Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


結成 1


リヴァイさんとストへス区へ行った日。
結局あの後、すっかり舞い上がった私は、うかれ過ぎて何をしたのかよく覚えていないと言う事実に後になって愕然とした。
でも、とにかくどきどきしたまま1日が過ぎていったのは、覚えている。
楽しいとか、楽しくないとか、そういう括りではなく「どきどきした」って言う括りが本当にぴったりくる1日だった。
そしてその数日後、今日の訓練も終わるって時にエルヴィンさんに呼び出された私は、エルヴィンさんの執務室に来ていた。


「異動、です、か…?」


次の遠征での班編成が決定したって言うエルヴィンさん直々の通達だったんだけど、ディータさんの班ではなく、ミケさんの班に異動と言われた(だからエルヴィンさん直々に呼び出されたんだと思う)


「あぁ、別に悪い意味でではないから、そこは考え込まないでくれ。」
「はあ…。」
「今回は新兵の初遠征だし、フィーナにとっては復帰後間もない遠征だ。だから索敵班ではなく、ミケのいる伝達班に行ってもらおうかと思ってね。」


悪い意味じゃない、と言われても、あれだけの怪我をした後の初遠征で最前線から外された索敵班から伝達班、と言うのはやっぱり私は「役立たず」なんだろうな、って、言葉にはしなかったけど、そう思った。


「ちなみに班員はゲルガーにエルド。そして新兵からはオルオにぺトラが入る。」
「え?」
「うん?」
「新兵が2人もいる班に異動、です、か?」


ただでさえ復帰後すぐで「お荷物」になりかねない私がいる班に、新兵を2人もつけるって言うのは…。


「『実戦においてのオルオとぺトラの能力が知りたい』」
「え?」
「…と、リヴァイに言われたんだがな。」


だからと言ってさすがに新兵をいきなりリヴァイの班には入れられないだろう、とエルヴィンさんは苦笑いした。


「彼らの訓練兵時代の成績や入団後の訓練状況も考慮した上で2人一緒にミケの班にいれることにした。」
「そう、なんです、ね…。で、でも、」
「うん?」
「…エルドさん、は、リヴァイさんの班なん、じゃ、」
「あぁ…。今回は全体的に班編成を変えるから、キミ以外にも異動してもらう人はいる。」


その後少し、エルヴィンさんと雑談して今日の仕事(と言っても専ら最近は訓練のみだけど)を終えた。


「リヴァイさん、は、」
「あ?」


部屋に戻り、ベッドに入ろうとした時、フッとエルヴィンさんに言われたことを思い出した。


「オルオとぺトラさんのコンビ、見たいんです、か?」


今日は帰りが早かったリヴァイさんももう、ベッドに入るようだった。


「見る価値はあると思ってな。」


もっとあっちに行け、と、無言で手で払うようにしながらリヴァイさんは言った。


「私、ミケさんの班に異動になったんです。」
「そうか。」
「はい。…ゲルガーさんとエルドさんも一緒なんです。」
「壁外でのゲルガーはまぁ、信用出来るだろう。それにエルドも経験は浅いが信頼に足る兵士だ。」
「はい。…でも、」
「あ?」
「ただでさえ復帰後の初遠征なのに、同行する新兵がオルオとぺトラさんの2人もいる班で、ミケさんたちに迷惑をかけないか心配で、」
「お前、」
「はい。」
「…なんでオルオだけ『オルオ』なんだ?」
「……………はい?」


エルヴィンさんに班編成の通達をされた時に思ったことを、ぽろり、とリヴァイさんにこぼした。
だからってリヴァイさんから何か言ってほしい、とか、そういうことじゃなかったんだけど、リヴァイさんが口を開いたことで一瞬期待したことは確か。
でも返ってきた答えは全く違うもので…。
あれ?今、こんな会話してたっけ?って言う内容に、私は頭にクエスチョンマークが3つくらい出たような気がした。
「なんでオルオだけ『オルオ』なんだ?」って、何が?
オルオだけ、オルオ…?
一瞬リヴァイさんが言っていることがわからなかったけど、一拍間をあけて、あぁ、と思い当たった。


