Attack On Titan


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ラブソングをキミに


restart 7


「あれ?フィーナ、出かけるのか?」
「オルオ!うん、ちょっとそこまで。」


少し前を歩くリヴァイさんについて宿舎を出ようとしたところで、新兵の1人、オルオに声をかけられた。


「道汚れてるから気をつけろよ。」
「ありがとう。いってきます。」
「おー。」


オルオは新兵訓練でよく一緒になる兵士だ。
なんて言うか…、まず見た目からして私よりも年下だとは到底思えない貫禄を放っていた。
思わず敬語で話していた私に、自分より先輩なんだから敬語使うなとタメ口で言ってきたオルオはある意味コニータイプだと思う。
だからなんと言うか…、憎めないキャラで、訓練中もわりと話すようになった。


「誰だ?今の。」
「あ、今のがオルオです。」
「………舌噛んでねぇじゃねぇか。」
「常に噛んでるわけじゃありませんよ。」


オルオの特徴と言ったら、大事なところで舌を噛むってところだと思う。
以前、私がしたその話を思い出したらしいリヴァイさんは噛んでない言ったけど、そんな毎回噛んでたらさすがにオルオの舌が大変なことになると思う。


「たぶん、だけど、」
「なんだ?」
「…今年の新兵の中で、オルオの技術は群を抜いてると思います。」
「…ほぅ…。」
「あ、で、でも、全員を見ているわけじゃ、ないんです、けど、」
「お前が言うんだ。間違いないだろう。」


リヴァイさんは、軽く振り返ってもう小さくなったオルオの後ろ姿を見遣った。


「…彼、と、」
「あ?」
「もう1人、…新兵のぺトラ・ラルさん、が、良いコンビで…。実戦でも、2人を組ませたら、新兵と言えど良い線、行くんじゃないかな、って、」
「ぺトラ?誰だ、そいつ?」
「ほら、いるじゃないですか、綺麗な金髪の、」
「知らん。」
「天使みたいな子ですって。」
「その『天使』とやらを見たこともねぇからどんな奴か想像もつかん。」
「……………綺麗な金髪の可愛い女の子です。」


いや…、うん。
すごくリヴァイさんらしいんだけど、ね…。
あれだけゲルガーさんが騒いでたのに、知らないんだ、ぺトラさんのこと…。
それに驚きとともに、どこか、ホッとしたような気もしてる自分がいた。


「…オルオとぺトラ、か…。」
「気になりますか?」
「俺の班で使えるレベルならな。」


リヴァイさんが率いる班は、いわゆる「精鋭中の精鋭」で出来ているわけで。
でもだからって、班員に欠員がでないわけじゃ、ない…。
だけど欠員が出たからって安易に増員出来るような班ではない、ってことは、よく理解しているつもりだ。
それでも本来4〜6人体制で動く班で、欠員ばかりだと、1人あたりの負担が増えるわけで…。
リヴァイさんの班に到底入ることなんてない私に心配されたくないだろうけど、そこはやっぱり、心配になってくる、と、言うか…。
いや、本当に人のこと心配している場合じゃないんだけど、ね…。


「…それで?」
「え?」


今日は特にどこに行きたい、ってわけでもなかったけど、リヴァイさんが兵舎の近くは嫌って言うから(気持ちはわからなくもない)馬車に乗ってストへス区まで行くことにした。


「今日のネタはそれで終わりなのか?」
「…え?」


馬車の座席の背もたれに肘をつき、外の景色を眺めているリヴァイさん。
………「ネタ」?
ネタ、って…、なに…?


「『私すっごく楽しみにしてたのにいざ行ってみたら全然話さなくてあんなのデートって言わない』」
「え、」
「…と、ゲルガーやナナバの前で泣き喚いたこと、忘れたんだったな。」


チラッ、と、視線だけ、私に向けたリヴァイさんに、背筋が冷えた気がした…。


「…わ、私、」
「あぁ、気にするな。別に恥掻かされたと根に持ってなどいない。ただお前の酒癖の悪さに呆れただけだ。」


………なにそれ!
根に持ってるから今こうして話題にしてるんじゃないっ…!!
なんて思っていても、そんなこと口が裂けても言えるわけもなく…。


「…すみ、ま、せん、でし、た…。」


ただひたすら、俯いて謝罪するしかなかった…。
…もう、「お酒を飲む」ということ自体、やめよう、か、なぁ…。
なんて思った時、


「っ!」
「終わったなら着くまで寝かせろ。」


リヴァイさんが、私の左肩にもたれかかってきた。
………な、なん、か、すっごい今さらな気がするんだけど、今すっごく「恋人とデート」してる気分になってきた気がする…。
だってこの人と知り合ってから早5年。
今まで訓練だなんだと2人きりな時はあったけど、デートらしいデートなんてただの1度もなく(そもそもにして5年のうち4年間くらいはリヴァイさんにとって「デートする」と言う対象から外れていたと思うし、何より私の中でも外れていたし)唯一のデートって内地に行ったあの時だけど、ゲルガーさんたちがいてデートって感じじゃなかったし…。
こんな風にゆっくりと時間が流れる中で、出かける、ってことが、なかったから…。
…そう思うと私、20歳にしてようやくデートと言うものを体験してる、ってことになるんだ…。
リコちゃんに言ったら、呆れられそうだなぁ、とか。
そんなこと思いながら、私の肩にもたれかかるリヴァイさんのさらさらの髪に顔をくっつけた。




「(心音煩ぇ…)」
「お客さん、そろそろストへス区につきますよ?」
「あぁ、そのままストへスに入ってくれるか?」
「あれ?兄さんの方が起きてたのか?…じゃあまぁ、もう少しゆっくり走ろうかね。」
「そうしてくれ。」




リヴァイさんて良い匂いするんだよなぁ…。
具体的にどんな?って聞かれたら困るけど…、「清潔そうな匂い」って言葉で説明できる気がするような…。
でも、それがすごく、リヴァイさんらしくて、ホッとする…、なんて、そんなことを思いながらストへス区に向かった。

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bkm

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