Attack On Titan


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ラブソングをキミに


結成 5


「…アイツ等あんなに仲良かったか?」
「あぁ、なんかオルオが同盟がどうのって言ってましたよ?」
「同盟?あぁ、『アレ』か。」


ミケさんとエルドさんがそんな話をしているとは露ほども知らず、私は今、


「フィーナ!」
「フィーナさん!」


同じ班の新兵2人に、異常な程つきまとわれると言う、人生初の経験をしている。
遡れば今朝、


「フィーナ、ぺトラから聞いたぜ!俺たち『繊細同盟』の絆は固く結ばれた…!」
「…繊細同盟?」
「『繊細なあまりやってしまった同盟』の略です。」


オルオの言葉の元、同盟が(かなり強制的に)結ばれた…。
問題はそこから。
ぺトラさんは、昨日のお風呂での宣言通り、リヴァイさんに認められるためにまず「私に」認められようと、事あるごとに私の後をついて来た(しかもなぜかオルオつきで)
自分の人生、振り返ってみても後輩に慕われる(というかつきまとわれる)なんてこと早々なかった(訓練兵団の時は別。『コニーのお姉ちゃん』ってことで後輩と言うより『弟の友人』って感じだったし)
なのにそれがいきなり今日、それも2人一気に。
戸惑う、なんてものじゃない。


「よぉ!モテモテだな、フィーナ!」


ゲルガーさんが陽気に笑う。


「………誰のせいだと思ってるんですか!」
「は?誰のせいだ?」


なんとかぺトラさんとオルオを撒いて野営地近くの木の上まで逃げてきた私。
それを呑気に見ていたゲルガーさんに若干イラつきながら言ったら、全く気にも止めていなかった。
…あなたのせいです!…と、喉まできている言葉をグッと飲み込んだ…。
ぺトラさんとなぜかオルオにまで追われる日が丸3日続いた日の夜。
今日は男性がお風呂の日で、女性は入れない。
だから今のうちにタオルで軽く体を吹いて着替えよう、って濡らしたタオル片手にテントの中に入った。
…ほんとは毎日、お風呂入りたいんだけどなぁ、なんて思って服を脱ぎ、濡れタオルを体に当てた時だった。


「ぺトラー、いるかー?」


バッと、テント入口の幕を捲って、オルオがテントの中を覗いてきた。


「…………」
「…………」
「…きっ、きゃあああ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


体を拭こうと上半身裸だった私を見たオルオは、裸を見られた私以上の叫び声をあげて入口の幕の向こうへと姿を消した。




「おい、今の悲鳴なんだ!?…て、オルオどうした?こんなところで。」
「エッ、エルドさんっ!!俺は!!なんも見てねぇっす!!」
「は?」
「俺はぺトラに用があっただけっす!!別に変なつもりで覗いたわけじゃっ!!」
「と、とりあえず落ち着け?」
「おい、どうした?何があった?」
「あ、ゲルガーさん!いや、それが俺にもさっぱりで、」
「信じてくださいっ!!どうせ見るならもっとデカイのが良いっすっ!!!好き好んであんな胸見ないっすよっ!!!」
「「は?」」




「オルオ、」


とりあえず服を着てテントの外に出たら(外に出る前から聞こえてたけど)エルドさんにしがみついて半狂乱なオルオがいた。
………すっごい失礼だと思うんだけど、その態度!


「今見たことは忘れて…!」
「俺はなんも見てねぇってっ!!!」
「いいからっ!!忘れてっ!!!」


言うだけ言って、野営地中央、夕飯の支度がされてある場所に向かった。




「……………オルオ・ボザド。」
「は、はい?なんすか、ゲルガーさん。」
「…お前まさか見たのか?」
「だ、だからっ!!見てねぇって言ってるじゃないっすかっ!!」
「(こいつ死んだ…)悪いこと言わねぇ、綺麗さっぱり忘れろ。」
「だから俺はっ!!!」
「オルオ、」
「エ、エルドさん俺本当にっ、」
「わかったから!そのことについてはもう他言するな(じゃないと今度こそ兵団内で人類に殺される犠牲者が出る…)」
「お、俺は言わねぇっすよ!お2人も変なこと言わないでくださいよっ!?」
「「(死にたくねぇから言うわけねぇだろ…)」」



