Attack On Titan


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ラブソングをキミに


悔いなき選択 4


「兵長、今日は、」
「あぁ、そうだな…。何をするか、しばらくお前に任せる。」
「(丸投げ!?)い、いや、ちょっと待ってください、」
「俺は部屋で書類整理してるから何かあったら呼べ。」
「(だから今、声かけてるってのに…!)」


「…と、言うわけで、しばらく俺が指示する訓練をしてもらう。」
「エルドさん、」
「(来た!)なんだ?ぺトラ。」
「もしかして、私たち兵長に試されてるんですか?兵長自らが指示を出すレベルかどうか、って…。」
「(そうだったらどんなにいいか…)さぁ、どうだろうな?」


「ナナバさんっ!!!」
「はーい!エルド最近足繁く通ってくるねぇ。」
「バカ言ってないでくださいっ!一体いつになったらアレ直るんですかっ!!」
「まぁまぁ、落ち着いて。今日は?何があったの?」
「何があったの?じゃないですよ!何もなかったんですっ!!」
「は?」
「朝いつものように1日の予定を聞きに行ったら『お前に任せる』で丸投げされたんですよっ!?班長として、いや、兵士長としてどうなんですか!!!」
「(ついに職務放棄したか…)うーん、まぁほら、もともと兵士長、って感じの人格者だったわけじゃないし。エルドも良い経験だと思って、」
「そんなこと思えるわけないでしょっ!!だいたいアレはどういう状況なんですかっ!!機嫌悪いんですか!?それとも単にどっか悪いんですかっ!?フィーナは何してんだよ!!」
「あー…、それねぇ…。」
「…な、なんかあったんですか?」
「……私もイマイチよくわからないんだけど、」
「けど?」
「マズイ状況になって来てるっぽいのは確かだよ。」
「…えっ!?今よりマズくなるんですかっ!!?」




パパとママと話をした翌日も、普通に仕事だった。


「ミケさん、ゲルガーさん、おはようございます。」
「あぁ、おはよう。」
「おーぅ!」


少しずつ、次の遠征用の班編成になっていってるみたいだけど、私(と、ゲルガーさん)は、未だミケさんの班からの異動命令がない。
…と、言うことは、次の遠征も、ミケさんの班で、と言うことなんだろうか…。


「じゃあフィーナ、今日は、」
「はい。」


ミケさんもゲルガーさんも、実力的にとても信頼できる兵士だ。
だからそれは安心できる、と言うことで、喜ばしいことなんだろうけど…、


「…はぁ…」


知らず知らずに出るため息は、どうすることも出来なかった。




「お!ナナバ来た来た!!」
「…ゲルガー、なんだい?こんなところに呼び出して。」
「お前なら知ってるかと思ってな。」
「(嫌な予感)なにを?」
「フィーナとリヴァイ、何かあったのか?」
「(やっぱり…)なにかって?」
「一昨日、声かけられてエルドと飲みに行ったんだがな。その時に帰還後からのリヴァイの奇行を聞いた。」
「奇行ってあんた…。」
「で、フィーナにどういうことか聞こうと思ったんだが、昨日は休暇で1日いなかっただろ?だから、今日切り出そうとしたら、フィーナもフィーナで、明らかに朝から他人をシャットダウンしてるだろ?」
「………」
「何があった?お前、知ってんだろ?」
「……2人が喧嘩したのは知ってる。話を聞く限りどっちもどっち。言葉足らずでデリカシーのないリヴァイに、たまたま虫の居所が悪かったフィーナがキレたってとこ。まぁ半分以上は八つ当たりだったみたいだけど。で、今はお互い意地になってる状況。周囲がとやかく言う問題じゃない(最もリヴァイは意地になってるってより『あの』フィーナからの予想外の態度に落ち込んでる可能性があるけどね)」
「お前なぁ、そうは言っても、」
「ただ、」
「…ただ?」
「…昨日からフィーナの様子がおかしい。今回の喧嘩とは別の何かがあったようだけど、私も詳しいことは知らない。…もともとどこかのんびりしてるところがある穏やかな子だったから、時間はかかっても穏便に自分たちでなんとかするだろうと思ってたけど、昨日のアレを見たら…、」
「な、なんだよ?」
「…リヴァイどころじゃなくなってそうで、さらに解決が遅れて間違いなく私たちにとばっちりがきそうな気はした。」
「…………はっ!!?私『たち』!?ってまさか俺も含まれてんのかよっ!!?」
「最初はリヴァイ班。次にハンジ。その次はあんただろう、ゲルガー。」
「…なんだ、その順番?」
「アイツのとばっちり受けそうな順番だよ。私はその後!」
「…………おい、どうにかしろよ!!」
「そうは言ってもねぇ…。フィーナ、何にも喋らないから…。」