「年下で、新兵だか、ら?」
「ぺトラもそうだろう。」


間髪入れずに言うリヴァイさんに、言葉が詰まった。


「ぺ、トラ、さん、は、」
「なんだ?」
「あ、んまり、よく、わからない、ので…。」
「…それは信用出来ない奴と言うことか?」
「ち、違います!…ぺトラ、さん、は、」
「…」
「こう…、すごく、社交的な人なんで、…逆に話しづらい、と、言う、か、」
「あぁ…。」


ここに来て、先輩兵士にすごく良くしてもらって、昔と比べてかなり話すようにはなったけど、それでもまだまだ、コミュニケーション、と言うものは苦手な分野な私にとって、明るく社交的なぺトラさんは憧れであり、それと同時に戸惑いの存在でもあった。


「まぁ…、ミケの実力は確かだ。よほどのことがない限り、前回のようにはならねぇだろ。」


前回、と言うのは私が怪我した時の遠征のことなわけで…。


「リヴァイさん、は、」
「なんだ?」
「今回、は、どこに配置なんです、か?」
「俺は初列の索敵班だ。」


あぁ、やっぱりリヴァイさんはそのまま索敵班になるんだ…。


「じゃあ、」
「あ?」
「…もし、前みたいに食べられたら、もう助かりませんね。」


前も助けてもらえると思っていたわけじゃないけど、結果的に助けてもらえたわけで…。
そう考えると、あぁ、今度食べられたらほんとに死んじゃうのかなぁ、なんて。
次の遠征に対しての恐怖とか、そういうのは今はないからか、どこか他人事のように、ポロリ、とそんな言葉が出た。
私のその言葉に、


「…………」


リヴァイさんは何も返事をしなかった。
だからこの時のリヴァイさんが何を思い、どうしようとしていたかなんて、私は知る由もなかった。


「あの、」
「なんだ?」
「…リヴァイさんの班は、大丈夫なんです、か?」
「あぁ…。俺の班にはエルドの代わりにグンタを入れた。」
「グンタ、さん?」
「『グンタは真面目で努力家』」
「え?」
「…以前お前が言ったことだが、確かにその通りの男のようだし何より、エルドの希望だ。」
「え?」
「『自分が異動になるなら、自分の代わりにグンタを入れてくれ』と言われてな。」
「エルドさん、が、」
「俺の班に入る能力は十分にあるはずだから、1度見てくれ、と頼まれた。」


俺としても使える人間は歓迎する、とリヴァイさんは言った。
………なん、か、少し、と、言うかかなり、衝撃を受けた。
「今」に必死なのは私だけで、みんな、先を見ている、という、周りが見えてるという、か…。
エルヴィンさんやリヴァイさんは、「上に立つ人」としてそれはすごく当たり前なことなんだろうけど、エルドさんも、そういうところがあって、私だけが…。


「どうかしたか?」
「あ、いえ…、寝ます。おやすみ、な、さい。」


そう言ってリヴァイさんに背を向けた。
…みんな、ちゃんと周りが見えていて、先を考えていて…。
今を守る、確立していくことに必死な私は、何故だか急に、気持ちが焦り出した。
けど何をどうしたら、なんてわかるわけもなく、ただ「どうしよう」って言う気持ちだけが急激に大きくなっていった。


「っ!」


そんな時、後ろからにゅっ、と両手が伸びてきて私を抱きしめてきた。


「…………」
「…………」


でもその「手」は何も言わない。
ただ黙って片手で私を抱きしめ、もう片方の手で、子供をあやすかのように、優しく頭を撫でてくれた。


「…………」
「…………」


だから私も、ただ黙って、その手を握り締めた。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -