キミのおこした奇跡side S


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浪花の連続殺人事件


ゆびきり


東尻署について服部から連続殺人事件について話を聞いた。
ナイフで貫かれた財布が胸に突き刺さって殺される事件。
被害者同士に繋がりはなく、かといって金銭目的の犯行とも考えにくい。
…ナイフが刺さった財布、か。


「平次くん!あった!被害者の共通点見つかったで!」
「ほんまか!?」


坂田さんが持ってきたテープを見せてもらうとそこには郷司議員を中心に被害者2人が映っていた。
元秘書と、元運転手。
これはこの議員から話を聞かねぇとだな…。


「ほな坂田さん。俺らもそっち行ってみよか」


そう言った服部は親指で小さくクイッと廊下を指し、外に出るよう促した。
…そうこなくちゃ!
やっぱ直接話し聞かねぇとな!
よし、誰にも気づかれないように、外に出て…。
と、思ったら、


「コナンくん!」


…なんでコイツ気づくんだよ。


「な、何?ぼ、僕ちょっとトイレに」
「服部くんについて行くんでしょ?」


しかも当たってるし…。
どーすっかなぁ…。
ここで行くなとか言われても困るし…。


「ついて行ってもいいけど、約束して」


少し体を屈めて俺の目を覗き込むあおい。
少し前まで、この仕草をしていたのは俺で。
それが少し、複雑になった。


「危ないこと、しちゃダメだよ」


コイツは「コナン」に話している。


「コナンくんは、私よりもずっと小さいんだから」


それはわかっている。


「人前に飛び出して、誰かを助けようなんて、しちゃダメ」


でもなんでだろうな…。


「1番に、自分のことを考えて」


「コナン」を通して「新一」に話しかけているような、そんな気がした。


「約束出来なきゃオジサン呼んでくる」
「えっ!?……わ、わかった。危ないことは、しない」
「うん、じゃあ約束!」


そう言って小指を差し出すあおい。
…これはあれか?
指きりって奴か?
高1にもなって指きりすんのか、俺。
チラッとあおいを見ると目きらっきらさせて俺を待っている。
…仕方ねぇ…。


「ゆーびきーりげーんまーん、」


そう言って指きりを始めるあおい。
…嘘ついたら針飲む前に俺大怪我してる可能性もあんじゃねーか?
なんて言ったら絶対行かせてもらえないから言わねぇけど。


「あおい姉ちゃん、ありがとう」
「いってらっしゃい!」


手を振るあおいを尻目に、服部の方に走り出した。
ら、


「仲がよろしいようで!」


服部は柱の影に隠れてこっちをみていたようだ。


「見てんじゃねーよ!」
「お、なんやそんなこと言うてええんか?お前も車乗せたろ思っとったのに!そんなん言うんやったらおいてくで?」
「…悪かった」


それを引き合いに出されたら、引き下がるしかねぇ…。


「…それにしても、や」
「あん?」


服部が俺が来た廊下に目をやりながら言う。


「あの姉ちゃん、気づいとんのとちゃうか?」
「え?」
「いっくら頭がキレるから言うても、なんぼなんでも小学生を捜査現場に送り出さんやろ!…なら考えられることは1つ」
「『俺』の正体に気づいてる…」


それは「江戸川コナン」としてあおいに会った日からついてまわる疑惑。
でも、じゃあ、なんであおいは…。


「ま、あくまで可能性の1つ、ちゅーことやけど、気つけた方がええで?」
「…だな」


あおいは別にそこまで鋭いわけでもなければ、頭がキレるわけでもない。
ただあの日、俺を見てはっきりと「工藤くん」と言ったのには、わけがあるのかも、しれない。
…じゃあそれはどんな?ってことになるんだが、そこはまぁ、今どう足掻こうがわかるわけねぇし、そもそも考えてるようで何も考えてねぇ奴だから、やっぱりわけもなかったって可能性も十分考えられるわけだ。
…ほんっと、厄介な女だよあの女は!


「とにかく落ち着いて!すぐに行きますから!家に鍵かけて、誰も入れんといてくださいよ!?」
「あ、あかん!西都マンションもう過ぎてしもたで!」


俺が違うこと考えている間に今の本題、ナイフで突き刺した財布に胸を貫かれている連続殺人事件の捜査が進んでいて。
まさかこれだけの交通量の中、走行中の車から飛び降りるハメになると思いもしなかった!
服部は絶対俺が今小1の体で運動神経もその程度のレベルだっての忘れてやがる!!
…まぁついていく俺も俺だろうが。


「おい、オバハン!さっき電話した刑事のツレのもんや!ここ開けてくれ!」


なんとか無事に岡崎澄江の家についた俺たち。
でも当の本人はいなく。
坂田さんに連絡を取っている最中に、外の公衆トイレから悲鳴が聞こえた。
悲鳴の場所に行ってみると案の定とでも言うのか、さっきお好み焼き屋の前にいた不審人物(恐らく岡崎澄江本人)が倒れていた。
…ナイフに貫かれた財布ごと胸を刺されて。
岡崎澄江、4人目の被害者。
…くそっ!間に合わなかったかっ!!


「首を絞められた後、胸にナイフを刺されたもんやと思います」


あえてそうしなければいけなかった原因。
この行動には何の意味がある?
岡崎さん宅の留守電のメッセージにも疑問が残る。
なんだか妙な事件だ。
犯人に踊らされているような、嫌な予感がする。


−危ないこと、しちゃダメだよ−


フッとさっきのあおいが脳裏を掠めた。


「とりあえず、ここは警察に任せて俺らは次の場所に行こか」


服部の言葉に再び坂田さんの運転する車に乗り込んだ。

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bkm

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