キミのおこした奇跡side S


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New York Case


ブラジャー事件漏洩


無事ロスに到着、と思ったら休む間もなくニューヨーク。
あり得ねぇ…。


「だーかーら!移動中寝てたらいいでしょ!」


母さんは1度決めたらきかない。
どう足掻こうが俺たちのニューヨーク行きは決まったわけだ。


「移動ばっかで疲れただろ。大丈夫か?」
「大丈夫だよ」


あっという間に眠りの森に引き込まれた蘭とは対象的に起きているあおいに声をかける。
笑いながら言うけどなんか


「オメー顔色悪くねぇか?」
「え?あー…、眠れなかったから、かなぁ?」
「え?なんで?」
「えっ!?う、んー…、寝てたところ中途半端に起こされたから、かなぁ?」
「あぁ…。オメーも着くまで寝てろよ?」
「うん、ありがと」


笑うあおいの顔を見る。
…化粧しなくてもいいと思うけどなぁ。
だいたい化粧ってのは母さんみたいに塗りたくることで、あおいには必要ないと思う。


「…な、ななななに?何かついてる?」
「へ?あ、いや別に」


ヤベェ、見すぎた。
つーか、これだけ近くで顔見ながら話すのどれくらいぶりだ?
機内のあの事件からあおいの態度軟化した、よな。
まだちょっと壁があるような気がするけど、まずは話してもらうってことが大切なわけで。
その第一段階はクリアしたわけだ。


「新ちゃんさっきから何ぶつぶつ言ってるのよ」
「へ?」
「壁がどうとか、クリアがなんとかって…サッカーのこと?」
「あ、あー、そうそう。出発前にユーロサッカー見ててあの時は俺ならこう攻める!とか、な」


我ながら苦しい言い訳かと思ったけどあおいはほんと好きだねサッカー、と納得してくれた。
オメーのそういうところが俺はほんとに…。


「試合観てるのも面白いんだぜ?」
「んー、でも知ってる人いないし観ててもなぁ…」
「覚えりゃいいじゃん。俺が教えてやるよ」
「工藤くんが出るなら観ると思うよ?」
「俺は趣味でやるんだよ!…日本帰ったら連れてってやるよ」
「え?」
「J1。一緒に見に行こうぜ?」
「…え」
「今年はさ、東京スピリッツが行くと思うんだよ。だからやっぱり観に行くならスピリッツ戦だよな!」
「え、あ、うん?そう、だ、ね?」


帰ったらあおいとサッカー観戦。
あんまサッカー詳しくなさそうだしな。
じゃあやっぱりあおいが観ても興奮できるようなカードがいいよな?
とかすっかり頭の中が帰国後のサッカー観戦になっていたら、ニヤニヤ笑う母さんと目があった。


「なんだよ、気持ち悪ぃな…」
「いやん、気にしないで!」


そんなニヤけた顔で気にすんなって方が無理だろ。
じろっと見てると母さんがニヤニヤしながら答えた。


「だーってぇ!これからニューヨークに行くのにもう帰国後のデートの話なんて!ラブラブじゃない!」
「なっ!」
「そ、そそそそそそんなんじゃないですよ!!」
「あらぁ、そうなのぉ?」


デ、デート!?
デートなのか!?
いや、あながち間違いじゃない。
けど「デート」って構えたらなんかこう…


「そうです!…そういう仲じゃないですから」


グッサリ。
いや、確かにそういう仲じゃねぇけどさ。
もっとこう、なんかあんだろ?
落ち込んでた俺に追い討ちをかける声が響く。


「ブラジャー見せろとかなんなのよ、なんで新一にブラジャー見せなきゃいけないのよぉ…」


はっ!!?
ブ、ブラジャーっておま、蘭寝言で何口走って!!
あおいを見ると目を見開いて俺を見ていた。


「ち、違うんだ!これには深いわけが!!」
「しーんーいーちー!」


地を這うような声の方に顔を向けると、青筋を立ててる母さんがいた。


「どーいうことなのかしらねぇ?」
「ち、違う!母さんが考えているようなことじゃない!」
「何がどう違うってのよ!!」
「だから誤解だって!さっきちょっと推理で」
「推理ぃ!?なに優作みたいなこと言ってるのよ!!第一推理にブラジャーは関係ないでしょ!!」
「関係あったんだって!オメーも言ってくれ!さっき推理したときに、…ってあおい?」


あおいは明らかに態度を変え、俺から顔を背けていた。
いや、だから誤解だって!!


「だからあおい違ぐぇっ」
「蘭ちゃんが起きたらきちんと謝るのよ!」


母さんに首を絞められて言葉が続かない。
し、死ぬ…!


「全く!そんな男に育てた覚えないんだから!…あおいちゃん、あんな子放って置いて旅行を楽しみましょうね!」
「はい」


はい、って何同意してんだよ!
あおいに話しかけようとしたら母さんからすごい目で睨まれて怯む。
クソッ、蘭さえ起きてくれりゃーこの状況をどうにかできんのに。


「寝てるからっておかしなところ触ったらただじゃおかないわよ?」
「さわんねぇよ!」


なんで好き好んで蘭を触んねぇといけねぇんだよ!
むしろ車まで運んでやることに感謝しろよ!


「ぃよっと…」


蘭は無駄な肉ついてねぇけどその分筋肉がすげぇから意外に重いんだよな…。
ふぅ、とため息をついて蘭をシートに座らせる。


「あおい、オメーも後部に」


バタン。
言い終わる前に後部に乗り込んだあおいに扉を閉められた。
…ヤベェ、怒ってる。
せっかく態度が軟化してきたのに!
あーー!もう!どうにかしねぇと!!
そんな俺の思惑なんて関係なく、ニューヨークの街は輝かしいネオンに揺れていた。

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bkm

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