Attack On Titan


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ラブソングをキミに


焦燥 1


「まぁ…、良くもなく、悪くもなく、ってところかな?」


訓練兵団の宿舎に戻る前に、診療室にいる先生に右足を診てもらったところ、取り立てて治りが早いわけでもなければ、遅いというわけでもないとのことだった。


「この分だと完治まであと2ヶ月、ってところかな?」
「…そう、です、か…。」
「遠征は次の新兵が入団してから一緒に、ってことになるかもね。」


先生は、診たままを伝えてくる。
だから決して先生が悪いわけじゃない。
…悪いわけじゃないんだけど、それってつまりあと半年は遠征に行けない、と言うことで…。
当分は、訓練兵団教官補佐と言う職務から抜けられないんだな、とため息が出た。


「姉ちゃん!」
「コニー。ただいま。」


少しだけ、重い足取りで宿舎に戻ると、コニーが出迎えてくれた。


「あ!コニー、さっきのパンですが、」
「はぁ!?お前まだ食うのかよっ!!」


私を出迎えてくれたコニーの後ろから、サシャがやってきた。
…ここに来て1ヶ月と少し。
気のせいかも、と、思いつつも、「姉」としてはやっぱりどこか気になるもので…。
ついつい、気にかけてしまっていたからやたら目につく、って言うのは確かにあるんだけど…。
コニーはよく、サシャといる。…ような気がする。
別にそれ=恋愛感情、ってわけじゃないだろうけど(何よりこの2人だとそんな風に微塵も見えないし)なんと言うか…、


「いやでも今日のコニーの格闘術は、」
「ちっげーよ!!アレはサシャに合わせてだなぁ、」


我が弟ながら、どこか羨ましい気すらしてくるから、切ない…。


「そうだ!今度立体機動のペアの訓練でさぁ、」
「えぇ!?コニーとペアですか?どうせならライナーとかが、」
「なにー!?」


この2人がそれぞれをどう思っているのかはわからないけど、それでも楽しそうだなぁ、とか。
コニーもぽんぽん物を言う子だけど、サシャもそりゃあもう言葉遣いは丁寧なんだけど、わりとはっきり言ってくる(と言うか容赦ない時もある)から、お互いが気にせずに言い合えて、いいんだろうなぁ、とか…。


−お前も…帰って来い。ここに−


いや、言い合えた、と言えば言い合えたんだろうけど(記憶あやふやだけど…)しかもそれに一瞬は納得したけど…。
隣の芝は青い、って言うか…うん。
リヴァイさんと私じゃ、絶対にこうはならない、から、なぁ…。
…まさかこんなことでコニーを羨ましく思えてくる日が来るなんて、思いもしなかった…。


「姉ちゃん、どうかした?」
「どうかしたんですか?」


2人を見ながら、我が身を省みていたら、コニーとサシャが私の顔を覗き込んできた。


「あ、う、ううん。そうだ、これ調査兵団の宿舎にあったから持ってきたんだけどサシャ食べる?」


戻ってくる前に、食堂で少しお腹を満たそうとしたら、意外とおかずがボリュームがあって、パンは後で食べようと、持ってきた。
それをサシャにあげたわけだけど、


「いいんですか、お姉さまっ…!!…美味しいっ!!」


大感激してくれた。


「でしょ?うちの食堂、ほんとに美味しくて、」
「あ、じゃあ今度お前も行くか?」
「行きたいですっ!!」
「…コニーは部外者だってわかってるよね?」
「え?なに行っちゃ駄目なの?」
「…そういうわけじゃ、ないけど…、念のための確認?」
「そんな小さいこと気にする人いねぇって!!」


あははー!なんて笑うコニーだけど、…いるよ1人、コニーが来たことに気づいたら蹴り飛ばしに着そうな人が…。


「お姉さまはなんで調査兵団に入ったんですか?」
「…なんでお姉さまなんですか?」
「こんなに美味しいパンをくれた人、呼び捨てなんてできないですしっ!!」


…この子、コニーが1番最初に「大食いバカ」って言ってたけど、わかる気がする…。


「私、は、」
「ちっさいオッサンに目つけられたんだって!」
「…コニー、だからあの人は兵士長をしていて、」
「コニーも成長してもそのままだったら十分ちっさいオッサンになれますよ!」
「大食いオバサンになりそうな奴に言われたかねぇよっ!!」
「…楽しそうだね、2人とも…。」
「何言ってんだよ!コイツ、バカだから話してても話進まねぇだろ!」
「失礼ですね、コニーよりバカじゃないですよ!」
「は?お前俺より頭良いつもりでいるの?」


あぁ、やっぱり仲良いんだな、と。
…私自身がこの歳の頃は、自分のことで精一杯で、こうやって誰かと誰かが仲が良い、なんて見回す余裕と言うものは、なかったから…。
私とリコちゃん、とは、ちょっと違うんだろうけど、コニーとサシャの仲に、やっぱりどこか、羨ましいような、そんな気分。
…この2人だったら、何をさせても大騒ぎになって楽しいんだろうなぁ…、とか。
サシャは確か、現段階でもコニーとそんなに成績が変わらなかったはずだ。
と、なると、2人とも上位10人に食い込む可能性だって十分にあり得る。
この2人が同じ兵団へ行くとなると、まぁ…、上官が大変かもしれないなぁ、って言う部分は否めないけど…。
それでもこの2人が一緒だったら、きっと兵団内も明るくなる…。


「姉ちゃん、ほんとにどうかしたのかよ?」
「…んー…、馬車に揺られたら疲れちゃったのかな?」


−帰って来い。ここに−


………でもリヴァイさん。
帰ったら、「また」誰かがいなくなってるかもしれない。
…それはもしかしたら、リヴァイさんかも、しれない。
その現場にすら、立ち会えない私は、やっぱり役立たずじゃ、ないですか…?


「あ!じ、じゃあお姉さま!これさっきクリスタがくれたお茶なんですが、」
「えっ!?お前が食い物くれんの!?明日雨じゃねっ!!?」
「違います。食べ物じゃなくて、飲み物をあげるんです。飲み物しかあげません。食べ物は狙わないでください。」
「…お前…。」


目の前で盛り上がる2人は、まるで遠征直前の兵団宿舎の食堂の光景のようで…。
晴れたはずの思いにまたモヤがかかったような、そんな気分。
どこか、チリチリとする胸を押さえられずにいた。

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bkm

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