Attack On Titan


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ラブソングをキミに


焦燥 6


「休暇?なんだ、ほしいなら早く言え。」


調査兵団本部兼宿舎に駐在している医師に怪我を診てもらいたいから、なんてとってつけたような理由で休暇(しかも連休)をくれ、なんて駄目もとでキース教官に申し出たところ、意外にもあっさりと許可が下りた。


「だいたいお前は真面目すぎだ。書類整理に休暇日も休んでないらしいじゃないか。スプリンガーに、あぁ、弟の方だがな。アイツに、『姉ちゃんを働かさせすぎだ』って言われたぞ。」
「…弟が、本当にすみません…。」


コニーったら、本当に怖いもの知らずなんだから、なんて思っていても、心の底では、コニーでかした、なんて思っている自分もいるから、私は姉として駄目なんだと思う…。
コニーの影ながらの働きのお陰で得ることの出来た連休で、1度調査兵団宿舎に戻ることにした。
…調査兵団の食堂のパン、コニーと…それから日頃コニーと仲良くしてくれてるサシャの分も買ってきてあげよう、なんて。
相変わらず教官の頭を悩ませるくらいバカ騒ぎしながら訓練している2人に対してひっそりと思った。
今回は、前回の失敗(と、言うわけではないけど)を繰り返さないためにも、何より事前申請だったため、時間的猶予があったから、前もってリヴァイさんにいつ帰るか手紙を出した。
その手紙には珍しく返信が着て。
少しどきどきして封を開けたらたった一言「わかった」と言う文字だけが書かれていた…。
あれを読んだ瞬間、この人本当はわかってないんじゃないか、って全力で思った私は、間違っているんだろうか…。
ガタンガタン、と揺れる馬車の中で、もう1度、その手紙を見る。
別に可愛らしい便箋に書かれているわけでもなければ、色彩豊かに文字が書かれているわけでもない。
調査兵団宿舎の近くのお店で売られているなんの変哲もない、報告書としても使える紙に、黒い万年筆でたった一言書かれているだけの文字。
でもそれが、すごくリヴァイさんらしかった。


「うん。順調だね。そろそろ簡単な運動をしはじめてもいいよ。」


宿舎に着いて、最初に医師のところに来た私は、怪我からの順調な回復を聞かされた。
…と、言ってもまだまだ制限つきで立体機動を使った訓練はもう少し先だと言われた。
それでも前回はまだまだと言われたけど、今回でいよいよ調査兵団復帰間近に思えて、嬉しさが込み上げた。


「…た、だい、ま…。」


軽くなった足取りで、宿舎の自室に向かった。
当然のことながら、室内には誰もいない。
まだまだ職務時間内なのだから、いても驚きだけど。
…まだ時間も早いし、1度、エルヴィンさんのところに顔を出して、怪我の経過を話して来ようか…。
そう思いながら、何とはなしに、部屋を見渡したら、


「あ、」


リヴァイさんの部屋にしては珍しく、部屋の天井に小さい蜘蛛の巣が張られているのに気がついた。
…大きさからして、リヴァイさんが朝出てから張られたもの、かな…?
医者からも簡単な運動を、と言われたし、ちょうどいい、と思い、ハタキと椅子を持って蜘蛛の巣がある真下まで移動した。
…リヴァイさん、自分の部屋に蜘蛛の巣があるって知ったら、物凄い勢いでそこだけじゃなく、部屋中大掃除しそう…。
そうなる前に、証拠隠滅させよう…。
椅子の上に上がりパタパタと、ハタキで蜘蛛の巣を取り、他にもないか確認していた時、


ガチャ


部屋の入り口のドアが開いた。


「お、かえり、な、さい…。」
「…………」


ノックもなしにドアを開ける人物なんて、1人しか、いるわけなく…。
その人物に椅子の上に乗ったまま「おかえりなさい」と言うと見事無言の答えが返ってきた。
………確かこの前来た時、「挨拶は気をつける」って言ってなかったですか…?
え、気をつけてこれなんですか?
「あぁ」すら無くなって、さらに酷くなってませんか?
…ひょっとして今現在機嫌が悪いとか言いますか?
リヴァイさんが機嫌が悪い時なんて、とにかく刺激しないことが1番だと過去に学んでいる私は、もう挨拶なんていいや、と、もう1度、蜘蛛の巣がないか天井を見渡した。
蜘蛛の巣が無いことが確認出来、よし椅子から降りよう、と下を向いた瞬間、


「きゃあ!?」


隣まで来ていたリヴァイさんに担ぎ上げられた。
リヴァイさんはそのままソファまで行き、私を座らせ、自分はと言うと、


「…………」


私の目の前で膝をつき、私の両腿に顔をつけるような格好で、腰に手を回し抱きついてきた。


「リ、ヴァイ、さん…?」
「…………」


…何が、起こったのか、よくわからない。
状況を整理すると、私は右手に蜘蛛の巣を取ったハタキを持ったまま、リヴァイさんに腰に抱きつかれると言う格好で座らされている。
……いきなりなんでこんなことになったんだろう…?
こんなこと、今までなかったのに…。
…リヴァイさん、何か、あったのかも、しれない…。
そう思い、そっと、まるで俯くように私の足に顔を乗せているリヴァイさんの頭を撫でた。
その直後ピクッ、とリヴァイさんが体を震わせ、ゆっくり顔をあげた。


「…………」
「…………」


リヴァイさんを見下ろす私と、私を見上げるリヴァイさん。
ただただ無言の空間が広がる。
…あぁ、こんな時、気の利いたこと1つも言えず、ただただフリーズするしかないなんて…。
どうしよう、何か言った方がいい。
でも何を言ったらいいのか…。


「…………」


私がどうしようかと悩んでいたら、目の前のリヴァイさんが目を伏せ、大きく、息を吐いた。
直後、


「必要書類を取りに来た。すぐ戻る。」


立ち上がり、書類が入っている引き出しに手をかけた。
………あ、れ?
今の、無かったことのように、なる、ん、ですか、ね…?
書類を探し、再びドアの前に立つリヴァイさんを黙って見つめていた。


「おい、フィーナ。」


ドアの前に立って、こちらに目を向けずに話しかけてきたリヴァイさん。


「は、はい?」
「お前、今日はここにいろ。」
「え?」
「今日はこの前のように飛び出しても探してやらん。」


リヴァイさんはそう言うだけ言って、パタン、と音を立て出ていった。
………………行っ、ちゃった、け、ど…。
今の行動の意味はわからないものの、とりあえず、ソファにハタキ(しかも使用済み)を持ったままいつまでも座っているのもな、と思い、立ち上がった。
………この前のは、飛び出した、ってわけじゃ、ないんだけど…。
でもまぁ…、とにかく今日は、この部屋にいればいい、って、ことなんだよ、ね。
と、1人結論付け、じゃあまぁついでだし、と、結局そのまま部屋の掃除をし続けて、リヴァイさんを待つことにした。

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bkm

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