Attack On Titan


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ラブソングをキミに


平穏の終わり 5


「巨人が『壁』に向かい北上してる!?」


私の報告を受けたエルヴィンさんがキース団長に報告、団長から全兵士に通達された。


「団長は『壁』に何かあったって言うんですか!?」
「その可能性がある、と言うことだ。…本日の予定を変更、全員で早急な壁内への帰還を目指す。」


突然のことに、信じられないと言う顔をする先輩兵士たち。


「お言葉を返すようですが、自分は納得出来ません!」
「おい、やめろって、」
「これは人類がさらに南下できる千載一遇のチャンスなんですよ!?…副団長やリヴァイのように、たかが一新兵を自分はまだ信用出来ません。」


それはとても、当たり前なこと、だと思う。
私も、客観的に私を見たとして、この進言を信用なんて、出来ない。
だけど…。


「そうか、奇遇だな。俺もお前をエルヴィンやフィーナほど信用出来ない。」


…少なくとも、リヴァイさんにとっては違ったようだ。


「リヴァイ、お前っ!」
「これは決定事項だ。…だよな?エルヴィン。」
「あぁ、そうだ。団長の言葉通り、我々は今から北上し壁内への帰還を目指す。全員帰還の準備に取り掛かれ。」


エルヴィンさんの言葉に、それぞれが準備に取り掛かる。
団長に異を唱えた先輩兵士も、苦々しい顔をしながら、この場を去って行った。


「…あの、」
「フィーナ。キミも帰還準備をしてくれ。」


私を見遣りそう言うエルヴィンさん。


「…でも、違うかも、しれません。」
「え?」
「…本当は、何も起こっていないのかも、しれません…。」


最初は水面に零れ落ちたほんの一滴の小さな水滴だったはずの違和感が、ここまで大事になるだなんて思いもしなかった。


「以前キミに言ったはずだ。『どんなに些細なことでも少しでも異変を感じたら都度報告してくれ』と。」
「…はい。」
「キミは任務を果たしたまでだ。それをどうするかは私と、そして団長が決める。」
「でも、」
「何もなければそれに越したことはない。だが、」
「…」
「『壁』に何かあったのならば最悪の事態を想定し行動に移さなければならない。ここから壁まで、昼夜問わず馬で駆けたとしても最短で4日はかかる。もし今、『最悪の事態』が壁に起こっているとしたら、今ここで前進するか後退するかで大きく変わる。それはわかるだろう?」
「…はい。」
「ならキミが気に病む必要はない。準備に入ってくれ。」


そう言ってエルヴィンさんも去っていった。
…最悪の事態…。
それは、壁門から巨人が壁内へと侵入した、と言うことだろう、か…。
それとも…。


「おい、フィーナ。」
「はい?」


エルヴィンさんが去った方を見ていたら、リヴァイさんに声をかけられた。


「エルヴィンが言った通りだ。決めたなら後は進む。俺たちに立ち止まってる暇なんかねぇんだよ。」
「…」


リヴァイさんの言うことはいつも正論だ。
確かに、決めたなら進むしかない。
「最悪の事態」を考えた場合、立ち止まってる暇なんて、本当にないのだから…。


「安心しろ。」
「え?」
「お前が自分を信用出来なくても、俺がお前を信用している。壁がどうのじゃなかったとしても、ここより北で何かが起きているのだけは間違いないだろう。それを確かめに行くだけだ。」
「…」
「わかったらさっさと準備しろ。」
「…はい。」


リヴァイさんもそこまで言うとこの場を去っていった。
取り残された私は、何かを言いたかったような、何も言う言葉がなかったような…。
おかしな感覚に陥りながら、帰還に向けての準備に取り掛かった。

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bkm

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