Attack On Titan


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ラブソングをキミに


新生調査兵団 6


無事休暇をもらえた私たちは念願のウォール・シーナへ向かう。
内地の人たちがどんな格好をしてるのかわからず、それとなくリヴァイさんに聞いたら「普通の服だ」となんのアドバイスにもならない答えが返って来た時は本当にどうしようかと思ったけど…。


「フィーナ!」
「ゲルガーさん。怪我、だいぶ良くなりましたね!」
「おぅ!お前のお陰、お前のお陰!」
「いえ、そんなこと、」
「なんか礼してぇんだけど、ほしいものとかあるか?」
「わ、私は別に、そう言うつもりじゃ、」
「いやいや、俺ほんっと助かったんだって!あんな顔で恋人に会いに行けねぇだろ?」
「それ、は、確かに…。」
「だろ?でもお前のお陰で早く会いに行けてさ!だからフィーナに何か礼を、ってな。何か俺に出来ることならしてやるぜ?」
「…じ、じゃあ、」
「おぅ!なんだなんだ。」
「教えてほしいことが、」
「うん?」


内地に詳しいらしいゲルガーさんに教えてもらって、無事着ていく服が決まった。


「準備出来たか?」
「はい!」
「…………」


ゲルガーさんは本当に親身になって聞いてくれて、そう言うことならと、仕立て屋をしてるお友達に元々私が持っていたワンピースを内地仕様(と言うか今年の流行仕様)に仕立て直しの依頼をしてくれた。
そのワンピースを着てリヴァイさんに返事をしたら、リヴァイさんが珍しく口を半開き状態で静止した(いつもは基本への字)


「あの…?」
「…準備出来たなら行くぞ。」



そう言ってリヴァイさんはスタスタ歩き始めた。
………何、今の…。
この服、何かおかしい、とかじゃない、よね?
ゲルガーさんイチオシデザイン、て言ってたし…。
わ、私、似合ってない、とか…?
………あり得る、それはすごくあり得る。
でももうリヴァイさん行っちゃって、着替える時間、無さそう、だし…。
別に、リヴァイさんが無口なところとか、もう慣れたけど…、こういう場面であぁ言う態度はちょっと、なぁ…。
似合ってないなら、似合ってないで言ってくれたら着替えるんだけど…、なんて言う私の思いが音になることは当然なく、リヴァイさんは調査兵団本部兼宿舎の近くを走る馬車を停めて乗り込んだ。
ここは「記憶の中の世界」で言うバスのような役割をしている馬車が通りを行き交っている。
ただバス停のようなものもなければ、時刻表なんてものもなく、今のリヴァイさんのように、近くを通りかかったら停めて乗せてもらう。
…大きな声じゃ言えないけど、このやり方に今だ慣れなくて、自分で馬を走らせた方が私にはずっと馴染みがあった。
だから馬車に乗ること自体、あまりなく…。


「き、今日は空いてますね…!」
「普通だろ。」
「……そう、です、よ、ね…。」
「…………」
「…………」


出鼻を挫かれたような気落ち後のあまり乗らない馬車に乗ると言う行為でテンションはおかしかったかもしれないと、は思うけど、それにしたってこの沈黙は…。


「あれ?フィーナ?…と、リヴァイも。」


ウォール・シーナの突出区、ストへス区壁門前で、ナナバさんと、


「よー!奇遇だな!」
「…」


ゲルガーさん、ミケさんと遭遇した。


「…なんでお前らがここにいる?」
「私はゲルガーが一緒に内地に行かないかって言うから、」
「…俺はゲルガーに内地に連れて行けって言われて、」
「お前は?」
「そりゃーたまには内地で休みを満喫したいから!」


あははー、と笑うゲルガーさんを凄い目でリヴァイさんが睨んでいた。
…私、内地に行くって言ったけど別にリヴァイさんと行くなんて言わなかったし、いつ行くかなんて言ってないから、偶然、だよ、ね…?
いや、偶然てことにしておきたいだけなんだけど…。


「どーせ同じとこ行くわけだし、一緒に行こうぜ!な?」


たとえ休暇とは言え、先輩兵士にあたる人にそう言われて断れるわけのない私と、ゲルガーさんのこの言動に無言で顔を引きつらせているナナバさん、ミケさん。
そして、


「………………」


あからさまに嫌そうに眉間にシワをいつもの2割り増しで刻んだリヴァイさんを無視して、


「んじゃー行こうぜ!」


ゲルガーさんは私とナナバさんの背中に手を沿え、機嫌よく歩きはじめた。
ちょっとした団体になってしまった私たちは(何故か)私、ゲルガーさん、ナナバさんと並んで歩き、チラッと後ろを振り返ると、フンフン、と何か小鼻を動かしているミケさんと、…その隣で絶対にあれは機嫌が底辺を走ってる、と言う眉間にいつもの2割り増しのシワを刻んだリヴァイさんが歩いていた。
…なんかもう、苦笑いしか出ない。


「それよりさ、フィーナたちは内地のどこに行く予定だったの?」


そんな私にゲルガーさん越しにナナバさんが聞いてきた。


「と、特に、決まって、ません。」
「「は?」」
「私、内地が初めてで…。どこに何があるとかまで知らないんで…。」
「…そうなの?じゃあ無計画で内地に行く予定だったんだ…。」
「ま、まぁ、そう、です、ね…。」
「お前、無計画にリヴァイと内地に行ったら行き着く先は地下街しかないぞ。」
「…地下街、です、か…?」
「さすがにそれはないだろうけど、当たらずと言えども、だろうね…」


ゲルガーさんもナナバさんもどこか呆れたような顔をしていた。


「じゃあ、ナナバに案内してもらうのはどうだ?」
「…ナナバさん、内地に詳しいんですか?」
「コイツこう見えて貴族のお嬢様だし!」
「えっ!!!?」
「違うって!…お嬢様じゃないけど、私は一応ウォール・シーナ内出身の人間だからね。頻繁に帰省してるし、それなりに詳しいと思うよ。」
「んじゃー、決まりだな!今日はナナバによるオススメスポット巡りだ!」


ゲルガーさんの提案は(かなり一方的に)可決され、私たちはそのまま一緒に行動をすることになった…らしい。
…あぁ、残念、なんて思う気持ちの反面、どこかホッとした自分もいるからおかしなものだ。
結局、リヴァイさんと一緒に出かけたいと言う思いはあるものの、いざ一緒に出かけたら何を話したらいいのか、どう行動すればいいのかわからず、馬車の中でのような無言の状態が続くんだろう、と思うとちょっと…。
リヴァイさんも私も話す方じゃないから、それは別に喧嘩してるわけでもなければ極普通な日常の一端なんだけど…、やっぱり私はどこか、欲張りになってしまったんだと思う。


「ウォール・シーナへようこそ!」


ナナバさんの声と共に、顔をあげると、


「…すご、い…。」


所謂「王侯貴族」が住む都が、目の前に広がっていた。
トロスト区もラガコ村から比べたらずっと「都会」なところだったけど、ここはぜんぜん違う。


「なん、か、」
「うん?」
「街全体が、キラキラしてます、ね。」


隅々まで手入れが行き届いていると言うか…。
どこかセピアが似合う、トロスト区とは違い、街全体が本当にカラフルに明るい気がした。


「そりゃあ、いつお偉方が来られてもいいように、手入れだけは、しっかりしてるからね。」


幾重にもある壁の中心地で、1番暗いんじゃないかと思われたその場所は、1番明るく、まるでそこから光を放っているかのような場所だった。


「じゃ、次はこっちねー!」


ナナバさんは内地出身、と言っただけあり、次から次へとお洒落で可愛いお店に連れて行ってくれた。
…正直、リヴァイさんと2人きりだったら絶対たどり着けなかったお店たちだと思う。
すごくありがたいと思う反面、やっぱりどこか…。
そんな思いを抱えて、内地観光を続けていた。

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bkm

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