Attack On Titan


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ラブソングをキミに


結成 4


「だ、から、私、」
「一蓮托生ですよね!?」
「……はい…。」


現在、今回の壁外遠征での野営地に設置されたお風呂の中に、ぺトラさんと2人きりで、……追い詰められていた。
「繊細なあまりやってしまった同盟」の今後は一蓮托生、と言ったオルオの意思を継ぎ、ぺトラさんは私に同意を求め続けていた。
…浴槽の中で私の正面に正座して…(それを見て私も正座した)
そして正座で切々と訴えてくるぺトラさん(しかも全裸。タオルは浴槽内に入れてはいけない規則だから)についに根負けしたような形で頷いてしまった…。


「良かったー!このままフィーナさんだけ逃げるなんて言ったらどうしようかと思いました!」


胸を撫で下ろすぺトラさん。
…だから逃げるとかじゃなくて、バレた人1人が犠牲になって他の2人のこと黙っていたらいいんじゃないか、って、最後まで言えなかった…。


「私、フィーナさんに嫌われてるのかもって思ってたから、そのせいでだったらオルオに悪いことしたな、って、」
「え?」


聞き返した私に、ぺトラさんが少し、苦笑いをしていた。


「だってフィーナさん、オルオとは普通なのに、私とはすごく距離があるから。」


その言葉に、ドキリ、とした。


「気のせいじゃ、ないですよ、ね?」


ぺトラさんはそう言いながらも、困ったように笑っていた。


「……ご、めん、なさ、い。」
「あ!別に私責めてるとかじゃなくて、」
「わ、たし、」
「はい?」
「………ひ、人、と、話すこと、苦手、で…。」
「…」
「昔よりは、だいぶよく、なったんだけ、ど、まだ、初対面の人、とか、大勢は、ちょ、っと…、」
「…でも、」
「え?」
「オルオは、なんでですか?オルオだって、私と同じ新兵なのに…。」


…あぁ、私そんなにはっきりと態度が違ってたんだろうか…。
いや、確かにオルオと比べたらぺトラさんに対しては壁というか、あったとは思うけど…。
なんて、お風呂に入って出る汗とは違う汗が出ているような、そんな気分になってきた。


「オ、ルオ、は、似てる、から。弟に…。」
「…弟さんいるんですか?」


私の言葉に、ぺトラさんからの空気が、柔らかくなった気がした。


「うん。…今は、訓練兵団にいる。」
「…じゃあ訓練終了後は、うちに?」
「本人、は、憲兵団に、入りたがってる、けど…。」
「…どういうところがオルオと似てるんですか?」
「え?うーん……、うまく、言えない、けど、こう…、お調子者で、でもどこか憎めないところがある、って言うか…。」


私の言葉に、あぁ、と短く答えたぺトラさん。


「憎めない子なんですか?弟さん。」
「うん、きっと。……だ、って、」
「はい?」
「…エルヴィンさん目の前に『ヅラのオッサン』って言ったけど、笑い飛ばされて終わった、し。」
「………えっ!?団長目の前にしてオッサンって言ったんですか!?しかもヅラ!!?」


ぺトラさんが心底驚いた顔をした。


「うん。もともと顔見知りだった、ってのはあったんだけど、それでも本人目の前にして、あんなこと言って笑い飛ばしてもらえるのは、コニーだから、って気がする、し。」


なるほど、とぺトラさんが頷く。
そして何かを考えるような素振りを見せた。
…でも、オルオがコニータイプなら、ぺトラさんは例えるならリコちゃんタイプなわけで…。
もしかしたら、なんて思った時だった。


「でもフィーナさん、話すこと苦手、って言うけど、1番話しにくそうな兵長と仲が良いんですよね?」


ぺトラさんの言葉にまた、どきり、とした。


「な、なんでリヴァイさん?」
「…入団した日のことなんですけど、」
「うん?」


ふぅ、と汗を拭きながら、ぺトラさんは続けた。


「たまたま私が1人でいた時、兵長が近くを通ったんです。兵長は、私たちの上官にあたるわけだし、いきなりだけどある意味『自分を売り込む』ことが出来るし、挨拶に行ったんです。」


浴槽の縁に手をかけ、少し暑そうにするぺトラさん。


「新兵が上官にする普通の挨拶です。『よろしくお願いします』って。でも兵長は、チラッと私を見ただけで、一言『あぁ』と言って去っていったんですね。」


その現場見てないけどすっごい想像出来る…。


「私何か悪いこと言っちゃったのかって、その数日後にゲルガーさんにその時のこと話したんですね。」
「うん。」
「そしたら、」
「…そしたら?」
「『アイツはフィーナフィルターに合格した奴としか話さねぇから気にすんな』って言われたんです。」
「え、」


ぺトラさんが少し口を尖らせて言う。


「でもこの兵団に『フィーナ』なんて人、その時はいなかったし、誰のこと?って思ったんです。」
「…うん。」
「それからすぐにフィーナさんが訓練兵団から戻って来て、この人のことかって思って意識してフィーナさんを見ていたんですね。」
「…」
「…確かにゲルガーさんが言うように、フィーナさんが話さない人とは兵長は話さないし、フィーナさんが親しそうに話す人とは、わりと話しているように感じました。」


言いながら、ジーッとこっちを見てくるぺトラさん。
…………ゲルガーさん、なんてことを…。
なにそのリヴァイさんの人間関係私が決めてる、みたいな話し方…。
もう、あの人はほんとに、なんて思った時。


「どうしたら、」
「え?」
「…どうしたら、私を認めてくれますか?」
「………え?」


ペトラさんが私を見据えて言ってきた。


「兵長に認められて兵長の班に入ることが夢なんです。でもそのためにはまずフィーナさんに認めてもらう必要がある。」
「べ、別に私は、」
「私!絶対に兵長の班に入りたいんです!」


ぺトラさんは、私の方に身を乗り出してそう言ってきた。


「ど、」
「え?」
「どう、して、リヴァイさんの班に入りたい、の?」
「え?どうして、って、…この兵団を希望した人間で、兵長の班に入りたくないなんて人、いないですよね?」


ぺトラさんは少し驚いたような顔をしながら言った。
…リヴァイさんの班に入る、という事。
それはつまり、この兵団で1番死亡率が高い班に、入るという事。
壁外遠征を身をもって経験したのであれば、それはすぐにわかるだろうこと。
だけどそれでもぺトラさんは『絶対に入りたい』と言った。


「ぺトラさんは、」
「はい。」
「カッコいいなぁ…。」
「え?…い、いや、今そんな話しじゃなくて、」


私の言葉にぺトラさんは戸惑ったような声を出した。
…誰しもが入れるような班ではない、最も危険が伴う班。
それでも入りたいと言うぺトラさん。
それはつまり、自分に相応の自信、と言うものがあるわけで…。
明るくはきはきしてるし、兵士としての自信もあって…。
……それにたぶん、リヴァイさんはこの遠征が終わったら…。


「そろそろ上がらないと、のぼせちゃうよ。」
「フィーナさん!まだ話が!」


この瞬間から、ぺトラさんのことを「接し方がわからない新兵」と言う認識から「憧れる女性の1人」として見るようになった。

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bkm

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