Attack On Titan


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ラブソングをキミに


心の距離 8


「あ、あのっ、」
「あ?」


…既に怯みそうです…。
すぅ、っと深呼吸してテーブルのところにいるリヴァイさんを見上げた。


「なんだ?」
「も、もうじき、壁外遠征なん、ですよ、ね?」
「あぁ。…8日後だな。」
「そうなんです、ね。気をつけて、」
「あぁ。」
「…………」
「…………」


もう泣きたい…。
私この人と今までどういう会話してきたっけ?
1ヶ月ぶりに会う人たちって、みんなこんななの?
…いや、なんか1ヶ月ぶりとかじゃなく、元々こんなだったような気がする…。
あぁ、ずいぶん長い間同じ部屋で生活していた気がするのに、ちっともコミュニケーション取れてないじゃない。
どうしよう、どうしよう。
もう休憩も終わるし、何か話題を、話題、


「それで?」
「え?」


ソファを握り締め、私が必死に話題を探していたら、リヴァイさんがこちらを振り返り聞いてきた。


「さっきの質問、お前の答えはなんだ?」
「………………」


振り返ったリヴァイさんは、無表情に私に問いかける。
…「さっきの」と言うのはやっぱり、


−部下か?友人か?それとも…俺の女か?−


と、言うやつで…。


「ぶ、部下、」
「あ゛?」


私の発した言葉にリヴァイさんがいつになく低い声を出した。
…言いたいことはわかるんです。
でもすみません…、


「部下、でも、友人、でも、なんでもいい、です。」


恋人で、と自分から言えるほど、自分に自信なんて、ないんです。


「この部屋に、久しぶりに帰ってきて、私の荷物が部屋の隅に追いやられてて、その後でイルゼさんがこの部屋にいるのを見て、私、ほんとに、ここに私の場所、ないんじゃないかって、思ったから…、」
「…」
「部下、でも、友人でも、…リヴァイ、さん、の、傍にいれるなら、なんでもいいんです。」


人と上手く話せない自分に、自信なんてないんです。
でも…。
リヴァイさんのことは…。


「お前は昔から自分の言動に対する責任やその重みの自覚が無さ過ぎる。」
「え?」


ポツリ、とまるで独り言のように言ったリヴァイさんに目を向けると、眉間に深いシワを刻み、大きなため息を吐いていた。


「…あと15分、か。」


チラッと時計に目を向けたリヴァイさんにつられて私もそちらを見ると、休憩時間の終わりまで残り15分、と言うところだった。


「お前、午後には戻ると言ったな?」
「は、はい。」
「昨日といい今日といい、言い逃げ出来ると思うなよ?」
「え?…ち、ちょっ、」
「なんだ?」
「きゅ、休憩が、」
「10分で済ませりゃ問題ない。」
「問題ないって、んっ…」


………何がすごいって、ズボンのベルトに手をかけたところから、諸々を経て、再び元の位置にベルトを戻すまで、本当に10分で済ませたところだと思う。
私がどこか気だるい、火照った体をソファに横たえている間も、リヴァイさんは午後の準備をしていた。


「遠征、」
「あ?」
「…ちゃんと、帰ってきて、ください、ね。」
「あぁ。…お前も、」


リヴァイさんは一瞬チラリ、と私を見遣った後、ドアの前まで歩いた。


「はい?」
「…帰って来い。ここに。」
「…はい!」


私が答えると、パタン、とドアを閉め、出て行った。
…本当はリヴァイさんの言葉で、聞きたかった。
私はリヴァイさんのなんなのか、って。
だけど…。


−帰って来い。ここに−


「…私もそろそろ準備しないと。」


これで、いいのかな、って。
それがすごく、リヴァイさんらしくて…。


「フィーナ!」
「ハンジさん。」
「もう戻っちゃうんだって?」
「はい。ハンジさんも、遠征気をつけてくださいね。」
「ありがと!フィーナも居座らずに戻って来るんだよ?」
「…はい!」
「じゃあ、いってらっしゃい!」
「いってきます!」


ハンジさんに見送られながら、調査兵団宿舎を後にした。

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