Attack On Titan


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ラブソングをキミに


平穏の終わり 7


シガンシナの門をくぐり抜け、最初に異変に気づいたのは、立体機動を使い壁伝いにまずウォール・マリアに連絡を取ろうとした班員だった。


「団長ぉっ!!!」
「どうした!?」
「壁がっ、ウォール・マリアの壁がっ!!!!」


シガンシナから壁外に大きな穴が開いてしまったように、


「ウォール・マリア門周辺の壁が崩れ落ちてますっ!!!!!」


シガンシナ、ウォール・マリア間を結ぶ唯一の門にも、大きな穴が開いていた…。


「…おいおい、じゃあまさか、」
「マリアも巨人に侵攻されているのかっ!!?」


兵士全員に、動揺が走ったのがわかった。


「キース団長っ!!俺たちはどうすればっ!!?」
「…計画続行だ!1人でも生存者を見つけ救い出す!!『次の壁』まで1人の生存者も残すことなく連れて行け!!全班作戦にかかれっ!!!」


その号令と共に、兵団が3つに別れ行動に移った。
私含むエルヴィンさんの班は、シガンシナの中央を前進する。
…途中、無造作に落ちている「人だったモノの欠片」を見ては、歯を食いしばった。


「フィーナ、生存者に繋がるような音は?」
「…聞こえません、何も…。」
「そうか…。」


途中、エルヴィンさんが幾度となく確認してきた。
だけど、誰がどう見ても、


「…いったい、いつ穴が開いたんだ…!?」


地面に散らばる「人だったモノの欠片」は、腐敗が始まっていて、巨人がシガンシナに侵攻してからだいぶ日数が経っていることを物語っていた。
それはつまり、仮に侵攻時に生存者がいたのだとしても、もう恐らく…。


「全員立体機動に移れ!!」
「「「はっ!!」」」


エルヴィンさんの号令で、馬を捨て、立体機動に移る。
夜が明けたというのに、廃墟と化したシガンシナの街並みは、冷たく無機質で、どこか暗かった。
数週間前に通った、活気ある街の面影はもうどこになかった。


「スプリンガー!援護しろっ!!」
「はいっ!」


立体機動で宙に舞った時に見えた、ウォール・マリアの大穴。
それはつまり、「今ここで」巨人を駆逐しても意味のないことではないかと、私たちに語っているようだった。


「来たか、エルヴィン。」
「団長、…やはり、」
「あぁ…。生存者の可能性は限りなくゼロだ。」


先にウォール・マリアへの門の前に来ていた団長や、他の班と合流した。


「全員、もう1度装備を確認。…マリアの中がどうなっているのかは不明だが、一旦我々はトロスト区に向かう。」


あまり、寝ていないからなのか…。
それともシガンシナに着くまでの間、いつも以上に神経をすり減らしながら馬で駆けていたせいなのか…。
物凄く、体が重い。
でもそれは恐らく私だけではなく、全員が、感じていることのようで、先輩兵士、ハンジさんも、…リヴァイさんも。
門の前に集まった、シガンシナの現状を見せ付けられた兵士全ての顔から、明るさは消えいた。
エルヴィンさんの指笛で、私たちが乗り捨てたはずの馬が門までやってきた。
…巨人は本当に、「人」にしか興味がない。
同じ、生きて、動いている動物には、見向きもしなかった。


「全員、準備は出来たか?」


シガンシナは、恐らくもう…。
そして同じように大穴が開いてしまっているウォール・マリア…。
この門の先がどうなっているのか、私たちにはまだ、未知のことで…。


「ならば…、進めっ!!」


キース団長の号令の下、ウォール・マリアの本来重くて硬い門があった場所を潜り抜けるとそこには、


「…なん、て、ことだ…。」


この世の「絶望」が存在していた…。
まるでそれが当然であるかのように、壁内を悠然と闊歩する巨人の群れ。
彼らは私たち「人間」を見て一斉に襲い掛かってきた。


「討伐しようと思うなっ!全員でトロストに向かうことを最優先にしろっ!!」


その言葉に、最優先事項は「逃げること」となった私たち。
どうしても襲い掛かってくる巨人には、


「リヴァイ…!」
「行け。…ミケ!そっちを任せた!」
「わかった。」


リヴァイさんや、ミケさんのような精鋭が迎撃する。
ウォール・マリアからトロストの門まで、直線距離を馬の最速で走り続けたとしても1時間強。
でも恐らく「最速で」走り続けることは不可能で、


「左前方に3体いますっ!」


3時間は悠にかけて、なんとかトロスト区に到着した。
そしてそこで見た現実。
シガンシナはじめ、ウォール・マリアから流れ込んだ難民が、路地のそこかしこに、溢れかえっていた。
団長とエルヴィンさんがすぐにウォール・シーナに召喚され、今後の対策が練られた。


「え?今、なん、て…。」


マリア陥落の直後、駐屯兵団はウォール・ローゼ突出区の警護を言い渡され、全兵ウォール・ローゼ内に配置された。
では誰がシガンシナやウォール・マリアの警護、住人の救出に当たったかと言うと、


「壁外調査に同行しなかった新兵の9割が亡くなったそうだ。」


今回の壁外遠征に同行しなかった調査兵団なわけで…。


「残り1割の生き残った新兵もそれぞれに傷を負い、恐らくもう、兵士としての活動は無理だろう。」


この日、私と同期の調査兵団兵士が1人もいなくなったことを知らされた。

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bkm

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