「あ、フィーナさん!」
「ぺトラさん…。」


野営地中央に来ると、ぺトラさんが既にいた。


「そう言えばなんだったんですか?」
「え?なんだった、って、何が?」
「さっきの悲めむぐっ!!?」
「お願い、その話はしないで。」


咄嗟にぺトラさんの口を抑えた。
…ものの、


「あ、フィーナ!ねぇ、さっきの悲鳴なんだい?私たちのテントの方から聞こえなかった?」
「ハンジさん…。」


あれだけの悲鳴、気にするな、って方が無理なのかもしれない…。
まさか巨人か!?なんてところまで話が行ってしまっているハンジさんに黙っていれるわけなく…。


「じ、実は、です、ね…。」
「うん?」
「なんですか、なんですか?」


なぜかぺトラさんまで身を乗り出して聞いてきた。


「え、」
「えーーっ!!!オルオに裸見られちゃったのぉぉぉぉ!!!!?」
「ハンジさん!声っ!!」


私の話を聞いたぺトラさんがまず第一声をあげた。
…直後にあげたハンジさんの声に全てかき消された。


「そんな、大変じゃないかっ!デリカシーない行動に傷ついただろう!?でももう大丈夫、安心していいんだよっ!!!!」
「…ハンジさん、」
「うん?」


私の両手を掴み、声をあげるハンジさんの顔は、


「…楽しそうに見えるのは気のせいですか?」
「やだなぁ!気のせいだよっ!!!!」


どこか喜々としている気がした…。


「だいたいっ!!中で着替えている人がいるかもしれないのに、わざっわざテントに来るオルオが非常識だろうっ!!」
「ハンジ分隊長やめてくださいっ!!!」


そしてそのまま、ハンジさんの何かに着火してしまったようだった…。
オルオが半泣きになりながらハンジさんに縋り付いていた。


「ハンジ、お前って言う奴は…。」
「分隊長、本当にそろそろ止めてあげてください…。」
「ゲルガーもエルドもそう思うだろ!?」
「俺を巻き込むんじゃねぇっ!!」
「俺もそれに関しては…。」
「なんだって!?だってか弱き女の裸を見るなんて、」
「やめてくれぇぇぇぇぇぇ!!」


ハンジさんの言葉に絶叫するオルオ。
…………なんだろう、見られた私が被害者のはずなのに、私を置いて話が進んでいっている(しかもなんだかハンジさんの手でおもしろおかしく脚色されていってる気もする…)
ハンジさんのオルオ弄りにどうしようかと思っていた時(ゲルガーさんやエルドさんは無視を決め込み、ぺトラさんは事の成り行きを見守ってるようだ…)


「だからっ!わざとじゃねぇってっ!!俺にだって好みってものがあるって言ってるじゃないっすかっ!!」


オルオが叫んだ。


「あんなまな板に干しブドウなんかで勃つような男いないでしょっ!!?わざと見るなら俺はもっとデカイ方がいいんですっ!!!」




「(…アイツ死んだ…。マジで死んだ…。今度こそ間違いなく死体が出る…)」
「(オルオ…。ハンジ分隊長以来の死に急ぎ野郎だったなんて…)」
「(オルオ…!!なんて勇敢な兵士だったんだっ!!私はキミのことを忘れないからねっ!!!)」




「オルオ、」
「な、なんだよぺトぐぁぁっ!!?」


オルオの一言に大打撃を受けた私の変わりに口を開いたのはぺトラさんだった。
ぺトラさんはそのままオルオの顔にグーで一発、それはもう爽快なほどに、決めてくれた。


「兵士にもなって芋くさい話し方してる男が女の体のことどうこう言ってんじゃないわよ!」
「い、ってぇぇぇぇ!」
「フィーナさんに謝んなさい!」
「え!?い、いや、別に私、」
「謝んなさいっ!!」
「い、いやだから私、」
「謝れオルオーッ!!!」


さっきとは違う、ぺトラさんの叫び声に包まれ、野営地の夜は更けていった…。

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