Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


新生調査兵団 8


「…おい、フィーナ。」
「はい?」
「靴は履くもんだろうが。」
「…そうです。」
「じゃあこれはなんだ?何飾ってやがる。」


リヴァイさんから思いがけない靴のプレゼントを貰ってから数日。
基本、私たち兵士は制服と言うものを着なければいけなく、その制服はブーツに至るまで決められている。
そんな兵士の私が、1日の職務を終え部屋に戻ると未だ箱の中に納まっている靴が目に入り…。
今度いつ出番が来るかわからない靴を、腐りはしないだろうけど気持ち的に腐るような気がして、なんとなく箱から出して、あのお店の店先に飾られていたように、飾ってみた。
…ら、帰ってきたリヴァイさんにツッコミを入れられた。


「だ、って、いつ履けるかわからない、じゃ、ない、です、か…。」
「あ?」


イラッとしたオーラを出し始めたリヴァイさんに語尾が小さくなった。


「今履けばいいじゃねぇか。」
「そ!…そう、いう、もったいない履き方は、ちょっと、」
「あ゛?」


今…、明らかに眉間にシワが増えた…。


「履かねぇ方がもったいねぇだろうが。」
「履かないわけじゃなくて、」
「履いてねぇだろ?」
「ち、違います!履いてないわけじゃなくて、…そ、そもそも、この靴に似合う服がない、し、」
「はぁ?服なんてなんでもいいだろ。」
「そ、そういう、わけには、いきません。」
「ならこの前のワンピースでも着てりゃいいじゃねか。」
「あれ、は、…私、に、似合わない、です、し、」
「あ?誰がそんなこと言った?」
「え?」


誰も言ってないです。
…言ってないですけど、言わずに去ったのあなたです、よ、ね…?


「…とにかく、いらねぇなら捨てるぞ。」
「ち、ちょっ、待ってくださいっ!!」


捨てるぞ、の言葉とほぼ同時に(もしかしたらそれより早く)ひょい、と靴を摘み上げて本当に捨てそうな勢いのリヴァイさんを慌てて止めに入った。


「そ、その靴は、なんて言うか、もっとこう…、」
「…」
「特別な時に履きたいんであって、履きたくないわけじゃなくて、」


どうにかリヴァイさんを思いとどまらせないと、と無い頭をフル回転させて、なんとか言葉を紡ぐけど、それに対してリヴァイさんは、


「…………………」


無言で物凄い威圧感を放っていた…。
…どうしよう、ほんとに捨てられてしまうかもしれない…。
やっぱり1回くらい履いておくべきだった?
でもこんな宿舎の中であの靴を履くなんて本当に勿体無くて…。


ガンガン


私が俯いてどうしようどうしようと悩んでいたら、床に何かが落ちる音が聞こえてきた。
音の方を見たらリヴァイさんが持っていた靴がゴロンと無造作に床に転がっていた。


「わ、私の靴…!」


それを見て咄嗟に拾おうと屈んだ。
瞬間、


「きゃっ!?」


ドン、とリヴァイさんに突き飛ばされて床に尻餅をついた。


「いったぁ…、っ!!?」


床に打ったお尻を擦ろうとした時、いきなりリヴァイさんが私の足首を掴んだかと思ったら、私が履いていたブーツに手をかけた。


「ち、ちょっ、」
「履かねぇから履けなくなんだろうが。」


自分の意志に関係なくスルリ、とブーツを脱がされた足は、どこかすーすーして、なんとなく、指先を縮めてしまった。


「そっちも出せ。」
「え!?い、いや、あの、」
「いいから出せ。」
「わっ!?」


左足のブーツを脱がせ、プレゼントされた靴を無理矢理履かされたと思ったら、今度は右足も同じようにブーツに手をかけられた。
リヴァイさんは器用に私のブーツを脱がせる。
こういう「誰かに靴を脱がせてもらったり、履かせてもらう」なんて、童話のお姫様が王子様に跪かれてとか、そういうイメージしかなかったんだけど、実際はなんて言うか…。
機嫌悪そうに眉間にシワを寄せた人が所謂ヤンキー座りをして私のブーツに手をかけているわけで…。
なんだかすっごくドキドキするシチュエーションなはずなのに、言い知れない思いに襲われていた。


「立ってみろ。」


私の両足を、真新しい靴に変えたリヴァイさんはそう言った。
一瞬躊躇ったものの、そのまま立ち上がってみる。
トントン、と、何度か靴で床を踏み鳴らし履き心地を確かめるようにした。


「…悪くない。」
「え?」


相変わらずヤンキー座りで私の足元を見ていたリヴァイさんがボソッと呟いたような気がして聞き返した。


「次飾ったら捨てるからな。」


リヴァイさんはそれに対しての返事と同時に、サッと立ち上がり部屋から出て行った。
…確かに、宿舎に戻った後、ブーツで動くよりは動きやすいんだけどでもやっぱり「勿体無い」って思っちゃうんだよな…。
けど飾ることはダメらしいから、ちょっと履くところ考えよう、なんて思いながら、ルームシューズに履き替えた。


「索敵班、です、か…?」


その翌日、エルヴィンさんが私に話がある、と言ったので、エルヴィンさんの執務室に行った時、次回の遠征計画を聞かされた。


「フィーナ、キミの『耳』がより役立つ場所へ異動してもらいたい。…我々調査兵団のためにも。」


それはもう、私の意見がどうではなく、決定事項のようで…。


「わかり、まし、た。」
「すまないね。…ディータの班に配属するつもりだから何かあったらアイツに言うと良い。」
「はい。」


まだ全体への決定事項としての発表ではないけど、私はこの日、新兵の時からいたエルヴィンさんの班を離れることを言い渡された。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -