Attack On Titan


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ラブソングをキミに


心の距離 1


「入れ。」
「はっ!失礼します!」


調査兵団宿舎としばしの別れを迎えた日、特に別れを惜しむなんてこともなく、いつものように私の行ってきます、の言葉に、あぁ、とだけ答えたリヴァイさん。
……………どんなに早くても2ヶ月間は帰ってこないって、あの人わかってないんじゃないかと思いつつも、2ヶ月私がいないとしてもリヴァイさんの生活になんら支障のないことなんだろうな、と言うところまで行き着いてしまい…。
お世辞にも「心機一転」と新天地に向かう心構えではなく訪れた訓練兵団施設兼宿舎。
まずは到着したことを、キース団長…今はキース教官に挨拶に伺った。


「調査兵団所属、フィーナ・スプリンガーです。」
「来たか、スプリンガー。」


キース教官は私を見て目を細めた。
教官は私に敬礼を解くようにジェスチャーした。


「しばらく見ない間に、一丁前な兵士面になったものだ。」
「恐れ入ります。」


その足じゃ大変だろうしまぁ座れ、と、教官の執務室のソファに座るよう促された。
失礼いたします、と一言添えてから座らせてもらった。


「エルヴィンから聞いてると思うが、今年は癖のある奴らが多くてな…。」
「…すみません…。」
「うん?」
「…弟も、104期なんです。」
「弟?……………そう言えば入団式で、」
「敬礼の右手と左手を間違えたのが私の弟です。」
「…あぁ、あいつもスプリンガーだったな、確かに…。」


キース教官は頭を抱えるように項垂れた。


「ご迷惑をおかけしているかと、」
「あぁ、いいんだ。素直な男は嫌いじゃない。ただ何と言うか…、」
「…難題に対する理解度が、」
「まぁ…、そうだな。」


教官と2人、深いため息を吐いた。


「スプリンガー、お前には全体訓練を通して訓練兵の評価をしてもらいたい。」
「…評価、です、か?」
「あぁ…。お前の時もそうだったが、各兵団幹部には訓練兵の情報は随時入るようになってる。そのための評価が必要なんだが、今年は何と言うか…、」
「癖がある…?」
「…言い方を変えれば、『見込みのある者』が多くてな…。」


…キース団長(まだ教官、と言うのが慣れない…)がここまで言う、と言うことは、かなりの逸材揃いだ、と言うことだろう。


「私の評価でいいんですか?」
「現役兵士のお前の評価だからこそ、いいんだ。」


具体的に何を見て評価するかは追って書面を渡す、と言われて退室した。
…訓練兵の評価、か…。
私なんかが他人を評価するとか、なんだか気が重い…。
まぁ…、なんとかしていくしかない、ん、だよなぁ、「仕事」で来てるわけだし。
とりあえず、来たからにはコニーを見つけて、


「あ、れ?」
「え?」


私がこれからのことに思い悩んでいた時、


「お姉、さん?です、よ、ね?コニーの、」
「…エレン!」


あの日の少年に出会った。


「あ、足、どうしたんです!?てゆうかえ!?なんでここに!?」


あわわ、となって話しかけて来てくれたエレンに自然と笑みが零れた。


「この怪我は…まぁ、壁外でちょっと、」
「…そう、なん、です、ね…。」


エレンは、何と言うか…、犬が耳を垂らしたような状態で、悪いこと聞いちゃったなぁ、と言う顔をした。
…この子、コニーみたいに表情豊かな子だな…。


「じゃあ、ここにいるのはなんでですか?」
「あ、うん。ここには『教官補佐』と言うか…、キース教官の手伝いとしてきたの。」
「それって、」
「うん?」
「その怪我のせいで、調査兵団にいれなくなった、ってことですか?」


劇的な再会を果たし、思わず抱きついてしまったけど、よくよく考えてみたらこの子とじっくり話す、なんて、これが始めてなわけで…。
…エレンて、わりとはっきり物を言う子なんだ…。


「いれなくなった、って、言うか…、そう、いう部分も、ないわけじゃ、ないんだけ、ど、」
「はい。」
「元々ここの教官、前代のうちの団長で、」
「…えっ!?」
「その人から、手を貸して欲しい、って現団長のところに手紙が来たから、」
「お姉さんが派遣された、ってことですか?」
「うん、まぁ…、そう、だね。」


そっかぁ、と顎に手をあてうんうん、と頷くエレン。
…エレンて、どことなく犬っぽいなぁ…。
キース教官はコニーのことを「素直な男」って言ってたけど、エレンもそのうちの1人じゃないかって思った。


「じゃあ、お姉さんはいつまでこっちにいるんですか?」


エレンはどうやら私のことを「お姉さん」と呼ぶようだった。
…コニー以外から「お姉さん」って、ちょっとくすぐったいような気がした。


「うーん…、はっきりと決まってるわけじゃないけど、とりあえず、足が治るまで、は、いる?」
「いつ頃治るんです?」
「早くて3ヶ月かかる、って言われてたから、少なくとも2ヶ月はいる、かな?」
「…結構重症じゃないですか。」


お姉さん本当に大丈夫なんですか?とエレンは聞いてくる。
…私に対する呼び方といい、なんだか弟がもう1人増えたような気分になってくる。


「姉ちゃん!?」
「コニー!」


なんて思っていたら、正真正銘、私の弟がやってきた。


「なになんで!?その足なに!!?てゆうか何してんだよっ!!エレンとこんなところでっ!!!!」
「…えっ!?俺っ!!?」


…お姉ちゃん子すぎない分、エレンの方が可愛げがあるかもしれない…。
なんて、ひっそりと思ってしまったことは口が裂けても言えない。


「エレンとは教官の執務室を出たところでたまたま会ったの。」


先ほどエレンに説明したこととほぼ同じ内容をコニーに説明した。
…ん、だけ、ど、


「だから早く調査兵団辞めてほしいんだって!!!」


…引っかかる場所がエレンとは違ったようだった…。


「足折っただけで済んで良かったけど、下手したら『足失くしてた』かもしれないんだぜ!?そうなってたらどーすんだよっ!!」
「…ごめん?」
「あーもうっ!!何やってんだよ、ほんとにっ!!!ちゃんと反省しろよっ!!!」
「…ごめんなさい…。」


…これ骨折だけじゃなく、顔に傷痕残るような怪我でした、って知ったら本当に調査兵団辞めさせる抗議をエルヴィンさんにしやしないだろうか…。
…この額の傷、コニーにだけはばれないようにしないと…、なんて思った。


「とにかく、」
「うん?」
「…これからしばらくの間、よろしくね。」


そう言った私に、頷くエレンと、どこか納得いってないような顔をしたコニーを見て、また少し、笑みが漏れた。

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bkm

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