■迷惑?初メール
ええっと、新刊コーナー、と。
ショッピングモール内にある本屋についてさっそく本を漁る。
確か、俺の好きな作家の新刊が2タイトル発売されてるハズ
ピリリリリ
ポケットに入れてたケータイがメールの受信を告げた。
誰だぁ?
from:芳賀あおい
sub :初メール!
本文:メール練習中!ちゃんと届いてる??
思わず笑っちまった。
ああ、確かに俺も初めてケータイ買った時はとりあえず蘭に練習メール送ったっけ。
to :芳賀あおい
sub :Re>初メール!
本文:おー
送信、と。
さて、あの作家の新刊は
ピリリリリ
from:芳賀あおい
sub :ちょっと!
本文:人が真剣に練習してるんだから、もっと真剣に返信してよっ!
はぁ?
なんだコイツ!
今ちゃんとつきあってやったじゃねーか!
あと20分もねー中で、俺は今日読む本を探さねーとなんだよっ!
何度もメールしてくんじゃねーよっ!
to :芳賀あおい
sub :Re>ちょっと!
本文:ウルサイ
これならもうメールこねぇだろ。
ええっ、と、あ!あったあった!
うっわ、両方後一冊でなくな
ピリリリリ
今この空間に擬音をつけるなら「ピキッ」てのがぴったりだと思う。
新作に手を伸ばそうと思ったら、携帯が鳴った。
from:芳賀あおい
sub :Re>Re>ちょっと!
本文:うるさいって何!?少しくらいつきあってくれてもいいじゃないっ!!
メールを見てどーでもいい内容だったからスルーして本を買おうとした。
ら、
「はっ!?」
後一冊ずつあったハズの本が、今の一瞬で2つとも無くなっていた。
…あの女っ!!
なんとしてもアイツをどつきたいと思う衝動は、考えるより早く体を動かしていた。
「いったい!!!」
「いちいちメールしてくんじゃねーよっ!!!」
オメーのせいで本買いそびれたじゃねーかっ!!
手に取ってみて、どっちか選んで買おうかと思ってたのによっ!!
「何すんのよっ!?」
「オメーが何してんだよっ!ゆっくり本選べねーだろーがっ!!」
手に取ってすらいなかったってのにっ!!
「本!?本なんていつでも選べるでしょっ!?私の初メールにつきあってくれてもいいじゃん!!」
「だからつきあってやっただろ!?しつけーんだよオメーはっ!!何回初メール寄越す気だ!?」
「しつこいっ!?まだ3回しか送ってないでしょ!?」
「1回送れば十分だろーがっ!!3回も送ってくんじゃねーよっ!!」
くすくす笑う声に、はっとして周りを見ると、人だかりができつつあった…。
「可愛いカップルー!」
「あれ帝丹中の制服でしょ?」
「女の子もちっちゃくて可愛いけど、彼氏の方も可愛いー!」
「私たちが中学生の頃あんな男の子いなかったよね?」
コイツといるとロクな注目浴びねー!
「行くぞ」
「うん…」
さっさとここから離れて、博士と合流しよう。
「あ、博士?待ち合わせ場所変更」
「なんじゃ、何かあったのか?」
「え?いや、別に…とにかく車に先行ってっから」
「あおいくんは?」
「あん?」
「一緒かの?」
「おー、一緒」
「なら2人で先に行って待っとってくれ」
「ああ、じゃあそういうことで…ほら、行くぞ」
「うん」
顔が熱いのは、さっきコイツをどつこうと全力疾走したせいだ。
ったく、なんなんだよ!
本も買えねーし、変な注目浴びるし!
もう一回怒鳴ってやろうかと、チラッと芳賀を見たら小さい体をさらに小さくして俯いていた。
…なんだってんだ!
オメーのせいだろーが!
とは思うものの、少し胸が疼く自分がいるのも確かで。
「芳賀、ケータイ出せ」
「え?」
「博士来るまで時間あるし、メールの練習つきあってやるよ」
仕方ねーから練習相手になってやることにした。
「隣にいるならメールじゃなくてフツーに話そうよ」
「オメーがメール練習してぇって言ったんだろ?それにつきあってやるって言ってんだ。どこにいようがいーだろ別に」
人の好意を無駄にすんじゃねーよ!
「早くしろよ」
「わかってるよ」
ピリリリ
from:芳賀あおい
sub :私は
本文:芳賀あおいです。
コイツやっぱりバカだ…。
「それくらい知ってんだけど」
「だからメールで返してよっ!!」
「へーへー」
to :芳賀あおい
sub :Re〉私は
本文:知ってる
「他に言うことないの?」
「メールで返せ」
「…」
from:芳賀あおい
sub :Re〉Re〉私は
本文:他に言うことないの?
to :芳賀あおい
sub :Re〉Re〉Re〉私は
本文:ない
from:芳賀あおい
sub :Re〉Re〉Re〉Re〉私は
本文:あのねー、コミュニケーションて言葉知らないの?工藤くん女の子苦手なんじゃなくて、女の子に対する接し方わかんないだけじゃないの(#`皿´)
to :芳賀あおい
sub :Re〉Re〉Re〉Re〉Re〉私は
本文:は?どこに女の子がいんだよ
from:芳賀あおい
sub :Re〉Re〉Re〉Re〉Re〉Re〉私
本文:ここ!!工藤くんの隣にいるでしょっ!?
to :芳賀あおい
sub :Re〉Re〉Re〉Re〉Re〉Re〉Re〉
本文:俺の隣にはチビしかいねー
博士が来るまでの間、カタカタカタカタと薄暗い駐車場にボタンを連打する音だけが響いていた。
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bkm