キミのおこした奇跡side S


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浪花の連続殺人事件


事件が呼ぶ


「そやけどほんま、けったいな事件ですわ。目撃者は誰もおらへんし、事件の関係もわからへんちゅうのに、被害者の身元はすぐにわれよる」


そうなんだよ。
3人目の野安さんがいい例だ。
こんなにも早く殺された人の身元がわかるものか?
大企業の重役とかならまだしも、一運転手だった人の、だ。


「ナイフに刺された財布に、4人とも免許証が入っとりましたから」


それだ!!
車絡みの繋がり!
それなら単なる経歴だけではわからない。
坂田さんの言葉で運転免許試験場に行くも、どうも的外れだったらしい…。
あ、れ…?


「ねぇ、岡崎さんだけ大阪じゃなく、兵庫で免許取ってるけど?」
「ああ、そこは合宿免許が安ぅて、有名なとこですよ」


合宿免許!
合宿って言ったら仲間がいる…!
これか、あの電話で言っていた『昔の仲間』は!!
その後の調査で、2番目の被害者と4番目の被害者が免許合宿の時に相部屋だったことが判明。
でも、なんかまだ、腑に落ちねぇ…。


「岡崎さんと西口さんのほかにもおったんですよ!20年前のその合宿に、最初に殺された長尾さんと、3番目に殺された野安さん、ほんで、府議会議員の郷司さんの3人も!みんなおんなしとこやったんです!」


殺された被害者だけでなく、あの府議会議員も合宿仲間…!
それだけじゃなく、今闘争中の強盗殺人犯の沼淵巳一郎も繋がりがあったなんて!!
20年前のその合宿で何があったんだ…!


「あった、コレや!20年前あの6人が卒業した日、教習所の教官が1人、飲酒運転で死んでるで!」


教習所きっての鬼教官、か…。
沼淵が府議会議員の郷司を脅したか、郷司が沼淵を使って昔の仲間を殺らせた、か。
十分考えられるな。
じゃあ後はこの議員に直接会って確かめることだな。


「ほな、行こか」


そう言って図書館を後にしようとした時、


「おい、このクソガキがっ!なーにちょろちょろしてんだよっ!黙っていなくなるんじゃねーってのっ!!」


オッチャンに拳骨くらった…。


「大滝はんまで、なんでここに?」
「和葉ちゃんに運転手頼まれたんですわ」


それでいいのか、大阪府警…。


「坂田さんに電話もろて、めがねの子迎えに来たんや」
「…毎度毎度、刑事を顎で使いよってからに!」


いや、それオメーが言う台詞じゃねぇだろ。
オッチャンに殴られた頭を抑えながらチラッとあおいを見たら複雑そうに笑ってた。


「ほんなら、その子本部長の家に送り届けるから。行こか、坊」
「やだ!僕平次兄ちゃんと一緒にいる!」


我ながら気持ち悪い。


「まぁここは大阪や!事件のことは俺らに任せて身引けや、工藤!」


俺があそこまでやったのに、身引けっていうのかお前は…。


「お前にコレ、預けといたるわ」
「…お守り?」
「その代わり、今日のところはなるべく我慢せぇよ?家に戻ったら事件のことなぁんぼでも聞かせたるさかい!ええな?」


よくねーよ!
…って、言ってもどうせもう連れて行く気ねーんだろうし!
くっそー!こんなガキじゃなかったら…!


「ごめんね」
「え?」
「服部くんがいるから大丈夫じゃないって言ったんだけど、オジサンがこれ以上はダメって言って聞かなかったから…。ついて行きたかった、よね?ごめん」
「…別にあおい姉ちゃんのせいじゃないよ」


すっげぇ事件が気になるけど!
でもついていけねぇのは、ほんとにあおいのせいじゃねーんだし。
そもそも蘭だったら東尻署で逃走図ろうとした俺を見つけた段階で、服部に同行することを許すことはなかっただろうし!
まぁ…、今まで自由にさせてもらった分、よしとするしかねぇ…よな。
そんなこと思っていた時、


「毛利はん、すんませんけど、てっちりはもう少し辛抱したってください。寄り道させてもらいます!」


逃走中の沼淵の車が見つかったらしい。
…たまに自分で、事件に好かれてるじゃねーかって、そう思うときがある。
でもこういう状況、悪くねぇよな!
雨の中、路面に映るパトランプが妙に気持ちを逸らせた。
現場についてからあおいたちの目を盗んで大滝さんの後について行く。
燃え残ったレシートとコンビニ弁当のシールから、まだこの中に沼淵がいることがわかる。
…そしてそれは沼淵に共犯者がいることを伝えている。
誰が、何の目的で沼淵を匿っているんだ?
その後警察の捜査が始まるが、沼淵はなかなか見つからない。
パッと見てわからない場所、窓の淵の泥…、屋根裏、か。


「あれれ?こっから屋根裏に行けるみたいだよ?」
「待て坊主!後はワシらに任せろや!」


そう言って屋根裏に上がった大滝さんが、沼淵を発見し、逮捕する、と言った声が階下にいた俺にも聞こえた。

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bkm

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