Attack On Titan


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ラブソングをキミに


平穏の終わり 3


「ここら辺にいた巨人、討伐したおしたんじゃねぇか?」


そう言う先輩兵士。
…そう言われて、思い返してみたら、ここ2〜3日、日中の巨人遭遇率がそれまでと比べて減ってきた気がする。
「初めての遠征」で、討伐したおしたと言われたら、そんな気すらしていた。
だけど…。


「私たちの噂を聞いた巨人が、みんなで引越しちゃったのかもしれないよー!」


きっかけはハンジさんのその一言。


「巨人が引越しって…、そんな知能あるのかよ…。」
「そこはほら!生態調査をきちんとしてみないことには、」
「そもそも巨人が集団で引っ越したら音が煩くてフィーナが気づくだろうが!」
「…それもそうか。」


本当にそれは些細な一言。
冗談まじりに言った言葉に過ぎなかった。
でも…。
確かにここ数日、昼夜含む巨人の足音が激減した気がする。
それはいつから?
…わからない。
「気がついたら」減っていた。
先輩兵士が言ったように「討伐したおした」からな気もする。
だけど…、


−みんなで引越しちゃったのかもしれないよー!−


もし、違っていたら…?
巨人たちは、どこに行ったんだろう…?


−どんなに些細なことでもいい。少しでも異変を感じたら都度報告してくれ−


それは「異変」と言うほどのことでもない、本当に、まるで穏やかな水面に一滴零れ落ちた雫のような違和感。
…だけどその落ちた雫は水面に波紋となって広がっていった。


「うーん、やっぱり巨人が減ってるよね!」


その翌日、前日よりもさらに、巨人遭遇率が下がった。


「少しいいか?」


夜、拠点となる野営地テント前で夕飯を囲っていた時、キース団長が口を開いた。


「お前たちも気づいていると思うが、ここ数日の巨人遭遇率が減少してきている。…これは我々にとってはチャンスと捉えるべきだろう。明日からここよりもさらに南下し新たな拠点造りを模索する。」


キース団長は、ここの拠点からさらに南を目指すと宣言した。
先輩兵士たちの顔も嬉々としているように思う。
…でも。
本当に、それで大丈夫、なんだろう、か…?
昨日のハンジさんの言葉を聞いてから広がった波紋は、私の心に依然、波風を立てていた。


−どんなに些細なことでもいい。少しでも異変を感じたら都度報告してくれ−


けどそれは、口にして、「報告」としてあげるほど確証があるものじゃない。
それをいちいちエルヴィンさんに言っていては、エルヴィンさんが困るはずだ。
どうしようかと思っていた時、


−微かだが巨人の臭いがする−


以前、エルヴィンさんと話していたミケさんのことを思い出した。
…1度、ミケさんに確認してみよう。
もしかしたら、ミケさんも何か感じているかもしれない。
そう思い、夕食後一旦テントに戻っていた私は、再び先輩兵士たちがいる野営地中央の焚き火前に行った。


「あ、あの、」
「あぁ、フィーナ!コーヒー…は、ダメなんだよね?ホットミルク淹れたら飲むかい?」


そこでは先輩兵士たちが温かい飲み物を飲みながら談笑していた。
ハンジさんが私にもどうだ、と飲み物を進めてくれた。


「あ、い、いえ、ちょっと、お話が、」
「話?リヴァイにかい?」
「いえ、あの…、ミケさんに、」
「へっ!?」
「え?俺?」


私の言葉に、ハンジさんとミケさんは驚いたようだった。
…それはそうだと思う。
普段私からミケさんに話しかけるなんてこと、まずないから…。


「どうした?何の話だ?」
「あ、っと…、ここでは、ちょっと…。」
「…え?」


この「異変」とも言い切れない小さな「違和感」に対してミケさんの考えを教えてほしいなんて、こんな先輩兵士たちがいる前で切り出す勇気がない…。


「おい、フィーナ。」


そんな私に対して、


「ミケに何のようだ?」


リヴァイさんがいつになく低い声で聞いてきた。


「…用、っていう、か…、」
「くだらねぇことなら言うな。さっさと寝ろ。」


…今日のリヴァイさんはどうやら不機嫌のようだ。
でも今ここで「寝る」と言う選択肢をとると明日からはさらに南下してしまうわけだし…。


「ちょっとリヴァイ!…いいんだよ、フィーナ。その胸に秘めた熱い思いを全てミケにぶつけてきても…!」
「え?熱い思い?」
「黙れクソメガネ。おい、ここで言えねぇようなことなら出直せ、わかったな?」
「だからリヴァイ!どうしてあなたは、」
「…で?俺はここから離れた方がいいのか?」


不機嫌なリヴァイさんに上機嫌で絡むハンジさんを全く意に介さず聞いてくるミケさん。
に、目ざとく気づいたリヴァイさんがジーーッとこちらを見て(というか睨んで)いた。


「…大した用じゃ、ないんです、が、」
「うん?」
「上手く言えないけど…、ミケさんは、本当に巨人を討伐したおしたと『感じて』いるのかな、って…」


私のその言葉に、リヴァイさんの目つきが、変わった気がした。

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bkm

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