるんだよ、オメーの神料理食ってやろーなんていう物好き。


「オメー、レモンパイなんか作ってねーで、きちんとしたメシ作れるようになれよ」
「きちんとしたメシ作れない人に言われたくないんですけど」
「ウルセェ」


きちんとしたメシも作れねぇヤツのメシを食ってやってんだからありがたいと思え!!


「ねぇ、うちって家庭科部とかある?」
「あ?あー…あるんじゃねーか?俺知らねぇけど。たまに部活中に校舎から良い匂いするし」
「…入ろうかな、家庭科部」
「弓道部はどうした?」
「かけもちで!」
「…オメーそんなに器用じゃなさそーだし、どっちかにした方がいいんじゃねーの?」
「失礼だな!弓道は絶対止めないし、家庭科部は死活問題だから…」
「かけもちねぇ…」
「それにどっちかだけだと、部活無い時早く家に帰っても1人で暇だしね!かけもちだったらどっちかが活動してるんじゃないかなぁって思って」


まぁそうだよなぁ、って。
部活なくて直帰したら4時とかから翌朝までずーっと1人なわけだし。
俺みたいに一緒にメシ食うかって誘ってくれる博士や蘭がいるわけじゃねーし。
なんかやっぱりコイツ、寂しいのかなぁ、とか。
そんなこと思った。


「家庭科部」
「うん?」
「作ったら食ってやるから持ってこい」
「…私が食べるんだけど」
「バーロォ、自分で作ったヤツを人に食べさせて評価されるから料理の腕も上がんだろ?」


他のヤツらは、家に持って帰って家族と食べたり、友達と食べたりするだろうけど。
家族はいねーし、友達もまだいねーだろうし。
オメーが作ったものを食べるヤツがいねぇじゃねーかよ。
それはちょっと、なぁ?
知ってて放っておくのも、なぁ?
芳賀がなんか言った気がするけど、蘭の声に掻き消された。


「新一!あおい!おはよう!」
「蘭、おはよう!」
「おー」
「あおい、ケータイ買えた?」
「うん!買った買った!ほら見て!」
「…それ買ったの?」


蘭が一瞬、俺を見た気がした。
わーってるよ!
俺だって買ってから博士に言われるまで「お揃い」になるなんて考えもしなかったんだ。
そーいうことが言いてぇんだろ?
買っちまったもんは仕方ねーじゃねぇか!


「じゃー俺先に行く」
「うん、後でねー」


蘭の異常なまでの笑顔に見送られ、先に学校に行った。
…アイツ絶対後でなんか聞いてくるな。


「新一があのケータイ薦めたんだって?」


ほらな。


「悪ぃかよ」
「ううん!別に悪くないよ!ただちょっと意外だったから」
「…アイツ説明書とか読まなそーだろ?わかんねーことが出てくるたびにいちいち説明書見てやるのめんどくせぇし。だからアレにしろって言ったんだよ」
「…そっか!お揃いだったら教えてあげられるもんね!」
「何々!?工藤くんあおいとケータイお揃いにしたの!?」


出た、機関銃園子…。


「俺はっ!元々買ってあっただろーがっ!アイツがたまたま俺と同じヤツにしただけだ!」
「たまたま〜?」
「何ニヤニヤしてんだよ、気持ち悪ぃなぁ!オメーあることないことベラベラ喋んじゃねーぞ!」
「大丈夫よ!見て工藤くん!!」
「あ?」


教室の隅で蘭と話していたんだけど。
そこに割り込んできた園子が自分の後ろを指差した。


「…テメーら何やってんだ」
「いやー!工藤が彼女とケータイお揃いにしたとか、これはどういうことか聞いておかないとだろ!」
「工藤から薦めたらしーぞ?」
「なんだなんだ、やっぱりラブラブじゃねーかっ!」


園子が引き連れて来たらしい野次馬の餌食にされた。


「実際はどうなのかみーんな気になってたけど、やっぱりつきあってんだな、お前たち!」
「つきあってなんかいねーって言ってんだろっ!!」
「またまた〜!お揃いケータイなんて意味深なことしちゃってさ〜!」
「俺もあんなちっちゃくてかわいい彼女ほしーなぁ…」
「アレでよければくれてやる。アイツは俺と無関係だ」
「…お前、いくらなんでもその言い方は酷いぞ」


何故か「酷い男」のレッテルを貼られ、その日の授業が進む。
むしろ俺は面倒見てやってるじゃねーか!
なんで酷い男になるんだよっ!
それもこれも全部あのバカ女のせいだっ!
くそっ!!

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bkm

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