Attack On Titan


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ラブソングをキミに


焦燥 8


現在、


「………………」
「………………」


何を思ったのか、横になっていた私を抱き上げ、自分の足の上に座らせたリヴァイさんと見つめあったまま、どちらも言葉を発せず長い沈黙に包まれている。
……………え?
な、なんで?
なんでいきなり膝の上に!?
そしてなんでリヴァイさん何も喋らないのっ!!?


「今日は叫ばないのか?」


なんて今の状況に私がパニックになりかけてた頃、リヴァイさんがゆっくり口を開いた。


「さ、叫ぶ?」
「ゲルガーの部屋で酔って叫んだだろう。」


少し上ずった声で聞き返した私に、リヴァイさんは片手は私の腰を抱くように緩く回されていて、もう片方の手でラム酒の入ったグラスを傾けながら言った。
……………………もしかして、この前のこと、今説教されるんだろうか…?
確かにこの前は、なんだかんだで流されたような感じになり「謝罪」と言うものはしなかった気がする…。
いやでもだからってなんで膝の上?
え、逃げられないように?なんて思いながらも、


「す、すみま、せん…?」


とりあえず、謝罪した。
…ら、


「はぁ?」


お前何言ってんだ?って勢いの声を出された…。


「それは何に対する謝罪だ?」
「え!?」


何に対する、なんて…。


「フィーナ。」
「は、はい?」
「…お前、覚えてないのか?」


グラスを片手に、横目で私を見るリヴァイさん。
…………これ、絶対不味い状況な気がする…。


「す、すみ、ま、せん…。」
「…」
「で、でも!全部覚えてないわけじゃなくて、部分部分抜けてる、と言うか、」
「覚えてないんだな?」
「…………こ、後半、は、あまり…。」
「……………」


具体的にどこらへんから記憶が曖昧になっているか?って聞かれたら、自分でも困るけど…。
覚えてるのは、リヴァイさんに対して日頃の積もり積もったものをぶつけたこと(それが具体的に何か?と聞かれたら困る。でもきっとリヴァイさんが私に膝枕されながら言ったことなんだろうとは思うけど…)
…………そして実のところ、この部屋にどうやって戻ってきたのか覚えてない、とか。
口が裂けても言ってはいけない気がしてならない…。


「なるほど?」


コトン、とリヴァイさんはテーブルの上にグラスを置いたかと思ったら、私を抱きかかえたままソファに倒れこんだ。


「あれだけ泣き喚いたわりに記憶がないのか。」
「な、泣き喚いた!?」


決して大きいわけではないソファに2人で横になる、って言うのはちょっと辛いものがあって。
だからすでにかなり、体が密着していた。


「ナナバやゲルガーの前で大泣きしたのも、覚えてないんだろう?」
「…お、大泣き…。」


背もたれ側に私を寝そべらせ、自分はまるで私の体の上に重なるかのように軽く体重をかけ、ソファに片肘をついているリヴァイさん。
もう片方の手で、私の手を取り、自分の口元に持ってきて手の甲にクチビルを落とした。


「わ、私、」
「うん?」
「…な、何か失礼なことを、」
「……………」


私の言葉に、リヴァイさんは手を放し、指先で私の顔を撫ではじめた。


「…飲ませれば見れるかと思ったんだがな…。」
「え?」


リヴァイさんは相変わらずの無表情で、そう呟くように言った。


「な、」
「あ?」
「泣い、てる、ところ、見たかったんです、か?」
「…お前の泣き顔なんぞ腐るほど見てる。」
「いたっ!」


私の顔を撫でていた指先は、ピン!と私の頬を弾いた。
リヴァイさんは、私の頬を弾いた直後、


「っ、」


私の首筋に顔を埋めてきた。


「リ、ヴァイ、さん…?」
「…………」


そしてそのまま動かなくなったリヴァイさん。
…………もしかして、ここで寝た、とか言わない、よ、ね…?
いくら私が兵士で、リヴァイさんが一般的な男の人より小さいって言っても、私今日ようやく「簡単な運動」を許されただけの怪我人で、ここからベッドまでリヴァイさんを運ぶ自信なんてないんだけど…。
でも…、


「リヴァイ、さん?」
「……………」


リヴァイさんが起きて動こうとする気配なんて、全くなかった。


「…リヴァイさん。」
「…」
「私、すごく、心配で、不安でした…。」


だから、言うことが、出来たのかも、しれない。


「もし、リヴァイさんが、遠征から帰ってこなかったら、って…。」
「…」
「私なんかが同行しても、リヴァイさんを、助けることなんて、出来ないだろうけど…。それでも、私がいないときに、何かあったら、って、すごく、心配だった…。」
「…」
「ちゃんと、帰ってきてくれて、ありがとう、ございます…。」


リヴァイさんの背中に手を回しながら言った言葉に、返事なんてなかったけど、それでも腕の中の確かな温もりに、すごく安心した。




「(結局コイツは、自分の意識が飛んでるか俺の意識が飛んでるかしねぇと言わねぇんだな)まぁ…、お前らしいがな…。」
「…」
「おい、フィーナ。ここで寝たら風邪を引く。ベッドに連れてってやるから動くんじゃねぇぞ。」
「…ん…」




夜中に何度か目が覚めたけど、すぐにリヴァイさんの顔が視界に入ってきて…。
その度に、本当に安心して、目を閉じることが出来た。

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bkm

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