Attack On Titan


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ラブソングをキミに


新生調査兵団 3


「自分の時はどうだったかなぁ…。」


ハンジさんの大怪我から数日経った今日、私の20回目の誕生日を迎えた。
私が「記憶の中の世界」で記憶していた誕生日と、「この世界」の私の誕生日が同じだと知ったのは、訓練兵になるために、ラガコ村で必要書類を両親に書いてもらってる時だった。


−えぇ、っと、訓練志願者の名前、は、フィーナ・スプリンガー、生年月日…フィーナ、生年月日いつだっけ?−
−…いつ、だっけ?−
−あ…−
−母ちゃん、ボケたんじゃねーの?姉ちゃんの生年月日はさ!−


「記憶喪失」と言うことになっている私に、あの時、コニーがすかさず助け舟を出してくれたのが、昨日のことのようだった。


「成人した時よりも10代から20代になるって方が、重かった気がする。」


誕生日だからと言って、特に何があったわけじゃない。
日頃よくしてくれている人たちは、朝会った時「おめでとう」と言ってくれた。
…もっともリヴァイさんを除く、だけど。
リヴァイさんは元々そういうこと言わなそうな人だし、何よりこの数日機嫌が悪いと言うか…、あまり近寄りたくない機嫌で生活してるみたいだし…。
そんなリヴァイさんは別として、1日の任務を終え、みんなで夕飯を食べている時、先輩兵士たちが「自分が20歳になった時の話」をはじめた。


「あー、わかる!なんか10から20にカウントがあがる、ってのがこう…、なぁ?」


先輩兵士たちが自分の過去を懐かしそうに思い返しながら話していた。


「フィーナは20代でやっておきたいこと、あるの?」


隣に座っていたナナバさんが、私に話しを振ってきた。


「…特には、」
「そりゃーお前、今1番美味い時に男作っとかなきゃなんねぇだろ!」


そう言ったのは、ゲルガーさんだった。


「なぁフィーナ!そろそろ男ほしいよな?」
「…いえ、別に…。」
「お前なぁ、そんなん言ってるとあっ!!!と言う間にナナバやハンジみてぇになっちまうぞ?」


私はだいたいいつもホットミルクだし、隣のナナバさんはコーヒーだけど、ゲルガーさんの手の中のアレは実はお酒なんじゃないかって常々思う。


「なんなら『帰ったら』男紹介してやるぜ?」
「い、いえ、そういうのは、」
「お前、どういう男が好きなんだよ?俺はいろいろ知り合いいるぞー!」


…間違いなく、ゲルガーさんの手の中のアレはお酒なんだろうな…。
だんだんヒートアップしてくるゲルガーさんの絡みにどう答えようかと思っていた時、


「ナナバさん、お風呂空きました。フィーナさんも行ってください。」


お風呂に呼ばれた。
壁外において、毎日お風呂に入れるわけじゃなく…(リヴァイさんは毎日入ってるって噂を聞いたけど)
物資などを詰めて馬車で運んできた桶のようなものに水を張り、交替で入る。
「記憶の中の世界」で見た、所謂五右衛門風呂のちょっと大きいサイズのような簡易のお風呂が設けられている。
そのお風呂の、今日は女子が使用できる日で、各テント単位で呼ばれるため、私とナナバさんが一緒に呼ばれた(ちなみにハンジさんは当然だけどテントで寝てる)
じゃあお風呂に、と足早にテントへと向かった。




「ゲルガー。」
「なんだ?ナナバ。」
「あんたのその性格嫌いじゃないが、今回ばかりは冗談の度が過ぎるんじゃない?ま、死なないだろうが頑張んな。」
「はぁ?何言ってんだ、アイツ。」
「おい、ゲルガー。」
「あ?なんだ、リヴァイ。」
「お前今、随分と興味深い話をしてたが、俺にもじっくり聞かせてくれるよな?」
「…え?」
「どういう男紹介するつもりなのか、もちろん教えてくれんだよな?」
「……えっ!?え、ちょ、リヴァイ待てっ!俺なりの冗談だろ!?なぁ!!」
「お前の話を聞いてやる。こっちに来い。」
「…………なぁ、エルド。」
「うん?どうした、グンタ。」
「…今の言い方からすると、兵長は男に興味があるのか?」
「(知らないって怖い…)どうだろうな…。と言うか、お前は本当に真面目で言葉通り受け止めるんだな…。」



「はぁ…。」
「どうした?エルヴィン。ため息なんて吐いて。」
「あぁ、ミケか。…いや何、いろいろ気苦労が耐えなくてな…。」
「お前、」
「うん?」
「それ以上悩むと禿るぞ。」
「……………」




「んー…!やっぱり毎日でもお風呂に入りたいね!」


正直なところ、ナナバさんが女の人だって知った時、実はかなりの衝撃を受けた。
だって誰がどう見てもとんでもなくイケメンなお兄さんにしか見えないし…。
でも宿舎なり、こういう壁外遠征なりで一緒にお風呂に入ったりして思うのは、すっごくスタイルの良いお姉さんだ、と言うことだ。


「いつも思うんですが、」
「うん?」
「胸、苦しくないですか?」


ナナバさんもハンジさんも、戦闘になった時邪魔、と言う理由で日頃制服の下に…所謂胸を潰すような、プロテクターをつけている。
故に、体型が男の人っぽく見えるだけだったって知ったのは、シガンシナ陥落直後くらいのことだった。


「出てるより苦しくないよ。」
「そういう、ものです、か?」
「…胸があると、ね。」
「はい?」
「視覚的に『女』だと自分で自分に甘えが出てしまう。その甘えが油断に繋がり、…壁外では取り返しのつかないことになるだろう?」
「…はい。」
「それに比べれば全く苦しくない。」


ふーっと、髪を掻き揚げるようなしぐさを見せたナナバさん。
それはもう、どこからどう見ても、女の人だった。


「フィーナもつける?」
「…私、は、つけるような胸がないです、し、」
「…あぁ、それに、あんなのして胸潰したらリヴァイが怒るか。」
「…なんでリヴァイさんが、」
「怒らないの?」
「べ、つに、関係ない、です、し、」
「そう?」


フフッ、とナナバさんが笑う。
たまに。
本当にたまにだけど。
シガンシナ陥落以前から調査兵団にいる先輩の女兵士と、こういう話になる時がある。
先輩兵士たちは、私とリヴァイさんをどういう風に捉えているのかわからない。
多分誰1人、私たちの現状を正確に把握してる人はいないと思う。
そんな中でこういう話題を振られるわけだけど…。
それが嫌、とかではないけど、どこかくすぐったいような感覚で、答えに詰まる。


「祝ってもらった?」
「…」
「…なんだ、祝ってもらってないの?」


少し驚いたような声をあげたナナバさん。


「祝う、祝わない、とか、以前に、」
「うん?」
「最近、機嫌が悪いようで、近寄りたくない、です…。」
「あぁ…。」


アイツのアレはいつものことだから、とナナバさんが笑う。
…でも本当は、少しだけ、思っていた。
もし、「今日」が壁外ではなく、あの宿舎のあの部屋にいれたのだったら、リヴァイさんは…。


「ふぅ…、そろそろあがるか!」
「ですね。」


ざばぁん、とお湯を少し零しながら、お風呂を後にした。

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bkm

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