Attack On Titan


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ラブソングをキミに


乖離 5


「うん、もう部屋に戻ってもいいですよ。」


壁内に帰還後、調査兵団の本部兼宿舎に併設されている診療室に運び込まれた私は、それから数日間をそこで過ごし、今日無事言うなれば退院、と言うことになった。
起き上がれるようになって驚いたのは、頭のてっぺんから足の先まで本当に全身が包帯ぐるぐる巻きにされていたことだった。
元々痛みはあったけど、視覚的に怪我の程度を改めて認識した。


「頭部の包帯はもう取っても大丈夫だと思うけど…、どうする?」
「…いえ、まだこのままで、」
「そうかい?…こっちの足のギブスは、」


先生から簡単に説明を受け、診療室を後にした。
…のは、いいけど、部屋まで遠い…。
いや、距離的には遠征前とこれっぽっちも変わっていないんだけど、松葉杖をつきながらって言うのと、ここしばらく寝たきりだった、って言うのが合わさって、物凄く遠く感じた…。


「…ふぅ…やっとついた…。」


なんとか松葉杖を付きつつ、自室の前までたどり着くことが出来た。
…結局、壁内へと帰還すると言われたあの日以降、リヴァイさんと会うことはなかった。
ハンジさんやナナバさんが診療室にお見舞いに来てくれたことはあっても、リヴァイさんが来ることは1度もなかった。
…だからなのか、ドキドキと、緊張してきているのが自分でもわかる。
大きく深呼吸してからドアを叩いた手も、どこか震えているような気さえした。


トントン


「入れ。」


ドア越しに聞こえたのは、どこか懐かしいような気もするリヴァイさんの声。


「お、久し、ぶり、です…。」


ガチャ、とドアを開けると、ソファに座ってこちらを見ているリヴァイさんがいた。


「お前は自室に戻るたびにノックをするのか?」
「…そう、いう、わけじゃ、ないです、けど…。」


明らかに、呆れた顔してため息を吐きながらそう言ったリヴァイさん。
…別にリヴァイさんも緊張してるなんて思ってたわけじゃないけど、なんかこう、もっとないんですか…?
久しぶりの再会が呆れ顔でため息って…。
なんかもっと、こう…、ありますよね?
…なんて思うのは、やっぱりどこか、私が夢見すぎだから、なんだろう、か…。


「いつまでそこに突っ立ってる気だ?入ってくればいいだろう。」
「…はい。」


…やっぱり、夢、見すぎなんだろうなぁ…。
コツ、コツ、と音をたてながら、久しぶりの自室へと入っていった。


「もういいのか?」


そう言えば、遠征の時持って行った私の所持品て、どうなってるんだろう…。


「まぁ…、自室で生活するくらいは、ってことですが、いい、は、いいです。」


やっぱりナナバさんのところ、なのか、な…?


「痛みは?」


後でナナバさんに聞きに行こう。


「痛み止めを、飲んでいるので。」
「効いているのか?」
「…効いてなかったら今頃まだ診療室です、っ!」


カタン、と、松葉杖が床に落ちる音が響いた。
チェストの前まで行き着替えを取ろうかと手を伸ばすより早く、リヴァイさんに後ろから、抱きしめられていた。


「リ、リヴァイ、さん、」
「なんだ?」
「あ、あのっ、私、しばらくお風呂入ってなくて、」
「構わん。」
「い、いやっ、たぶんかなり臭いと、」
「巨人の口の中より臭くない。」


…………それと比較してしまうんですか…?
臭くないって言われたけど、今ちょっと、傷つきました…。
やっぱり放してもらおうと息を吸い込んだ時、出窓の部分に、


−次飾ったら捨てるからな−


あの日、プレゼントに貰った靴箱が、ちょこん、と置かれているのが目に入った。


「…リヴァイさん、すみません。」
「あ?」
「靴、履けなく、なっちゃった…。」
「…」
「遠征から戻ってきたら、あの靴履いて出かけるの、楽しみにしてたのに…。」
「…」
「リヴァイさんが言う通り、『履かないから、履けなく』なっちゃいましたね。」
「治ったら、毎日履いてりゃいいじゃねぇか。」
「…そう、です、ね。治ったら、そう、します。」


私は全身打撲と裂傷を負い、今も至る所包帯がぐるぐる巻かれている。
その私をリヴァイさんはいつもよりもずっと弱い力で、それでも抱きしめられてると安心出来るような確かさで、抱きしめてくれていた。

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