キミのおこした奇跡side S


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浪花の連続殺人事件


聞きたいこと、言いたいこと


「1つ、聞いてもいい?」
「え?…な、に?」
「…どうして、」
「うん?」
「どうして飛び出したの?私、コナンくんを壁に突き飛ばしたのに、…踏みとどまって私の前に飛び出したのは、どうして?」
「どうして、って言われても…、」
「…人が人を助けるのに、論理的な思考は存在しない?」
「え?」


それは俺がNYで通り魔に言った言葉。
コイツ、やっぱり「俺」が誰か、気づいてんじゃねぇか…?


「コナンくんが助けてくれたのは嬉しいよ。でもね、コナンくんは小学生なんだよ?…今回はたまたま運が良かったから助かったけど、次も助かるかなんてわからないんだよ」
「…」
「だから今日みたいに自分から危ないことに飛び込むようなことしちゃダメ」
「…」
「…こんな小さい体で、あんなこと…、私なんか助けようとしちゃ、ダメだよ」


きゅっ、と、あおいが繋がれている手に力を込めたのがわかった。
…私「なんか」だと?
バーロォ!
俺は、オメーだから好きになったんじゃねぇかよっ!


「勉強ダメ」
「え?」
「運動ダメ、料理全くダメ!」
「コ、コナンくん?」
「何をやらせても平均以下!」
「…」
「努力してようやく人並み!」
「……それがなんですか?」
「…そんなどんくせぇ奴、目離したらあっという間に傷だらけになっちまうだろうが!」
「え…?」
「俺が守んなくて、誰が守ってやんだよ!」


言い終わった後、あおいの顔を見上げた。
そう。
「見上げた」
…やべぇ!


「って、新一兄ちゃんが言ってたよ!?」
「え?あ、ああ、うん…」


俺今「新一」じゃねぇじゃねぇかよっ!
うっかり出た本音を慌てて取り繕うも、あおいは目を何度かパチパチと動かし曖昧な返事をした。
ヤバイっ!
コイツ、俺のこと勘づいてるかもしれねぇのに、なんてこと口走ってんだよっ!!


「ほ、ほら!だから新一兄ちゃんがいない時は僕があおい姉ちゃん守ってあげなきゃ、って、」


さ、さすがに苦しい、か…?


「コナンくん」
「な、なにっ!?」
「…ありがとう」


そう言って笑うあおいの顔は街灯に照らされて、ひどく、儚く感じた。


「でも今回だけだよ、こんなことするのは!」


…バーロォ


「次もおんなじことしたらオジサンの一本背負いか蘭の回し蹴りが炸裂するからね!」


次も同じことするに決まってんだろーが。


「危ないこと、しちゃダメ!」


何度でも、同じことするに決まってる。
例えそれで自分が死んだとしても、オメーに目の前で怪我されたり、…死なれたりするより、ずっといい。


「あおい姉ちゃんは、」
「うん?」
「…どうして僕を平次兄ちゃんの捜査に行かせたの?」


今聞かないと、きっともう聞く機会はない。
なら今、はっきりさせた方がいい。
…場合によっては、俺の正体を明かすことになったとしても。


「普通は小学生を捜査現場に行かせたりしないよ?どうして?」


それは「俺」を「工藤新一」と思ったからじゃ、ねぇのか?


「似てるから」
「え?」
「コナンくん、私の知ってる人と、似てるから」


それは「コナン」が「新一」だと思っているということではなく、「コナン」に「新一」を見ていたということ。


「その人、事件のことになると他は何も見えなくなるんだ」
「…うん」
「どんな子供だったか知らないけど、きっとコナンくんみたいな子だったんじゃないかなぁ?」
「…」
「その人だったらきっと止めても捜査に行くって言ってただろうし。今回は服部くんがいたから大丈夫そうだったし。だからいいよって言ったの」


なぜ「俺」を投影したのか?
それはわからないし、…今は聞くこともできない。
けど、あおいが「コナン」の影に「新一」を見て、そう行動したのは事実で。


「じゃ、帰ろっか?」


改めて繋ぎ直した手は、やっぱり俺よりも大きくて。
…この姿じゃダメだ。
ちゃんと「工藤新一」として、コイツの前に立たねぇと。
言いたいことも、聞きたいことも、なんも切り出せねぇ…!
絶対黒の組織をぶっ潰して、元の姿に戻ってやるっ…!
そう胸に秘め、ホテルに戻った。

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bkm

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