Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


restart 3


「いくら訓練だからって、」
「…」
「そこまで殴り合わなくて良いと思うの。」


翌日、正式にあと2週間で調査兵団へと戻ることが決まり、教官補佐と言う仕事と並行して訓練を再開することになった私。
…と、言ってもリヴァイさんが言った通り、さすがに初日から訓練兵に混ざるわけにはいかないから1人自主トレをしていたら、訓練の休憩中に、なんだか周囲が盛り上がっているのに気がついて。
何事かと思って近づいたら、ミカサと、…女子の中でミカサの次に成績の良いアニが、本気で殴り合っていた…。
慌てて止めに入ったものの、時既に遅し…。
恐らく104期の中でもナンバー1、2の格闘術の成績を出している2人はお互い青アザを作るほど殴り合っていた…。
ミカサはすぐにエレンとアルミンに回収されたけど、アニは放っておけ、とでも言うような勢いで1人去っていった。
…だからなのか、私の足が動いたのは、アニの方だった。


「別に必要ないよ。」
「駄目。ちゃんと手当てしなさい。」
「だからいいって。私なんかよりアンタが可愛がってるエレンのお友達の手当てしてやったら?」


もちろん、アニは私の制止も聞かずに1人どこかへ行こうとしていたけど…。


「いたっ!?」
「…ほら、やっぱり目尻からこめかみにかけて赤くなってるじゃない。」
「…だからって普通人の髪引っ張って確認する?」


なんでそうしたのかと聞かれたら、きっと、もしここに「あの人」がいたらこうしたんじゃないかと思ったから、と答えると思う。
こっちを向かずに去っていこうとするアニの前髪を引っ張るように掴んだら、目尻からこめかみにかけて赤くうっ血しているのがわかった。
それを指摘した私の手をパチン、と払い除けてアニは立ち去ろうとする。


「そこ、ちゃんと冷やして薬塗ろう。」
「だからいいって言ってるだろ、アンタもしつこいね。」
「だから駄目だって言ってるでしょ?…女の子が、顔に傷なんて作っちゃ駄目。」


私の言葉に、アニはまじまじと私を見てきた。


「女の子?私が?」
「13歳の可愛い女の子でしょう。」
「………」


その言葉に、アニは一瞬目を見開き、大きくため息を吐いた。


「調査兵団は変人集団てほんとなんだ?」
「ははっ…。まぁ、そこは否定しないけど。」


私の部屋に連れてきて、青アザに効く塗り薬をアニに塗ってあげた。


「戻るって聞いたけど…。」


普段1人でいるだけあって、アニはあまり喋らない子だ。
そのアニが、治療後部屋から出て行く直前で私の方を振り返り口を開いた。


「調査兵団に?…そうだね、もうすぐ戻るよ。」
「…やめた方がいい。」
「え?」
「アンタ、向いてないよ兵士。」


この時、どうしてアニがこんなことを言ったのか私にはわからなかった。
でも…。


「うん、知ってる。」
「…」
「でもやめない。」
「死ぬよ、アンタ。」
「…うーん…、それは嫌だなぁ…。でも、調査兵団じゃなくても、人はいつか死ぬんじゃない?」
「…」
「それなら、『好きな場所』で死にたいかなぁ、って…。」
「それって壁外でってこと?」
「…ううん…、場所はどこでも良いのかも。」
「はぁ?」


兵士をしてる以上、それも調査兵団である以上、死が避けられないものだとしたら…。


「私には関係ないけど、」


リヴァイさんの、傍で、死にたい。
…痛いとか、痛くないとか、怖いとか、怖くないとか。
考える前に、同じ「死」であるなら、って…、これだけの怪我をしたからこそなのかもしれないけど、いつからか漠然とだけど…、そんなこと思うようになっていた。


「忠告はしたからね。」
「…ありがとう、アニ。」
「………」


アニはそれだけ言うと部屋から出て行った。


「向いてない、かぁ…。」


これだけの大怪我してしまったくらいだし、他人から言われるまでもない、けど…。
それでも、調査兵団の兵士としての私を知らない(ましてコニーと同い年の訓練兵)に言われると、ちょっと…と、言うか、わりとずっしりと来る、ものが、ある…。
どこか、重い気持ちの中、窓の外を見つめた。


「姉ちゃん、いつでも戻ってきていいんだからな!」


それから2週間なんて、あっという間で。
引き継ぐべき仕事も終わり、いよいよ調査兵団へと戻る日。
そうなるだろうなぁ、なんて思ってはいたけど、どこか涙ぐんでるコニーに、教官補佐として戻ってきてもいいって言われながら見送られている。
…でも私が訓練兵になる時はあれだけ大泣きしてたのに、今は涙ぐんでるだけだから、コニーも大きくなったんだなぁ、なんて。
コニーからしたらちょっと的が外れているであろうことを思っていた。


「お姉さん、」
「エレン。アルミンとミカサも。見送りに来てくれたの?」


コニーが涙ぐみはじめた時(ちなみに今日はサシャ不在。食堂のフルーツを食べた罰で休暇日だけど敷地内5週させられてる)エレン、アルミン、ミカサがやってきた。


「俺!絶対調査兵団に行きますからっ!」


エレンは、「あの日」と変わらず、ううん、あの日よりももっと、強い眼差しでそう言った。
…調査兵団へ来ると言うこと。
それは他の兵団兵士よりも、生き急ぐことと言っても過言ではない。
でも…、だからこそ…。


「エレンはもっと、対人格闘術を覚えた方がいい。」
「うっ…、はい。」
「アルミンは、座学はもう十分すぎるほどだけど…、もっと基礎体力があがるといいね。」
「…はい。」
「ミカサは…、」
「…」
「…好きなように、やったらいい。」
「はっ!?何だソレ!ミカサだけ好きにしろっておまっ、お姉さんに何したんだよっ!!」
「……別に何もしてない。」
「いいやしたんだってっ!だからお前だけ見捨てられたようなこと、」
「違う違う!」


誰に強制されるわけでもなく、「自分の意志」で、来て欲しい。
死に急ぐなんてこと、ないように…。
私の言葉を受けて、勘違いしたらしいエレンに違うと手を振りながら答えた。


「ミカサはね、…人にどうこう言われるより、はっきりと優先順位がわかっている子だから…、自分の思う通りに進んだ方が良いと思う、ってこと。」
「…あぁ…。」


私の言葉に、納得したらしいエレンは短く返事をした。


「みんながしっかり訓練を終わらせて、調査兵団に来てくれること、待ってる。」
「はい!」
「コニーもね。」
「ぐすっ…、うん?」
「…憲兵団、目指して頑張って。」
「…おぅ!」


4人に手を振って、訓練兵団宿舎を後にした。
やっぱり、どこか寂しい気持ちは否めない。
…そして戻ってからは本当に「兵士」としての訓練も本格化するわけで、その不安も否めなかった。
私、みんなについて行けるかな…。
エルヴィンさんが改めて書面で送ってきた復帰日程について見たら、この間入団してきた新兵の初遠征の時に同行しなきゃいけないみたいだし…。
いや、置いていかれるよりはずっといいんだよ。
ずっといいんだけど、3年間訓練してきた新兵と、ほぼ半年間全く訓練して来なかった私が一緒に遠征って、こう…、気持ち的にきついというか、まさか新兵以上に足手まといになるわけにはいかないし…。
なんて、誰に言えるわけでもない思いを抱えて、調査兵団宿舎へと向かった。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -