Attack On Titan


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ラブソングをキミに


結成 3


「…ひっく…」
「…ぐすっ…」
「うっ…うっ…」


現在、ウォール・マリア屈指の観光地だった巨大樹の森…の、木の上。


「まぁ…、ほら…、初遠征だったわけだし、なぁ…?」


ミケさんが心底困った顔をしているのが、声だけでわかる。


「そ、そうそう。フィーナもほら、半年以上前線離れてて、しかもその前はあの大怪我した遠征だったんだから無理ないだろう?」


なんとかフォローを入れようとしてくれるエルドさんの声が虚しく響く。


「でもフィーナ、お前何年目だよ?」
「ゲ、ゲルガーさん、やめましょうよ!」
「エルドだってそう思わねぇか?初遠征のオルオとぺトラならまだわからなくもねぇが、新兵と一緒に漏らすって、」
「「やめてぇぇぇぇぇ!!!!」」


復帰後初遠征。
伝達班と言うことと、今回は特に、扇形陣形の外側である索敵班の補強を図った班構成になっていて、巨大樹の森に着くまで、巨人と接近することはなかった。
今回の遠征で巨大樹の森が選ばれた最大の要因。
「実戦においての立体機動使用に慣れさせるため」と言う新兵への配慮があったわけだけど、…逆にそれが仇となった…。
巨大樹の森のような木々に囲まれた場所と言うのは馬での走行より、確かに立体機動を用いた移動の方が早いわけだけどそれはつまり、「逃げる」と言う行為においても自分の持てる技術を全て出さなければいけない、と言うわけで…。
初めて人類の敵である巨人を目の当たりにしたオルオとぺトラさん。
そしてあの日、怪我をして以来半年ぶり以上に巨人と対峙した私。
オルオとぺトラさんはその強大さに。
そして私は、あの日のことがフラッシュバックして…、


「いやでもお前らが撒き散らした後ろに俺らいなくて助かったよな!」
「「いやぁぁぁぁぁ!!!」」


揃いも揃って、空中に撒き散らしてしまった(何を、なんて言えない…)
くっくっ、と喉を鳴らしながら言うゲルガーさんに、さっきからぺトラさんと2人、悲鳴をあげていた。
…オルオに至っては顔を真っ青にして一言も口を聞かなくなった…。
でもまだオルオはいいじゃない!新兵なんだもの!
私なんて、私なんて…!


「これ帰還後酒の肴になるな!」
「本当に止めてくださいっ!!!」


いくら復帰後初遠征って言っても、もう入団して3年になるのに!
新兵と一緒に漏らしたなんて…!!
ナナバさんやハンジさんにだって、ましてリヴァイさんになんて絶対に知られたくないのにっ!!!
よりにもよってゲルガーさんの見てる前でだなんて…!


「まぁまぁ、お前ら3人でお漏らし同盟でも作ってさ、」


今後一生からかわれる!
そう思った時だった。


「随分と偉くなったんだな、ゲルガー。」


それまでは困ったような顔をしていたミケさんが、さも愉快そうに笑いながら言った。


「あ?どういう意味だ?」
「なんだ、忘れたとは言わせないぞ。お前、初遠征の時俺の班で、」
「ちっ、ちょっと待てミケッ!!!」
「小便どころか糞漏らしたんだったよな?」
「やめろぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「「「……え……?」」」


ゲルガーさんが顔を真っ赤にして崩れ落ちた。
…………「小便どころか糞漏らした」?
小便、って、おしっこのことでしょ?
糞、って、…………まさか、


「う、うんち、…漏らし、たん、です、か…?」


おしっこ以上なものを…。


「いや、厳密には脱糞しながら失神して俺が野営地まで連れてってやったんだ。」
「……………ゲルガーさん、」
「うるせぇ!!そんな何年も前の話ししてんじゃねぇよっ!!!」
「俺の自慢の鼻が曲がりそうなほど糞した分際で随分な口の聞き方だな?」
「………………」
「まぁそういう奴もいる。お前らもそれくらいのこといつまでも気にすることはない。」


俺は他の班の様子を見てくる、とミケさんは私たちがいるところから少し遠ざかっていった。


「分隊長…!」
「ミケさん…、」
「「素敵です…!!」」


颯爽と立体機動を使って木々の間を擦りぬけて行くミケさんに、ぺトラさんと2人、感嘆の声が漏れた。


「いいか!?お前ら俺の話、するんじゃねぇぞ!?」


ミケさんが戻ってきた後で、みんなで野営地に向かう途中、ゲルガーさんが私、オルオ、ぺトラさんに言ってきた。


「…ゲルガーさんが言わなきゃ言いません。」
「言わねぇから、お前らも言うんじゃねぇっ!!」


うちの班で1番心配だったゲルガーさんの口封じが出来たことで、胸を撫で下ろして野営地入りすることが出来た。
早く着替えて洗ってしまいたいところだったけど、エルヴィンさんから今後の方針説明があったため、野営地中央に集まった(一応乾いてはいる)
…………途中、リヴァイさんが目の端に映ったけど、着替えるまではそっちに顔を向けないことにした。
エルヴィンさんの説明が終わり、今日は見張り以外は解散、てなった時、


「フィーナさん。」


ぺトラさんとオルオが声をかけてきた。


「な、なに?」
「ちょ、ちょっと…。」


こっちこっち、と2人に言われてついていくと、がっ!とオルオが私とぺトラさんの肩を抱き、顔を近づけてきた。


「ば、バレないと思うか?」
「えっ?」


突然のオルオの行動に、何事かと体が強ばった私は、オルオのその言葉に声が裏返ってしまった。


「だ、だから!…昼間のこと、バレないと思うか?」
「フィーナさんから見て、あの人たち本当に言わないと思いますか!?」
「…あ、あぁ…。た、たぶ、ん、大丈夫、じゃ、ない、か、なぁ…?」


ヒソヒソと、小声で話すオルオとぺトラさんに、思わず私も肩を寄せて小声で話した。


「大丈夫じゃないかなぁ、じゃ困んだろっ!」
「そうですよ!確証がないじゃないですかっ!!」
「ご、ごめん、な、さい…。」
「いいかフィーナ。俺たちは『繊細なあまりやってしまった同盟』として一蓮托生なんだからな?」


………………そんな同盟、入りたくない…。


「もし1人でもバレたら、連帯責任で残り2人の名前もあげっからな!?」
「………そこはやっぱり、1人だけ犠牲になってもらって、」
「フィーナさん逃げる気ですかっ!?」
「え!?い、いや、逃げる、とかじゃ、なくて、」
「駄目です。1人バレたら3人バレたものだと思ってくださいっ!」


1人バレても、残り2人のことは黙っていようよ、って意味だったんだけど…。
ものすごく真剣な(いっそ鬼気迫る顔の)オルオとぺトラさんに、その思いを口に出せずにいると、


「あ!フィーナここにいた!お風呂入っておいで。ぺトラも。」


ナナバさんがお風呂だと呼びに来てくれた。


「あ、は、はい!今行きます!…ぺトラさん、お風呂行かなきゃ、」
「…わかりました。オルオ!私がフィーナさんを説得するから!」
「おぅ!お前に俺たちの未来がかかってんだ、任せたぞ!」
「…お風呂……。」


グッ、と拳を握り締め何かを誓い合っているオルオとぺトラさんに戸惑いながら、お風呂の準備をすべく(ついでに洗濯も)テントへと向かった。

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bkm

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