Clover


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進路、決定


言えなかった本音


−快斗は、私を閉じ込めておきたいの?−


「なんかだっりぃなぁ…」


6月第1週目の日曜日。
今日は早希子が青子dayなんだとかでデートの無い俺は、同じく予定がねぇだろう宮を誘ってぷらぷら歩いてた。
いや家に行ったら「進学しねぇお前と一緒にするな」とか言って追い返されそうになったけど。
でもなんだかんだでつきあってくれるから良いヤツだよ、コイツ。


「で?」
「あん?」
「何があった?」
「…別になんもねぇし」
「…そういや工藤さん卒業したらイギリス行くんだってな」
「知ってんなら聞くんじゃねーよっ!」


悪ぃ悪ぃと言う宮の顔はどー好意的に見ても悪いなんて思ってねぇ!
青子もベラベラしゃべんじゃねーっての!


「で?お前はいじけてんだ?」
「別にそんなんじゃ、」
「そーかぁ?明らかに機嫌が」
「「あ、」」
「あ?」


宮の追求に若干イラッと来てたとき、目の前に見慣れた顔を見つけた。


「オメー何してんだよ」
「何、って…事件の後処理、ってところ」
「…誰?」
「…早希子の兄貴」
「え!?あの工藤新一!?」
「あ、どうも。妹がいつもお世話になってます」
「あ、いえいえ!俺の方も工藤さんにはお世話になってて、」


クソ真面目くんが2人揃うとお辞儀合戦が始まるらしい。
めんどくせぇなぁ…。


「そーだ、オメー今暇か?」
「は?…まぁ後は高木刑事にメールするだけだし、時間はあるけど?」
「よし、カラオケ行くぞ」
「「はあ!?」」


歌でも歌って気分晴らさねぇことにはすっきりしねぇし!
だからって宮と2人で密室空間に行っておかしな目で見られても困るし!
コイツも混ぜて大熱唱だっ!!
…って、自分のもてあまし気味な行き場のない感情に手一杯で、俺は忘れてたんだ。


「気ーがーくーるーいそう♪」
「ちょっと待てー!!俺たちの気が狂うだろーがっ!!」


そう。
コイツ、工藤新一が極度の音痴だってことを!!


「黒羽言い過ぎ…」
「言わなきゃわかんねぇだろっ!?」
「いやだからって…」
「宮も止めろよっ!!」
「…俺今日初対面だし…」
「関係ねーだろ!おい、オメー止めろって!!」


あり得ねぇ!
マジであり得ねぇ!!
コイツ早希子から知能と運動神経奪って生まれた分、母ちゃんの腹の中に音階置き忘れてきやがったっ!!


「あーなーたーにーもがんばれっ♪」
「だからオメーがもっと頑張れよっ!!」
「…ウルセェなぁ…」
「ウルセェのはオメーだろ!?なんでソレで人前で歌う気になれんだよっ!?」
「オメーがカラオケ行くぞって言ったんだろ?」
「断れよっ!店入る前にっ!!」


なんでこの歌唱力で人前で歌えんだよっ!?


「で、でも、俺安心した!」
「あん?」
「あの高校生探偵の工藤新一にこんな欠点があったなんてな!」
「…別に欠点てわけじゃ…」
「誰に聞いても致命的な欠点じゃねーかよっ!!なんだよその殺傷能力のある歌声はっ!!」
「さっきからウルセェなっ!!だったらオメーはどうなんだよっ!?」
「バーロォ!俺は早希子に1人紅白歌合戦させられるくらいうめぇんだよっ!!」
「1人紅白歌合戦て工藤さん…」
「…オメーら何やって過ごしてんだよ…」
「そんなんオメーらに言えねぇくらいらっぶらぶに過ごしてらぁ!!」


テメーらに何してんだなんて心配されたかねぇし!!


「…なーんか機嫌悪くねぇ?オメー」
「別に」
「あー、コイツ工藤さんの進路にいじけてるだけだから!」
「余計なこ」
「は?早希子の進路?」
「そー、工藤さん卒業したらイギリス行くだろ?」
「…は?」
「は?」
「イギリス?イギリスって誰が?」
「え、だから工藤さんが…」
「……なにーー!!?なんだソレ!俺聞いてねぇぞ!?」
「え?や、でも、」
「………早希子オメーどういうつもりだっ!?俺に黙ってイギリスに行く気だったのか!?……オメーなぁ、忘れてたじゃねーだろ!?何そんな大事なこと1人で決めてんだよっ!!」
「…青子ちゃんから聞いてたけど、噂通りなシスコンぶりだな工藤くん…」


宮が小声で俺に耳打ちした。


−何そんな大事なこと1人で決めてんだよっ!!−


俺もそう言えば良かったのか?
そう言ってたら、いつまでもこんな行き場のない思いを抱えずに済んだのか?


−快斗は、私を閉じ込めておきたいの?−


少し、少しだけ。
そう思っていた自分がいたのは、確かだった。

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bkm

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