Attack On Titan


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ラブソングをキミに


新生調査兵団 2


「ど、どうしたんですか…!?」


もうすぐ夕飯時、と言う頃、今日の任務を終え女子用テントで休んでいた私。
そこにモブリットさんに抱えられ連れて来れた全身包帯ぐるっぐるのハンジさん。


「あばらイッテるらしいけど、生きてるんで、」
「あばらイッテる、って、あばら骨折れてるんですかっ!?」
「いや、ヒビ入ったんじゃ?って話です。」
「ハンジさん、大丈夫ですか!?」
「痛い痛い痛い、」
「く、薬は?」
「…煩いようならタオルでも口に詰めて黙らせろ、ってことで、」
「黙らせろ、って、薬ないんですかっ!?」
「…伝言はしたので後はお願いします。」
「あ、ちょ、」
「痛い痛い痛い、」
「ハ、ハンジさんしっかり!」


モブリットさんはハンジさんを寝かせると早々に帰って行った。




「モブリット。」
「リヴァイ兵長。…ちゃんと伝えてきましたよ?『煩いようならタオルでも口に詰めて黙らせろ』って。」
「…」
「でもフィーナのあの感じだと、救護班に薬貰いに行くのは時間の問題だと思いますけど?」
「構わん。重要なのは1秒でも長くあのクソメガネに苦痛を味合わせることだ。あれに対してどう出るかはフィーナ次第だ。」
「(この兵団、まともな上官いねぇのかよ…)」




「お、ハンジ戻ってきたね!」
「ナナバさん!」


痛みに耐えるハンジさんを前に、どうしようどうしよう、と1人狼狽えてたらナナバさんがテントに戻ってきた。


「ナナバァー…。」
「諦めな、あんたの自業自得だろ?」


ナナバさんに手を差し出したハンジさん。
…を、あっさり見捨てるような発言をしたナナバさん。


「で、でも!」
「うん?」
「薬がないみたいで、ハンジさん本当に痛がってて、」
「…いやそれは、」
「フィーナー!お腹痛い、足が痛い!」
「さ、擦っても大丈夫なら擦りますよ?」
「うん!擦って擦って!」
「は、はい!」


恐る恐る、ハンジさんの体に手を伸ばした。
…ハンジさんは本当に全身包帯ぐるっぐる巻きで…。
巨人の生態調査、失敗した、ん、だろうか…?


「…ハンジ、あんた…。」
「フィーナ、お水か何かないかな?…一口でいいんだけど、」
「あ!私ので良ければ、」
「フィーナは本当、良い子だねぇ…!」


ハンジさんに、今日配当された分の私の水筒の水を分けてあげた。
モブリットさんが言ったようにあばらが痛いようで、痛がりながら軽く体を起こし、私の支えが必要だったけど、しっかり飲んでくれた。


「ナナバさん、どこに行くんですか?」
「ん?ちょっとトイレ。」


さっきテントに戻ってきたばかりのナナバさんは、そう言うと再びテントから出ていった。




「リヴァイ。」
「なんだ?ナナバ。」
「あれじゃフィーナが可哀想だ。」
「あ?」
「ハンジの奴『女子用テント』なのを良いことに、朝まで寝ずの看病させる気だよ。」
「…あんのクソメガネ…!」
「あんたの負けだ。薬出してやんな。」
「……おい、モブリット!」
「は、はい?」
「あのクソメガネが2度と目覚まさねぇよう薬飲ませて来い。」
「(なんで俺が…)」
「テメェの上官の尻拭いぐらいしねぇか!さっさと行け!」
「(もう嫌だ…)薬飲ませて来りゃいいんですよね?行ってきます。」
「…………なぁ、エルド。」
「グンタ、どうした?」
「なんだかんだで、リヴァイ兵長とハンジ分隊長って仲いいよな?」
「(…何も知らねぇって幸せなんだな)そうだな。」




「分隊長、薬持って来ましたよ。」


ナナバさんが出ていってしばらくすると、モブリットさんが薬を持ってやってきた。


「薬あったんですか?」
「ん?んー、まぁ、なぁ…。」


モブリットさんはなんだか曖昧に答えた。


「ほら、さっさと飲んでください。」
「モブリットは冷たいなぁ…。フィーナー、薬飲ま」
「そんなことばっかしてると、あんた明日こそ本当に死にますよ?」
「………これ何錠飲むんだっけ?」
「2錠です。」


モブリットさんに薬を手渡されたハンジさんは、自力で起き上がり薬を飲んでまた横になった。


「だ、大丈夫ですか?」
「ん、大丈夫、大丈夫。なんとかなる。」
「…そう、です、か。」


親指をグッと立てて、ハンジさんは静かになった。


「フィーナもメシにしよう。」
「あ、はい。」


静かになったハンジさんを見届けて、モブリットさんと2人テントを後にした。


「あ、あのっ、」
「ん?」
「…すみません、私っ、」
「え?…あぁ、いや『アレ』は別に、」
「さっき巨人の叫び声の中に人の声も聞こえたような気がしてたのに…!やっぱりちゃんと確認してればハンジさんこんなことにならなかったんじゃないかって…。」
「…うん、そこはほら、俺からどうこう言うことじゃないと思うから言わないけど、まぁあれだ。………………嫌なのに目つけられた、ってことで気にするな。」
「え?」


モブリットさんは最後を小声にして囁くように言った後、私から離れていった。




「…今の会話聞いて心が痛くねぇか?兵士長。」
「黙れ髭面。」
「でもフィーナもあのまま自分のせいだ、って考え込まなきゃいいけどね。明らかに誰かさんのとばっちりなのに。」
「……………」
「けどハンジは結局何したんだよ?」
「え?ディータ知らないの?あいつリヴァイに、」
「おい、ナナバ。テメェも同じ目に合いてぇのか?よく考えて喋ろ。」
「……………そろそろ夕飯だねぇ。今日の当番誰だっけ?」
「ちょっ、ナナバお前、そこで話切ったら気になるだろうが!」
「わざわざ壁外まで来て人間に殺されたくないからね。」




その日の夜テントの中でナナバさんが、ハンジさんが怪我したのは生態調査がどうのとかじゃなく、本当に自分の不注意によるものだから気にするな、と言ってくれた。
その言葉に、どこかホッとしたような気もするものの、でもやっぱり、と言う思いは拭いきれず、その日は眠りについた。

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