パパとママの、言いたいことは、わかる。
でも、それに対して納得が出来るか、と言ったら、やっぱりちょっと、違うわけで…。
パパとママが、私を「心配する」と言う感情があるように、私にもやっぱり、感情というものは、存在するわけで…。
だけど、コニーまで兵士を目指す今、「私の感情」っていうものを、最優先して、いいのか…。


「フィーナー?灯り消すよー?」
「あ、はい…。」


ふぅ、とナナバさんがランプの灯りを吹き消した。


「ナナバ、さん。」
「んー?」
「…ナナバさん、は、」
「うん。」
「これから先も、兵士を続けていきます、か?」
「え?」


もともとここは2人部屋で、ベッドは予め2つ置いてあった。
だから同じ部屋だけど、ランプを吹き消した今、反対側の壁のベッドにいるナナバさんの顔は、全く見えない。
だからこそ、聞けたんだと、思う。


「そうだなぁ…。体力の問題もあるけど…、少なくともあと5年は現役でいたいよね。」
「け、っこん、とか、」
「え?」
「考えて、ないん、です、か?」
「…………えっ!!?」


1度ベッドに横になったナナバさんが、ガバッ!と起きあがった音が聞こえた。


「結婚、て、リヴァイとそんな話出てるの?」
「ち、違います!…そう、じゃ、なく、て…、」
「うん?」
「…親が、…兵士を辞めて、お見合いしないか、って。…私が大怪我したこと、知ってるから…。」
「あぁ…。」


私の言葉に、何か納得したのか、ナナバさんは再び横になった。


「私も経験あるよ。」
「え?」
「…フィーナが入団するもっと前に、私も大怪我したことあるから。」


ナナバさんが、どこか困ったように笑ったような気がした。


「その時に親に言われた。『帰ってこい』って。」
「…」
「でも帰らなかった。帰ったらきっと、一生後悔すると思ったから。」
「こうかい…。」
「まぁ…、私は兵団内に恋人がいたことはないから、フィーナの事情とはまた違うんだろうけど、」
「…はい。」
「それでも、『逃げるように辞める』か『納得して辞める』かじゃ、だいぶ違うでしょう?」
「…」
「辞める決断をするのは簡単。だけどね、辞めてしまえば何も残らない。…あの時の私はそう思ったし…、今もその選択を間違ってたとは思っちゃいないよ。」
「…はい…。」
「…最も、辞めなければ辞めないで、常に死と隣り合わせにいるような兵団だし。辞めさせたい親の気持ち、わからなくもないけどね。」


ナナバさんのどこか、悲しそうなため息が聞こえた。


「ねぇ、フィーナ。」
「はい。」
「ここを去る、ってことは、確かに明日の安全が保証される。…でもそれは、あなたにとってかけがえのない人と、離れることだよね?」
「…」
「ここに残る、ってことは、その人とは一緒にいれるかもしれない。…でも、いつ死ぬか、誰にもわからない明日が待ってる。…そして場合によっては、親とも決別しなきゃいけないかもしれない。」
「…はい。」
「…ここから先は、私がどうこう言う問題じゃない。フィーナが自分で考えな。…好きなだけこの部屋にいていいから。」


もともとみんなにはそう言ってるんだし、とナナバさんは言った。




「(…とは言ったものの、予想以上の展開だったな、これは…。どうにかしないと私たち、と言うか主にリヴァイ班からマズイ自体になる、よね…。いやでも、こういうことは他人がどうこう言うことじゃないし、そこで捨てられても仕方ない性格してるリヴァイが悪いんだし…。…………寝るか。とりあえず今は深く考えずに…。)」




ゴロン、と、寝返りを打ってナナバさんに背を向けた。
視界に広がる冷たい壁は、少し汚れていて、なんだかとても…悲しくなってきた。

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