Attack On Titan


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ラブソングをキミに


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「いてっ!?おい、どこ見、へ、兵長!?」
「………」
「す、すみませんっ!兵長がそこにいるの見えなかったんでっ、」
「ば、馬鹿!」
「え?…あっ!い、いや!今のはあのっ!…ほ、本当にすみませんでしたっ!!!」
「……おい。」
「は、はいぃっ!!」
「気が済んだらそこを退け。邪魔だ。」
「し、失礼しましたぁっ!!」
「……………お前、兵長にぶつかった上、あんなこと言ったのによく無傷だったな…。」
「…す、すっげぇ怖かったっ…!!!」



「…フィーナが帰ってきて何が1番良かったって、アイツの機嫌が一定レベル以上を保ってることだよな?お陰で俺たち一般兵や、入ったばっかの新兵共はどれだけ救われてることか…。」
「ゲルガーさん、あんたはまだ良いじゃないですか。俺なんてほんっと、学習能力のない上官のせいでとんだとばっちりの日々で、」
「モブリットさんはそれでも毎日じゃないでしょう!?俺なんて同じ班だからもう、機嫌最悪だろうがなんだろうが毎日顔突き合わせてたら、フィーナいねぇんだからお前がなんとかしろって言う周囲の無言の圧力まで感じるようになって…!!!」
「エルドも苦労してるんだな…。」
「…モブリットさんっ…!!」
「(コイツら似てる…)」




新兵との訓練もだいぶ慣れてきて、明日はいよいよリヴァイさんと出かける、って日の夜。
空を見ると、少しだけ、雲が厚いような気がした。


「おい、フィーナ。」
「はい?」
「…お前、さっきから何やってる?」


ソファに座り、静かに本を読んでいたリヴァイさんは、周囲でバタバタとしていた私が気になったらしい。
本に目を向けたまま、眉間にシワを寄せたリヴァイさんから少し、目を逸らして口を開いた。


「…服、を、見て、ます。」
「さっきからずっとか?何度も同じことしてるだろ?」


…あれ?今、本読んでたんですよ、ね?
なんで「さっきからずっと」「同じこと」をしてるって、バレてるんだろ…。
そこでようやく本から目を話したリヴァイさんの怪訝そうな顔が視界に入ってきた。


「だ、って、」
「あ?」
「…明日、雨、降りそう、なんで、」
「は?」


私の言葉に、お前何言ってんだ?って声をあげたリヴァイさん。
…あぁ、また眉間にシワが増えた…。


「あ、雨、」
「あ?」
「…降、った、ら、着る服も変えた方がいいかな、って、」
「はぁ?」


リヴァイさんの顔が明らかに呆れていってるのが、手に取るようわかる。
…わかりたくないのに、なんでこういうことばっかりわかるんだろ…。


「だ、だって、雨の日に白い服だと、泥が跳ねたりしたら、」
「洗えばいいじゃねぇか。」
「…………そう、です、ね…。」


…確かにそうなんですけどね。
そうなんですけど、それを言ってしまったら会話が終わるじゃないです、か…。
普段あれだけ綺麗好きなのに、リヴァイさんは男の人だから、そういう跳ねた泥がついた服を着たままデートを続ける、って言うことがどういうことなのか、わかんないのかなぁ…。


「だいたいお前なんでそれを着るんだ?」
「え?」


私が小さくため息を吐いたのが聞こえたようなタイミングでリヴァイさんが聞いてきた。


「な、なんで、って…?」
「それじゃなくて内地に行った時に着たワンピースでいいじゃねぇか。」


あれなら下が紺で泥が跳ねても目立たないだろ、とリヴァイさんは言う。
……………いやいやいやいや。


「あ、あれは、ウォール・シーナに行った時に着たじゃないですか。」
「…お前は1度着た服は着ないつもりなのか?」


どこの潔癖症だ、とでも言いそうな勢いでリヴァイさんは眉間にシワを2本ほど増やしながら言った。
…あなたにだけはそんな言い方されたくないです。
なんて口が裂けても言えないですが…。
1度着た服を着ないんじゃなくて、「前回デートした時に着た服をまた着たくない」って言うのが正しいわけで。
…そういうの、わかんないのかなぁ…。


