Clover


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戸惑い


不愉快湿度上昇中


「なんかダルいなぁ…」


6月中旬に差し掛かり、快斗の誕生日まであと少し、って頃。
どうも最近体がすっきりしない。


「早希子ちゃん風邪か何か?」
「んー…、かなぁ?」
「この間まではもう夏!?って感じだったけど、最近雨続きで朝晩気温低いから体もおかしくなっちゃうよねぇ…」
「だよねぇ…」


世間じゃ梅雨なわけで。
じめじめじめじめ。
水中にいるかのような湿度に、気分も体も湿っぽい。


「青子こういう時、やっぱり私立にすれば良かったって思う」
「はは。各教室に扇風機1台しか与えられないもんね」
「せめて除湿器置いてほしいよ…。こんな湿度で食欲も出ないよね」
「わかる。なんかもう、このじめじめに食べる気力もわかない」
「だよねぇ」


パタパタと手で仰いでみても、その労力で余計に湿度が上がりそうだった。


「オメー痩せた?」
「え?」


適度に除湿された快斗様の部屋で愛情充電後、まじまじと体を見られながら言われた。


「そんなことないと思うけど?」
「えー?なーんか、ここらへんの肉が寂しくなった気がする」


ここらへん、と言って後ろから腕を回し両胸を揉む快斗。
痩せたって言われて嬉しくないのはなんでだろう…。


「快斗大きい胸が好きだもんね…」
「えっ!?い、いやそーいうつもりで言ったんじゃなくてだな!!」
「お父さんに豊胸するからお金出してって言」
「バーロォ!んなこと言ったら俺が大魔王に殺されんだろーがっ!!!」


冗談じゃねー!って叫ぶ快斗は相変わらずお父さんが苦手なようだ。
まぁ、そうだろうなぁ…。


「あの人俺が嫌いなんだから滅多なこと言うんじゃねーよっ!」
「別に嫌ってるわけじゃないと思うよ?」
「え?」
「嫌ってるんじゃなくて、ただ好きじゃないだけだと思う」
「…早希子ちゃん、それフォローになってないんだけど」
「え?だって好かれてないのは知ってたでしょ?」
「そりゃあ、まぁ…。『快斗くん。私は君のお父さんではなく、優作という親からもらった立派な名前があるんだが』なんて言われたら誰だって好かれてねーことくらいわかんだろ!?」
「なんでかわかる?」
「は?理由なんてあんのかよ!?」
「うん。快斗、お母さんのお気に入りだから」
「…はあああ!?」
「お父さんは、お母さんが快斗くん、快斗くんて言うのが気に入らないんだろうって、新一が言ってたよ?」
「…そんなん俺のせいじゃねーじゃねぇかよ」


明らかに拗ねたような顔をした快斗。
まぁ、それプラス「盗一さんの息子」が有希子のお気に入りっていうのが好きじゃない理由だと思うけど。


「でもほんっと、仲良いよなオメーんちの親」
「んー…、その分喧嘩もするけどね」


それも国際電話までして怒鳴りあってる時あるくらいだし…。


「でもいいよなー」
「うん?」
「年下の売れっ子女優だったかっわいーお嫁さんもらって、子供2人もいんのに20年近く経つ今もまーだらっぶらぶで。男として正直憧れるところもあるけど」
「…そう、じゃあ年下の売れっ子女優のかっわいーお嫁さん探して」
「だからそういうこと言ってんじゃねーだろ!?オメーこの間からなんかイライラしてねぇか!?」
「別にイライラなんて」
「してるって!イライラっていうか…ピリピリ?」


最近の湿度にやられて、そこは否定できないな…。
じめじめ暑いとイライラしなくていいところでもイライラしてしまう。


「んじゃ、アイチャンによろしくな」
「うん、わかった」
「気をつけて行くんだぞ?」
「わかってるー」
「…早希子」
「ん…」
「じゃあ着いたらメールな」
「はいはい。またね」


今日は哀ちゃんところにお泊り。
別に私に何があったわけでもないけど、哀ちゃんが泊まりに来ない?って言ってくれたから行くことにした。
…て、ゆうか、コナンくんがいなくなって1人だけで小学生の相手はツライらしく、たまに哀ちゃんから呼び出されてグチを聞かされる。
まぁ、気持ちはわからなくもない。
特に無鉄砲な元太のお守りを新一なしで1人でするとか考えただけで胃が痛くなるわ…。
そんなわけで哀ちゃんのグチを聞こうと、快斗の家から江古田駅に直行した。
快斗様は相変わらず人目をはばからず発情なさり、公共施設だろうがなんだろうがサヨナラのちゅうをしてくる。
快斗とつきあうようになって丸2年になろうとしてるけど、私たちも充分快斗が言うところの「らっぶらぶ」なカップルだと思う。


「間もなく、米花駅、米花駅。お降りの方はー」


がたんごとん、と揺れる車内。
電車特有の密度の濃さと、冷房が追いつかない湿度の高さ。
ほんとに、このじめじめどうにかしてもらわないと具合悪くて倒れそうだ。
米花駅に降りて、もう日も暮れたというのにまとわりつくような髪と湿度にうんざりしながら、博士の家に向かった。

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bkm

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