Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


心の距離 3


「僕たち3人は幼馴染で、」


弟のように可愛いエレン。
…の、ことで嫉妬心むき出しのミカサ。
そしてもう1人、あの日、シガンシナで会った子。


「アルミンが『あの日』大事そうに持っていた本は、なに?」


金髪が綺麗な、男の子。


「あれ、は…、」
「あ、言いたくないなら、」
「いえ、そういうわけじゃ、」


少し口ごもり、1つ息を吐いた後でアルミンが言った。


「『外』の世界について、書かれた本、です。」
「…外の世界?」


−壁外には炎の水や氷の大地、砂の雪原があるってほんと!?−


「もしかして、」
「はい。」
「…炎の水や、氷の大地について書かれて、た?」
「…そうです。」


子供の読む夢物語ってみんなに言われてたけど、と、アルミンは言った。


「フィーナさんも、まだ見てないんですよね?」
「…うん。」
「やっぱり、ないのかな…。」


アルミンがどこか、悲しそうに言った。


「アルミンは、」
「はい?」
「…やっぱり調査兵団を目指すの?」


その言葉に、一瞬躊躇いを見せたものの、どこか目つきが変わった気がした。


「フィーナさんは、もう兵士だったんですよね…。」
「え?」
「……ウォール・マリア奪還作戦の時には…。」


…そう、か、この子たち、シガンシナの子だから…。
人類の2割を投入して行われた口減らし…、マリア奪還作戦で犠牲となった人たちの中にこの子たちの家族も…。


「あの作戦の意味は理解できます。」
「…」
「『人類』のためには必要だったのかもしれない。だけど…、僕は絶対に許さない。」
「…」
「駐屯兵団や…まして憲兵団じゃ駄目なんです。…巨人を一匹残らず滅ぼすためには…!」


拳を握り締めて語るアルミンは、


−どう、か…、息子だけは、…だけは、守ってやって、くださ、−


あの日流れた多くの人の、意思を受け継いでいくんだろうか…。
…あの人は、最期の瞬間、確かに子供の名前を口にした。
だけど、今となってはもう…思い出せないなんて…。


「ごめん、ね…。」
「え?」
「…なんの力も、なくて…。」


−無力だ。お前も、…俺もな−


何もしてあげることが、出来なかった大勢の人たちの命。
…この子たちは、その人たちの命を背負って…。


「調査兵団が、生き残った人たちを壁内へ連れて帰ってくれた、って聞いてます。」
「…」
「…『だから』団長が交代したんだと…。」


政府にたてつくなど、あってはならないこと。
兵団兵士にその被害がいかないよう、責任を一身に受け、キース団長は退団したのだと言うことくらい、当時新兵だった私にでもわかることだった。


「エレンが言っていたんです。」
「うん?」
「力を持っている人間が、正しく力を使わなければいけない、って。」
「…」
「でも、エレンはちょっと…頑固って言うか、真っ直ぐ過ぎるところがあるでしょ?だから、『僕』が、正しく力を使うために必要な知識を得ることにしたんです。」
「…エレンの、ため?」
「どう、でしょう。エレンのためなのか、僕自身のためなのか…、わからないけど…。でもきっと、ミカサもそうだと思います。」
「え?」
「…『エレンは傍にいないと早死にする』って言ってるから、きっとミカサも調査兵団に行きます。」


困ったように笑うアルミンの綺麗な金髪が風に揺れていた。
…ミカサ、も、調査兵団に…。
各兵団が情報をほしがる逸材、ミカサ・アッカーマン。
彼女も、うちに…。


「ミカサ。」
「…」


ミカサは、すごく真面目だと思う。
訓練終了後も、遊ぶなんてことなく、黙々と自主トレをするような子。
…赤いマフラーで首を温めながら…。


「あなたも、調査兵団を志願するの?」
「違う。」


私の問いに、ミカサはトレーニングを止めて私を見てきた。


「『私』が志願するんじゃない。」
「…え?」
「『エレン』が調査兵団に行くなら『私』も行く。『エレン』が憲兵団へ行くなら『私』も行く。ただそれだけ。」
「…エレンのために、強くなるの?」
「そう。エレンは私が守る。だからエレンの行くところに行く。」


ミカサは無表情に言う。
何が悪い?とでも言うようなその顔には不釣合いなほど、強い意志が込められていた。


「でも、今のミカサじゃ、守れない、よ?」
「だから強くなる。」
「…ただ『強い』だけじゃ、巨人は倒せない。」
「…………」


私はコニーに兵士にはなってほしくなかった。
でも、本人が憲兵団を望むのであれば…調査兵団以外なのであれば、兵士と言う選択も、いいと思った。
だけどこの子たちは「うち」を望んでいる。
…だからこそ…。


「巨人を倒すためには、立体機動装置を扱わないといけない。」
「…」
「あなたのセンスは確かに、他の訓練兵よりはあるかもしれない。…だけどそれだけじゃエレンは守れない。」


−あの作戦の意味は理解できます。『人類』のためには必要だったのかもしれない。だけど…、僕は絶対に許さない−


守れなかった、この子たちの大切な人たちのためにも…。


「立体機動の扱い方、教えてあげる。」
「あなたが?」


私の言葉に、ミカサは明らかに不信そうな顔をした。


「こう見えても、立体機動の成績は3年間トップだったんだよ。」
「…」
「…私に立体機動の扱い方を教えてくれた人よりは、教え方、上手い、と、思う、し。」
「…」
「ミカサ。あなたに、…この世界で1番自由に飛べる人の技術を、教えてあげる。」


訓練兵への評価にあたり、特に目をかけてしまうのはやっぱり、コニーとこの子たち3人で。
エレンは、総合的な訓練が必要な子だと思う。
アルミンは、本人も言ったように、知識でエレンを支えていった方がいい。
参謀とか、そのタイプだと、思う。
…それならミカサは、その2人を守って余りある力をつける、つけれる子、だと、思う。
そしてこの日から、訓練終了後、他の子たちには内緒に、ミカサと2人立体機動の訓練をすることとなった。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -