Attack On Titan


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ラブソングをキミに


新生調査兵団 7


「やっぱり女の子だねー!」


2個目か3個目のお店を回っていた時、ゲルガーさんが「女の買い物にはつきあえない」と言い出した。
そうだよな、と思ってもっとみんなが楽しめる場所を、とナナバさんに言おうとした時「だから俺たちは今夜の酒を買いに行く」と集合場所を告げリヴァイさん、ミケさんを引き連れてどこかに消えてしまった…。
だから途中からナナバさんと2人、気兼ねなくウィンドウショッピングをしていた。
そんな私が反応するのはやっぱり「可愛い雑貨屋さん」とかだったりするわけで…。
それに気づいたナナバさんが、フフッと笑っていた。


「はい、フィーナ。」
「え?」
「遅くなったけど誕生日と、…今日邪魔してしまったお詫びに、ね。」


はい、と言ってナナバさんが出したのは、可愛くラッピングされた袋。


「そ、そんな、私、」
「いいのいいの。貰って。」
「…でも、」
「…そんな可愛い服着て、楽しみにしてたんだろ?せめてものお詫びだよ。」


ナナバさんは申し訳なさそうな顔をしていた。
じゃあ、と、そのラッピングを受け取り、中を見ると


「スノードーム!」


さっきのお店で並んでいた、可愛らしいスノードームだった。


「ありがとうございます!」
「どういたしまして。」


帰ったらどこに飾ろうか、なんて考えながら、目の前のナナバさんと談笑していた。




「あれ?なんでリヴァイがミケの酒買ってんだよ?」
「……………」
「少し貸しがあってな。」
「え!?俺には?」
「なんでテメェに買わなきゃなんねぇんだよ。」
「は!?そういうこと言う!?フィーナのあの服可愛くなかったか!?」
「あ?」
「『初めて内地に行くけど、どんな服着たらいいかわからないんですぅ』って言われたから、可愛い後輩のために俺が知り合いの仕立て屋で『誰もが振り返るくらい可愛い奴にしてくれ!』って頼んでやったんじゃねぇか!」
「……………」
「ありがたく思って俺に酒奢っても罰当たらねぇだろ!?」
「…ゲルガー、」
「お、奢る気になったか?」
「テメェやっぱり、俺たちが内地行くこと知ってたな?」
「…………おっと、そろそろ待ち合わせ時間じゃねぇか?先行くぞ。」
「……………チッ!クソが。」
「お前も大変だな。…最もこれからもっと大変になってくるだろうが。エルヴィンから聞いたか?次の遠征の計画を。」
「…あぁ。」
「確かにあの索敵陣形ではエルヴィンが出した案が1番妥当だろうな。」
「…」
「だが…、今のままじゃ『生還』出来る可能性は一気に落ちるぞ。」
「…」
「俺はリスクが高すぎると思うぜ?…フィーナを最前列索敵班に振り分けるのはな。お前はそうは思わないのか?」
「…決めるのはエルヴィンだ。」
「ま、そうなんだがな。」




「なに、やっぱり気になるの?あれ。」


ゲルガーさんが言い出した待ち合わせ場所は、お洒落な喫茶店で。
…その喫茶店の隣にある、さっきナナバさんに連れて行ってもらったお洋服屋さんの店先に飾られている靴に、私の目は釘付けになっていた。


「買ってくればいいじゃない。」
「…履く場所や、似合う服がないので。」
「その服によく似合うと思うよ?」
「…いいんです、本当に。」


確かにゲルガーさんがお友達の仕立て屋さんに頼んでお直ししてくれたこの服とあの靴は似合うだろう。
でも本当に、履く機会が、早々ないと思う。
…そりゃあ、リヴァイさんと出かける、なんて時にあの靴は可愛くていいと思う。
けど、今朝のあの馬車の中の状態を思い返すと、リヴァイさんと出かけるということ自体が世にも珍しい出来事に数えられるんじゃないか、って思うくらいだったから…。


「おぅ!待ったか?」
「遅い。ここはあんた持ちね。」
「は!?なんで!?」
「こんなにいい女2人も待たせたんだ、当然だろう?」


私とナナバさんが話していると、ゲルガーさんを先頭に、お酒を買いに行っていたリヴァイさん、ミケさんが喫茶店に入ってきた。


「リヴァイさんも買ってきたんですか?」
「あぁ。晩酌用にな。」


ミケさんもリヴァイさんも、お酒が入っているらしい袋をそれぞれ持って戻ってきた。
…リヴァイさんよくお酒の臭いさせて帰ってくるし、わりと「酒好き」な部類に入るのかも、しれない…、なんて思った。
まだ時間あるし、もう少しぷらぷらするか、と言うゲルガーさんの意見に、みんなで喫茶店を出ることにした。
お店を離れる直前、チラッと見た隣のお店の店先には、やっぱり可愛らしい靴が飾られていて。
…もし「兵士」とかじゃなかったら、普段からあぁいう靴、履いてるのかな、とか。
もし私もナナバさんみたいに内地出身だったら、あぁいう靴を履いて生活してたのかな、とか。
そんなこと思った。


「よし!じゃあ帰るか!」


すっかりリーダー的にこの場を仕切るゲルガーさんの下、ウォール・シーナを後にして、調査兵団宿舎に戻ることになった。
今度来る時は俺オススメの地下街スポットに連れてってやる、って言ったゲルガーさんに曖昧に笑って誤魔化した。


「あ…。」


壁門へと向かう帰り道、もう1度あの靴の置いてあるお店の前を通ったら、店先からあの靴が消えていた。
…あんなに可愛い靴だし、誰か買って行ったよな。
ナナバさんの言う通り、やっぱり買っておけば良かったかもしれない。
でも履く機会がないのは確かだし、なんて、初めてのウォール・シーナはちょっとだけ、後悔の残るものとなった。
…その2日後、


「フィーナ、荷物届いてる。」


宿舎に私宛の荷物が届いた。


「ラガコ村からですか?」
「んー…、いいや、内地からだね、この住所。」
「え…?」


私は表向き、リヴァイさんと同じ部屋にいるのは伏せられていて、新兵等にはナナバさんと同室とされている(ハンジさんでも良かったらしいけど、ハンジさんが分隊長と言う立場なためナナバさんの方が適任とされた)
だから私宛に届く荷物は基本、ナナバさんの部屋に届くことになっている。
そのナナバさんが私宛の荷物を持ってきてくれた。
…………「内地」からの荷物?
誰からなんて全く見当もつかない私は、とりあえずナナバさんにお礼を言って、テーブルの上にその荷物を置いた。
ラッピングされているその荷物を解くと…。


「灯もつけないで何してる?」


膝の上に届いた荷物を乗せソファに座っていると、いつの間にか日が落ち、暗くなった部屋にリヴァイさんが帰ってきた。


「これ、」
「あ?」
「…ウォール・シーナのお洋服屋さんから届きました。」


リヴァイさんがシュッ、とマッチを摺ってランプに火を灯すと、部屋がほんのりと優しい明るさに包まれた。


「先日内地に行った時に、いいなって思ってたけど、買わなかった靴です。」
「…………」
「帰る時にはもう店先に無かったから、誰かに買われたんだと思ってました。」


この靴の送り状には私の宛名はあっても、送り主の名は店名になっていて、誰が購入したのかは書かれていなかった。
でも箱の上にはお店の名前が捺印されている紙に、手書きのメッセージカードが添えられていた。
あの時、私がこの靴を見ていたって知っているのはナナバさんだけだ。
でもナナバさんからはもう「誕生日プレゼントと今日のお詫び」って、すでにプレゼントを貰っている。
何より「誕生日おめでとう」と言うたった一言の文字でも、誰が書いた字かなんて…。


「これ、大切にします。」
「…………あぁ。」


リヴァイさんはその一言しか言わなかった。
でも、それで十分だった。

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bkm

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