Attack On Titan


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ラブソングをキミに


乖離 1


エルヴィンさんから索敵班へ異動という命令が下された日の午後、再びエルヴィンさんに声をかけらえた。


「キミに招待状が来ている。」
「招待状、です、か…?」


はい、とエルヴィンさんから渡されたのは1通の封筒。
裏を見ると、蝋を垂らし封をしている封筒の刻印は、


「駐屯兵団、の…?」
「ピクシス司令からの招待状だ。」
「…えっ!?」


駐屯兵団のマークだった。
エルヴィンさんの言葉を聞いて慌てて封筒を開け、


「フィーナ・スプリンガー一等兵、貴殿を我が晩餐に招待したく…晩餐に招待!?」
「どうやらピクシス司令はキミに興味津々のようだよ。」


驚いた私に、エルヴィンさんがにっこり笑いながら言ってきた…。
…遠征前にピクシス司令に会うには会った。
しかもその時に、


−帰還したらそこの美女も交えて3人で飲もうや−


なんて言われたけど、あれ、冗談じゃなかったんだ…。
て、ことは、リコちゃんも誘われてる、の、かな?
しかもこれ日付見たら今夜だし…。
いつエルヴィンさんの元に届いたのかわからないけど、「駐屯兵団刻印」を押された封書で来た以上、つまりは「仕事」なわけで。
今夜だなんて…、言い逃れなど出来ないわけで…。


「ふ、服装、とか、は、」
「あぁ。ドレスで、と言いたいところだが、私を通して来たからには『仕事』の延長として、その姿のままで行ってくれるかい?」
「はい。」


今日言われて今日、なんてとてもじゃないけどドレスを用意できるわけがない私はそれを聞いて心底ホッとした。
まさか2人きりとかじゃないよな、と思い悩みながら、ピクシス司令主催の晩餐に向けて徐々に緊張していくのが自分でもわかった。




「エルヴィン、呼んだか?」
「あぁ、リヴァイ来たか。お前にも招待状だ。」
「は?」
「まぁ見てみろ。」
「…………………断る。つき返してくれ。」
「そう言うだろうと思って、司令は俺を通して招待状を送ってきたんだろうな。」
「あ?」
「…『エルヴィン・スミス団長、貴殿は私に借りがある。その借りを今返していただきたい』…内地で行われたパーティで、暴れたお前の後始末をし、予算ゼロでも不思議じゃなかったあの状態から昨年度よりも予算配分を大幅に増やしてもらえたのは間違いなく『借り』だろう。」
「…」
「行ってくれるな?リヴァイ。」
「…………チッ!」
「フィーナも招待されているから安心しろ。」
「は?なんでアイツが?」
「司令が『美女』と晩餐など、よく聞く話じゃないか。」
「あのジィサン、もうろくしたんじゃねぇか?どう考えても『美女』じゃねぇだろ。」
「他の男が褒めるのは気に入らないか?お前らしいな。」
「…」
「とにかく、だ。『借り』をきっちり返し礼を欠かないよう、頼む。」
「………了解だ。」




「リ、リヴァイさんも、行くんです、か…?」
「……………」


宿舎の自室で準備をしていたら、ものっっっすごく深いシワを眉間に刻んだリヴァイさんが入ってきて。
何事かと思ったら無言で私がエルヴィンさんから渡されたものと同じ封書を見せられた。


−あやつを引き抜きやすくなったわい−


あの日、ピクシス司令は、確かにそう言った。
でもまさか、そのための晩餐じゃ、ない、よ、ね…?


「おい。」
「は、はい?」
「早く支度しろ。メシ食ってさっさと帰ってくるぞ。」


明らかにイライラしてるリヴァイさん。
…「晩餐」なんて呼ばれてるものの招待に、「メシ食ってさっさと帰る」と言う選択肢が通用するなんて思えないんですけど…。
なんて思いながら、徐々に本数を増やしていってる気がするリヴァイさんの眉間のシワを心配しながら、「晩餐会」と指定された場所へと向かった。


「リコちゃん!」
「フィーナ!」


正直なところ、司令と1対1も辛いと思ったけど、私、リヴァイさん、司令の3人だけなんて本当に辛くてなんの罰かと思った。
だけど、現地についてみたらリコちゃんがいてくれて心の底からホッとした。


「おぉ、来たか。」
「…お招きいただき、ありがとうございます。」


普通こういうのは、上官が言う言葉だと思うんだけど、リヴァイさんは無言を決め込んだらしくさっきから一っ言も口を開かない。
…ので、私が敬礼しながら言ったら、リヴァイさんも本当にめんどくさそうに敬礼をした。


「結構、結構。今日は無礼講で行こうや。」


そう言って1人上機嫌に歩き始めるピクシス司令。
…の、後ろにものっすごく機嫌の悪いリヴァイさんと、


「…なんでアイツもいるんだよ。」


リヴァイさんを見て顔をしかめたリコちゃんを伴って、「晩餐」の席についた。
…もう、帰りたい…。
なんて決して口に出来ないわけで。
1つため息を吐いて、みんなの後に続いた。
…ここはピクシス司令御用達なお店のようで、所謂VIPルームに入れられたわけだけど…。


「いやいや、両手に花とはこのことじゃな!」
「…」
「…」
「…」


4人がけテーブルのピクシス司令の両脇は私とリコちゃんで、司令の向かいの席は明らかに機嫌が悪いリヴァイさんが座った。
…ち、沈黙が痛い…。
元々そんなに喋る方じゃない私に、リコちゃんもそんなにお喋りなわけじゃないし、…何より普段より機嫌が悪く拍車をかけて喋らないリヴァイさんと司令だと、本当に会話が…。


「おぉ、来た来た。…まぁとりあえず1杯飲もうや。」


テーブルにお酒の入ったグラスが配られる。
…あぁ、お酒が入れば少しは機嫌が変わるだろうか…。


「では…、我ら人類のため羽ばたく自由の翼に。」


グラスを持ちニッ、と笑って私たちを見たピクシス司令の言葉を合図に、各々グラスを傾けた。
ゴクリ、と一口、口に含むと、…なんだか不思議な味がした。
甘い?と、言えば甘いし、苦い?と言えば、苦い。
な、に、これ?
こんなおさけ、


「「フィーナ!!」」


グラリ、と世界が揺れた直後、リヴァイさんとリコちゃんの声を最後に、意識が途絶えた。




章タイトル
乖離(かいり):本来は密接に関係しているか、またはそう在るべき2つの存在・事象・概念・数値が、離れ離れになっていること、またはその状態

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