Attack On Titan


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ラブソングをキミに


平穏の終わり 4


「どういうことだ?わかるように話せ。」


ミケさんに言った言葉に返事をしたのは他ならぬリヴァイさんだった。


「…確証、とか、そういうことじゃないんで、」
「いいから話せ。」


言葉を詰まらせながら言う私に、リヴァイさんは先を促した。


「ここ最近、本当に巨人の数は、減ってると思うんです。」
「…」
「でも、」
「でも?」
「…上手く、言えないけど…、」
「なんだ?」
「…それは本当に、『討伐』したからなのか、疑問と言うか…、不安と言うか…。」
「…………」


この進言はつまり、先輩兵士はおろか、キース団長の采配にすら疑問を投げかける重大な問題なんだ、って、後になって気がついた。


「スプリンガー、だから最初に言われただろ?ここは元々巨人の出現率が低いところで、」
「この野営地から少し行ったところにここら辺の地形を一望出来るところがあったな。ハンジ、エルヴィンを呼んで来い。」
「了解!」
「おい、リヴァイ?お前まさか、」
「俺はお前なんかよりもずっとフィーナを信用している。ミケ、お前も着いて来い。」
「了解だ。」
「フィーナ、行くぞ。」
「は、はい!」


リヴァイさんは松明を1本持って、野営地を離れた。
向かった先は私たちが拠点としている場所から3分ほど歩いたところ。
そこに着くまでの間、私も、ミケさんも、そしてリヴァイさんも、一言も喋らなかった。


−俺はお前なんかよりもずっとフィーナを信用している−


「あの日」から、いつも首に巻いているリヴァイさんのスカーフは、今日も私の首筋を温めてくれていた。


「ここだ。」


リヴァイさんが連れてきてくれた場所は、周辺の地形が一望出来るらしい、視界の開けた場所だった。
目を閉じて、耳を澄ます。


「ミケ、お前はどうだ?」
「…何も感じないな。」


私の後ろで、ぼそぼそと囁くような声が聞こえた。


「リヴァイ!どういうことだ?」


私たちが到着して1分後ハンジさんに呼ばれたエルヴィンさんがやってきた。


「フィーナ、どうだ?」
「…ダメです。何も聞こえません。」


夜は巨人の活動が鈍る。
夜中でも寝ている巨人の寝返りを打つ音とか、たまに聞こえていたのに、今は本当に何も聞こえない、静かな夜だ。


「…フィーナ、キミは明朝もう1度ここで確認してくれ。」
「はい。」
「この事は私からキース団長に進言しよう。ハンジ、全兵士に通達しろ。明朝場合によっては作戦変更もあり得る。全員心しておくように。」
「了解!」


それは本当に静かな夜だった。
そして…。
本当の絶望を知る前の、最後の夜だった。


「おい、フィーナ!起きろ!」


昨夜、あの後テントに戻って横になった。
でも1度口にした波紋は、どんどんと広がり、なかなか眠るなど出来なかった。
ようやく意識が遠退いた、と思ったら、朝一でリヴァイさんの声がテントに響いた。


「んー…、もう朝なのかぁい…?」
「テメェも起きろ、クソメガネ。いつまで寝てる気だ?」


逆に聞きたい。
あなたはいつ寝てるんですか…?って。
そもそもここは女子用テントなのに何入ってきてるんですか、しかも土足で…。
なんて思いながらも、昨夜のことをしっかりと確認しなければ、と、まだ眠い体に鞭を打って昨夜行った場所へと向かった。


「…」


昨夜は暗くてよく見えなかったけど、ここは周辺を一望できる場所だ。
この世界は本当に、美しい。
そう思わせる場所だった。


「リヴァイ、来たか。」
「ミケ、どうだ?」
「…ダメだな。『何も感じない』」


私たちより先に着ていたミケさんの鼻では、巨人の臭いを感じることは、出来なかったようだ。
耳を澄ますと、ズシーン……と、昨夜は聞こえなかった巨人の足音が遠くで聞こえる。
だけどそれは…。


「リヴァイ、様子はどうだ?」
「シッ…、今確認中だ。」
「…リヴァイさん、」
「なんだ?」
「…嫌な予感がします…。」
「…」
「近辺の巨人が全て、あっちに向かって動いています…!」


私が指さしながら「あっち」と言ったのは、ミケさんの鼻では感じられない風上、私たちの家が、大きな大きな壁に囲まれ「安全だ」と信じられている場所がある方角だった。

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bkm

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