「あ、れは、私に似合わない、し、」
「だからどこのどいつがそんなこと言った?」
「…べ、つに、誰、からも、言われてません、けど、」


誰からも言われてないですけど、何も言わずに立ち去ったのは、


「じゃあいいじゃねぇか。あれを着ろ。お前によく合ってる。」


何も言わずに立ち去ったのは…。


「…え?」


リヴァイさんの言葉を思わず聞き返してしまった。


「なんだ?」
「え!?あ、い、いや、今、何か聞こえた、ような…?」
「はぁ?」


あぁ、今日何度目だろう、リヴァイさんのこの顔…。
なんて言う顔を向けられながら、顔に少し、熱が集まるのを感じた。


「だから似合ってんだからあのワンピース着ればいいだろ?」


何度言わせる気だ、と若干怒りオーラを出し始めたリヴァイさん。
……や、やっぱり、聞き間違いじゃなかった…!


「じ、じゃあ、あのワンピースに、しよう、かな。」
「だからそうしろって言ってんじゃねぇか。いい加減目の端で引き出し開けたり閉めたりうぜぇんだよ、必要ねぇ奴はさっさとしまって大人しくしてろ。」


そう言ってリヴァイさんは再び本に目を落とした。
…リヴァイさんがあのワンピース、似合ってるって言った…!
たとえそれが早く本に集中したいがための嘘だったとしても、それでもいい。
前回のデートでも着た服だけど、前回、って言ってももう数ヶ月も前のこと、だし。
本当は違う服で行きたいと思ってたんだけど、でもリヴァイさんがこれでいい、って言うならいいかなぁ、なんて。
ベッドに入る頃にはすっかり脳内ピンクになっていたと思う。
そして…。


「おい。」


翌朝、イラっとした声を出したリヴァイさんに、あぁ、やっぱりか、と思いながら振り返る。


「テメェ、なんだその靴は?」
「…だ、って、夜中に、雨、降っちゃったから、道がぬかるんでて、新しい靴じゃもったいないか、なぁ、なん、て…。」
「…………」


朝、目が覚めて窓から空をみると、曇ってはいたけど雨にはなっていなくて。
ホッとしたのも束の間、下を見たら夜中に降った雨で、舗装されていない道はぬかるんでいて…。
あぁ、あの靴が汚れちゃう、なんて思ってほぼ反射的に履いたのはいつもの靴だった。


「あれの履き始めに俺と出かけるって話だったはずだが?」
「…そう、なん、です、けど、履き始めならやっぱり地面が汚れてない日が、」
「あ゛?」


声だけじゃなく、体全体でイラっとした何かを出し始めたリヴァイさんに、自然と視線は床の方へと落ちていった私。
…でも、だって、やっぱりあんまり汚れない日に履きたい、って言うか、


「おい、フィーナ。」
「は、はい?」
「そこに座れ。」
「え?…や、わ、私、」
「いいから早く座らねぇかっ!」
「はいっ!」


そこ、と言いながらソファを指さされた時に既に嫌な予感はしてた。
…してたんだけど、


「いたっ!?」
「………」


無言で私の足首を痛いくらいに握り締め、履いていた靴に手をかけあっという間に脱がせたリヴァイさんに、抵抗なんて、出来なかった。


ガン ガンッ


ぽい、ぽい!とまるで捨てるかのように私が履いていた靴を投げ捨てたリヴァイさんは、


「…ったく、手間かけさせんじゃねぇよ。」


ぶつぶつと言いながら、相変わらずなヤンキー座りで私に真新しい靴を履かせてくれた。
どきどきと、自分でも熱を感じる顔で、その仕草を見守っていた。


「………」
「………じゃあ行くぞ。」


両方履き終わった一拍後、リヴァイさんは立ち上がってドアに向かった。


「何してる。早くしろ。」
「は、はい!」


まだまだ地面はぬかるんでるだろうし、そもそも今日はいつ雨が降ってもおかしくない天気だけど…。
それでも、いいかな、って。
この日ようやく、誕生日プレゼントにもらった靴を履いて、出かけることが出来た。

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