Attack On Titan


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ラブソングをキミに


乖離 3


「これより壁外遠征に向かう。」


ピクシス司令の晩餐会で乾杯のお酒を口に含んだ直後から記憶がなかった。
目が覚めるといつものベッドで寝ていて、驚いて飛び起きたら頭がすごく痛かったのを覚えている。
飛び起きた私のせいでリヴァイさんも目を覚ましたようで、隣にいたリヴァイさんと目が合い、記憶がないことで何か迷惑をかけたんじゃないかと謝罪を口にした。
でもリヴァイさんは「出されたモノが口に合わなかっただけだろう」と言って再び目を閉じた。
その翌々日にリコちゃんにも会う機会があったから、謝り何故記憶がないのかわからないと言ったところ「出された物が口に合わなかっただけじゃないか?」と言われた。
…この2人、やっぱりどこか似てる気がする、なんて言ったら2人とも機嫌が悪くなりそうだから心に留めておくことにした。
そしてそれからさらに数日が経過し、いよいよ新しい配置での壁外遠征が始まる。


「フィーナ、よろしくな。」
「はい、ディータさん。よろしくお願いします。」


ディータさんはシガンシナ陥落前からいる先輩兵士で古株の熟練兵士だ。
経験値は私なんかでは足元にも及ばない。
だからエルヴィンさんはディータさんの班に振り分けたんじゃないかと思う。


「進めっ!!」


エルヴィンさんの号令で陣形が展開される。
私は初列二索敵に位置する、本当に「最前列」の場所だった。


「右前方、…2体はいると思います!」
「OK!煙弾を撃とう。巨人発見時の煙弾は赤だったな。」


「ディータさんの班」と言っても、索敵は基本2人1組で動く。
つまり、最前列には私とディータさんのみ。
私たちのやや後方に私たちを支援する残りの班員が索敵支援として待機している。
…前線に人数が少ない分、取りこぼしなんてしていられない。
今まで以上に、神経が磨り減っていくのはどうしようもないことだと思った。


「まずまず、じゃねぇか?」


馬の休憩のため、全体の歩を止め時、ディータさんが言ってきた。


「…だといいんですが。」
「いやいや、上出来だろ。」


トロストから出発すること数時間、私が見える範囲での取りこぼしはない、…はずだ。
だから上出来と言えば上出来なのかもしれない。
…けど、この神経を集中させ続ける、と言うことが移動中ずっと続くかと思うと…。
私にそこまで集中力を持続させることが出来るのか…。
そんな不安の中、ディータさんからかけられたその言葉で気が緩んだのかもしれない。
…それが、事態を悪化させることになったのだと後にして思う。
休憩が終わり、再び移動に入った時、


ドガァァ!!


「なに!?取りこぼしか!?フィーナ!赤い煙弾をっ!!!」
「は、はいっ!」


私とディータさんの索敵班と索敵支援班の間に突然巨人が現れた。
建物の影になっている場所で、まるで物音を立てずに潜んでいたかのように現れた巨人に、


「エルマーッ!!!」
「う、ぎゃあああああっ!!!」


索敵支援としていた兵士の1人が捕まった。


「班長っ!緑の煙弾が左翼側に向けて撃たれましたっ!!」
「…っ、おいリック!お前はフィーナと先に行けっ!」
「し、しかしっ、」
「陣形を崩すなっ!フィーナ!リックと前進しろっ!!」


その言葉と共に、巨人の手の中にいる兵士を救うべく巨人に向かっていったディータさん。
私たちは班長であるディータさんの指示に従い、前進するものの、


「…っ、」
「…嘘だろ…!」


1度動揺した心はすぐに落ち着かせることなんて出来なくて。
索敵支援班と切り離されたことで完全に孤立したまま、


「15メートル級…!!」


大型の域に入るであろう巨人と遭遇した。


「フィーナ!いけるな!?」
「はいっ!」


その言葉を合図にリックさんと連携して何とかその巨人を討伐した。
だけど…、


「お互い馬をやられたか…。」


全くの無傷で、と言うわけには、いかなかった。


「とりあえず紫の煙弾を撃つしかねぇよな…。」
「はい。」


その言葉と共に、リックさんが緊急事態を知らせる紫の煙弾を撃った。


「初列索敵で巨人に遭遇した時、左翼側に進む緑の煙弾があがったが、俺たちは陣形が本来進むべきルートから逸れたのかもしれねぇな…。」
「そう、です、ね…。」
「…さっきから至るところで赤い煙弾もあがってるし、もしかしたら陣形自体が崩れてきてるのかもしれねぇけど。」


陣形が崩れている、と言うことは、今撃った紫の煙弾を、誰も気づかない恐れもある、と言うことだ…。
そうなった場合、壁内まで歩いて帰る、と言うことになるんだろうか…。
さっきの15メートル級との戦闘でブレードも2本折れた。
この場所から歩いて帰るなんて到底…、そう思った時だ。


「どうした?」
「…2体、近づいてきます!」
「何!?」


近づいてくる足音がわかっても、隠れる物陰もなければ、走り去るための馬もいない。
…と、いうことは、


「囲まれますっ!!」
「…クソッ!おい!お前の分の紫の煙弾を撃てっ!」
「はいっ!」


今ここで、迎え撃つしかない、と言うこと。
パァン、と空高く撃ち上がった煙弾の音を合図に、2体の巨人が私たち目掛けて走り寄ってきた。


「…っ…」


これでも一応、訓練はしてきた。
巨人の討伐数こそ多くはないけど、少ないながらも経験はある。
そんな思いをあざ笑うかのように、


「危ねぇっ!!!!」
「きゃあああっ!!!!」


バシン!と私たちを取り囲む巨人のうちの1体が平手で私を地面に叩きつけた。
意識を失う直前、痛いとか痛くないとか、怖いとか怖くないとか、そういうことを考える前に、ひょい、と巨人に摘み上げられ、まるでキャンディか何かを口の中に含むかのようにポトン、とその大きな口の中に落とされた。

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