Attack On Titan


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ラブソングをキミに


焦燥 2


「調査兵団が来たぞーっ!!」


訓練兵団の宿舎に戻って数日後。
調査兵団が壁外へ遠征に行く日が来た。


「お姉さんは見に行かないんですか?」


訓練兵団の食堂にいた私に、通りに出ようとしたエレンが声をかけてきた。


「…うん、私は、ね。」
「そうですか…。」
「エレン、先頭が見えてきた。」
「あぁ、今行く!」


エレンを呼びに来たミカサの声に答えて、私に一礼した後、エレンは外へと駆けて行った。
それを見届けた後、通りに面している窓の前までやってくると、開け放たれた窓から少しだけ、肌寒く感じる風が建物の中に入ってきた。


「先頭にいるのがエルヴィン団長だろ?」


その声に通りの向こうに目をやると、エルヴィンさんを先頭に、兵団兵士が歩を進めていた。


「リヴァイ兵長だっ!」
「人類最強って話だよな?」


その少し後ろから、リヴァイさんがやってきた。
…相変わらずの、無表情で…。
でもあれは別に怒っているわけでもなければ、このギャラリーに緊張しているわけでもなく。
…言うなればきっと、外野煩ぇな、くらいな感じなんだと思う。


「リヴァイ兵長カッコ良い…!」
「思い切って私、調査兵団にしようかなぁ…。」
「あんた不純ー!」


外に出て、隊列を見ている訓練兵の女の子たちが、そう騒ぎ出していた。
……うん、リヴァイさんは、カッコいい。
そして強い。
誰よりも。
…だけど…。


「姉ちゃん、姉ちゃん!」
「どうしたの?コニー。」


隊列が宿舎前を通り過ぎた後で、コニーが大変、大変、と私の元にやってきた。


「ちっさいオッサン、有名人て知ってたっ!?」
「………だからあの人は、調査兵団で兵士長をしてて、」
「さっきここの前通った時の、あのオッサンの人気にマジでビビッたんだけどっ!!」


コニーが興奮気味に話しかけてくる。
かつて壁外への出発地点となっていたシガンシナや、兵団宿舎から壁外へ出るルート沿いに住んでいる子たちだったらいざ知らず、ラガコ村に住んでいたら、調査兵団の幹部の顔どころか、名前だって知ってるか怪しいもんなぁ…。
初めて有名人を生で見たかもしれない、って勢いで話してくるコニーに苦笑いが出た。


「そりゃあ、人気だと思うよ?」
「え?」
「だってあの人、『人類最強』って言われてる人だもん。」
「……………えっ!!!?」


効果音をつけるなら、「がびーん」みたいな音がぴったりなんじゃないか、って思う。
それくらい、コニーは衝撃を受けていた。


「あのちっさいオッサ、い、いや!あの小さいお兄さん、人類最強なのっ!?」


…コニーはここでようやく、事の重大さに気づいたようだった。


「うん。そう言われてる。…し、実際強いよ、物凄く。…当然だけど、調査兵団の中でNo1の強さだからね。」
「ま、まじかよ…!」
「うん、ほんと。」
「………姉ちゃん、」
「うん?」
「…俺、もう調査兵団の食堂に行かない方がよくね?」
「…そうかもしれないね…。」


うわぁぁぁ、と言いながら頭を抱え込んだコニー。


「姉ちゃん、」
「うん?」
「俺あの小さいお兄さんに謝った方がいい?」
「…そのことはもう、触れない方が1番だと思う。」
「ほんとに?」
「うん。」


「人類最強」って言う言葉は、やっぱり偉大なんだな、と…。
あれだけ不遜な態度を取っていたコニーが、急にしおらしくなった。


「で、でもさぁ!」
「うん?」
「そんな人に発掘されるって姉ちゃんすげぇよな!」
「…発掘、って…。」
「うん?」


私別に、地中に埋まっていたわけじゃ…。
なんて思っても、コニーはきっと気づいてないから黙っていた。


「エレン。」
「お姉さん!」


コニーと別れた後、エレンがたまたま近くに通りかかったから、声をかけた。


「やっぱりカッコいいですよね、調査兵団て!」
「…そう?」
「はい!俺の憧れですから!」


現役の調査兵団兵士に臆することなくそう言い切るエレン。


「…私、は、そんなにカッコいいものじゃ、ない、けど、」


なんだか、きらきら眩しい子だなぁ…。
そんなことない、って言うエレン。
…本当に、真っ直ぐな子だと思う。


「あの、」
「うん?」
「お姉さんは、リヴァイ兵長と仲が良いですか?」
「…え?」
「あ、べ、別に深い意味とかじゃなくてですね!…あの人本当に、俺から見てもカッコいい人だから、どうしたらそういう…『強い人間』になれるか、って、」


−リヴァイ兵長カッコ良い…!−
−思い切って私、調査兵団にしようかなぁ…−
−あんた不純ー!−


リヴァイさんはカッコいい。


「どうしたら強くなれるか…。」
「はい!何かヒントになりそうなこと知ってるかな、って。」


そして強い。
誰よりも。
だけど…。


「ヒントかどうかわからないけど、」


−キミが巨人の口の中に放り込まれた、と思った瞬間、自らその口の中に飛び込んだらしい−


「…自分以外の人間のために、躊躇いなく命を賭けれる人だよ、リヴァイ兵長は。」


「死なない保障」なんて、どこにも、ない。
もしかしたら、これが最後かもしれない。
もしかしたら、もう会えないのかもしれない。
………なのにどうして、私は「ここ」にいるんだろう…。
目をきらきらと輝かせて聞いてくる少年を前に、心の中で己の無力さを嘆いていた。

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bkm

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