Attack On Titan


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ラブソングをキミに


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「フィーナ!そろそろ慣れてきた?」


調査兵団に戻ってきてしばらく。
…ここ最近、起きる、訓練、寝る、の繰り返しで、辛うじて会話してるのは、毎朝私を起こしてくれるリヴァイさんとだけなんじゃないか、って日々を送っていた。
そんな日々を何日か過ごし、ようやく体が少しだけ、軽くなってきた、かな?と思うくらいになった頃、共同風呂でゆっくりしていた私に後から入ってきたナナバさんが声をかけてきた。


「どう、で、しょう…。正直なところ、疲れが取れなくて、」
「ははっ!それは仕方ないよ。」


エルヴィンの指示した訓練はハードだから、とナナバさんは言った。
……なんだかナナバさんと話すのもすごく久しぶりな気が、


−ナナバやゲルガーの前で大泣きしたのも、覚えてないんだろう?−


ナナバさんとの会話をどこか懐かしんでいたら、いつかのリヴァイさんの言葉が脳裏を過ぎった。


「あ、あのっ!」
「うん?」
「…わ、私、以前、ゲルガーさんの部屋で、すごく…見苦しい姿をお見せしてしまったんじゃないかと…、」
「…あぁ、あれ?」


とにかく謝罪を、と話を切り出した私にナナバさんは一瞬え?って顔をしたけど、すぐ何のことか把握したようだった。


「す、すみません、私、」
「いいのいいの!なんか貴重な体験出来た気分だし!」
「き、貴重な、体験?」
「そう!フィーナががつーん!とはっきり物を言うところも初めて見たけど、何よりデレるリヴァイも初めて見たし!」
「……………デレたんですか?『あの』リヴァイさんが?」
「…覚えてないの?」
「こ、後半、は、あんまり…。」


それは残念だね、とナナバさんが笑った。


「な、」
「うん?」
「…な、なに、を、して、そうなったんですか?」
「…うーん…、リヴァイはなんて言ってるの?」


ナナバさんは浴槽に片腕をついて、聞いてきた。


「『あれだけ泣き喚いたわりに記憶がないのか』って呆れてたと言うか…。」
「ははっ、リヴァイらしいね。」


ナナバさんが片手で掻き上げた髪から水滴が頬に流れ落ちた。
…相変わらずナナバさんの綺麗なお姉さんぷりはすごいな、と改めて思った。


「リヴァイが言わないことを私が口出すのはどうかと思うけど、」
「は、い?」
「でもまぁ、…もう少し、いろいろ言葉にしてみるといいかもね。」
「言葉に、です、か?」
「そう。『つっけんどんな言い方で、それで伝わると思ったら大きな間違いです』」
「え?」
「でもその『つっけんどんな言い方』でも言うだけマシな時もある。」
「…」
「…言わない言葉が溜まりに溜まって大爆発起こすより、良いと思うけどね。」


控えめなのはフィーナの良いところだけど、とナナバさんは言う。
…ナナバさんの言うことは、すごく理解できる。
そしてそれは、私が1番、苦手とすることで…。
つまり私は、お酒の力を借りて普段言えない溜まりに溜まっていたことを爆発させた、ってことなんだろうな、と…。
あの日、後半の記憶が曖昧だけど、むしろ全て無くなった方が良いのかもしれない、なんて思うくらい、爆発してしまったんじゃないか、って。
ナナバさんの笑顔を見ながら思った。


「どうかした?」
「あ、いえ…。」


…しかもそれ、ゲルガーさんとナナバさんの前で、って、私最悪なことしたんじゃない…?
リヴァイさん、そのことに対しては何も言わなかったけど…。
本当に、今後リヴァイさんの許可なくお酒を飲むって言う行為は控えようって、本当に思った。


「お、かえり、なさい。」
「あぁ。…………ただいま。」


お風呂から部屋に戻ると、リヴァイさんが戻ってきていた。
リヴァイさんは、「気をつける」と言ってから、確かに挨拶は気をつけてくれている(たまに不機嫌でしない時もあるけど)
いたって普通の機嫌の時は、まだどこかぎこちないけど、挨拶をし返してくれる。
リヴァイさんは、リヴァイさんで、変わろう、って努力してくれている(たぶん)


「どうかしたか?」


ドアから動こうとしない私に、リヴァイさんは不審そうな目を向けた。


−言わない言葉が溜まりに溜まって爆発するより、良いと思うけどね−


「?…なんだ?」


−もう少し、いろいろ言葉にしてみるといいかもね−


「…なんでもありません。」


ナナバさん、やっぱり私にはそれが1番、難しいです…。
いつもそうなんだけど、こう…、喉元まで出かかっているんだけど、まるで小骨が引っかかってるかのようにぶら下がるその言葉が喉から出るなんてことなんて、


「なんでもなくはないだろう。」


喉から出ることなんて…。


「なんだ?」
「…」
「言ってみろ。」
「………あ、足!」
「あ?」


喉の奥に引っかかっていた小骨は、


「足、治ったんです。」
「それは知ってる。」
「だ、だからっ、」
「なんだ?」
「く、靴、履こうかと思って、」
「…あぁ。お前の靴だ。履けばいいじゃねぇか。」


気づかなかっただけで、


「これ、から、は、」
「あん?」
「毎日、履こうかと、思ってるんです、が、そ、その前に、」


すぐ取ることが出来る位置に、あったのかもしれない。


「リヴァイ、さん、と、」
「なんだ?」
「その靴、履いて、出かけたい、な、って、思う、と、いう、か…、」
「……………」


手にしっとりと、汗を掻きながらも、そんなこと思った。


「内地に行きたいなら、」
「あ!べ、別に内地じゃなくていいんです!本当に!近くでいいんです!」
「…………」
「だ、だめ、です、か?」
「…いや、構わん。」
「あ、ありがとうございます!」


私が取り出した小骨は、リヴァイさんによって綺麗に処理されたようだ。


「今日訓練でオルオが、」
「…オルオ?誰だソイツ。」
「ほら、言ったじゃないですか。よく舌を噛んで話が進まない新兵がいる、って。」
「あぁ…。ソイツがどうした?」
「そのオルオが、」


小骨が取れた喉は、するすると言葉を出せるようになったみたいで、その日は本当にどうでもいいようなことを、リヴァイさんに話していた。

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