Attack On Titan


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ラブソングをキミに


新生調査兵団 1


エルヴィン団長の下、新生調査兵団の壁外調査が開始された。


「フィーナ、緑の煙弾を。」
「はい!」


今回の遠征から、予てより計画が進められていた長距離用索敵陣形が試験的に用いられた。


「負傷者7名、死者、行方不明者0名です!」
「…まずまずだな。」


エルヴィンさんの班員の私は、こういう報告をよく耳にする。
…エルヴィンさんの考えていることは、私なんかじゃ正直わからない。
でも、この陣形といい、この人は普段私なんかが「エルヴィンさん」なんて親しく呼べるような人じゃないんじゃないか、って思った。


「団長っ!!巨人の生け捕りに成功しましたっ!!!」


そして今回の最大の目的「巨人の生態調査」をするにあたり、その標的となる巨人を捕獲することに成功した。
当然、生態調査の最高責任者はハンジさんなんだけど、


「分隊長!例の巨人ですが、」
「カイン!」
「え?」
「あの子の名前は『カイン』!きちんと名前つけたんだから呼んであげなきゃ!巨人、なんて言ったら拗ねちゃうだろう?」
「…………どーでもいいですが、『その子』が暴れてるんで来てやってくれませんかね?」


既にモブリットさんの苦労がありありと伝わってきていた。
(主にハンジさんが)納得ゆくまで巨人の生態調査が行われる予定の今回、移動よりも生態調査での立地条件などから拠点となる場所が決まったのだけど…。


「ぎゃあああああああっ!!!」
「…っ…!!」


見通しがよく、巨人が攻めてきた場合早めに対応出来る場所、と言うことはそれだけ音もどこまでも広がるわけで…。
巨人の悲鳴は、人間の比ではなく、


「フィーナ、大丈夫かい?」
「…はい。」


昼夜問わず聞こえる巨人…カインの叫び声に、正直かなり、心が疲弊していた…。
それはたぶん、見る人が見たら一目瞭然なほどに。
だからなのか、


「そう言えば、もうすぐじゃなかったか?フィーナの誕生日。」


エルヴィンさんに言われて、リヴァイさんに渡す書類を持ってきた時、リヴァイさんの班のエルドさんが不意に、巨人(任務)とは全く関係ないことを口にした。


「よく知ってましたね…。」
「実は遠征に出る数日前にリコに会って言われた。」


今回の遠征は生態調査目的で、巨人を捕獲した今は生態調査班以外は、この拠点を交代で死守すると言う任務なためいつもの遠征よりはやや、穏やかに時が流れていた。
だからなのか壁外においても、エルドさんはにこやかに笑っていた。


「自分の代わりに20歳の誕生日を祝ってやってくれ、って。」
「…………………は?」


あぁ、リコちゃんてば、エルドさんにそんなこと言ったんだ、なんて思った時、なんと言うか…普段じゃあり得ないくらいの声をリヴァイさんがあげた。
それまで私とエルドさんの2人で話していたけど、その声を聞いて同時にリヴァイさんの方を向いた。


「……お前ら何の話しをしてる?」


…元々機嫌が良い時の方が珍しい人だけど、明らかに不機嫌な声を出し始めたリヴァイさんに、エルドさんと2人、顔を見合わせた。


「だから、フィーナの誕生日の話ですが…?」


エルドさんの声からも、このリヴァイさんの態度に対する動揺を垣間見た気がした。


「おい、フィーナ。」
「はい?」
「お前今何歳だ?今度何歳になる?」
「…今19で、あと3日で20歳ですが…。」
「…『うち』に入団した時何歳だった?」
「18です。」
「……お前が訓練兵になった歳は?」
「15、です、が…?」
「……………」


私の言葉に、リヴァイさんは、…言うなれば項垂れたような、そんな仕草を見せた。
………え?なに?


「フィーナ!団長が呼んでる!」


リヴァイさんに、何事かと聞こうと息を吸い込んだ瞬間、先輩兵士の1人が私を呼びに来た。


「あ、はい、今行きます!…じゃあ、失礼、します…?」


リヴァイさんは相変わらず…項垂れたような姿のまま、一言も言葉を発せず、エルドさんは行け、って、ジェスチャーをしながら、ちょっと困ったような笑顔をした。
その姿に少し、後ろ髪を引かれるような思いだったけど、「上官の呼び出し」は重要事項なため、足早にその場を後にした。




「…どうかされたんですか?」
「…」
「兵長?」
「エルドよ。」
「はい?」
「お前、知ってたのか?」
「え?…フィーナの歳ですか?俺は先日リコから、あ、フィーナの同期の駐屯兵団の兵士に聞きましたが…。」
「…」
「(この人恋人の歳知らなかったのか…)まぁ…、童顔なんで20歳には見えませんけどね。」
「………」
「あ、でもハンジ分隊長は知ってたみたいですよ?」
「…あ゛?」
「(ガラ悪…)先日リコに会った直後に分隊長に会ったんですが、その時にフィーナがもうすぐ誕生日だって話をしたら『記念すべき20代の扉を開けるんだから盛大に祝ってあげなきゃね!』って言ってましたから。」
「……………の、」
「え?どうし」
「あんの、クソメガネェッ!!!!!!」
「へ、兵長っ!?(この人でもこんな感情剥き出しにすることあるのか!)」
「おい、エルド!ここはお前に任せる。」
「え!?い、いや、兵長は、」
「いいか、俺はお前を信用する。一匹たりとも巨人を入れるな見逃すなわかったな?」
「は、あ…(その信用のされ方、嬉しくねぇ…。てゆうかそもそもいくつだと思ってたんだ…?)」



「おい、モブリット!」
「あ!リヴァイ兵長、聞いてくださいよ!ハンジ分隊長いっくら巨人にテンションあがってるからってあれじゃ巨人、に、殺され、」
「そのテンション壊れた変態クソメガネはどこだ?」
「…あっちです(何したのか知らねぇけど、今度こそ死んだな、あの人…)」



「ぎゃああああああ!!!」
「わかる!わかるよカインッ!!お前もツラいんだよねっ!?私も一緒に頑うおっ!?」
「…よぉ、やっと見つけたぜ変態クソメガネ。今ここで選ばせてやる。そこの間抜け面した木偶の坊に殺されるか俺に殺されるか選べ。」
「なんだよいきなり!私は今カインとどぅわっ!?」
「そうか、俺に殺されてぇんだな?俺のブレードじゃテメェの変態馬鹿を削ぎ落とせねぇのが残念だ。」
「ち、ちょっと、リヴァイ!私が何したって、」
「何した、だぁ?テメェこそこの5年、俺に何してきた?」
「え?5年?」
「よくもまぁ飽きもせず来る日も来る日も人のことロリコンだ犯罪だと罵ってくれたな、おい。」
「(バレた!?)な、なんのこぐあっ!?」
「テメェ俺に言ったよな?あたかも『女代表の意見』かのように『手出す方はそれでよくても、出された方は今後ずっと引きずる』だなんだとさも聖人君子ような口ぶりで!」
「で、でも実際問題そぶはっ!!?」
「こうも言ってたよな?『未成年との淫行なんてことになったらエルヴィンが上から何言われるか』だなんだと馬鹿デカい独り言をグダグダグダグダとっ!」
「い、いや一般論としてぐあっ!!」
「おい、どこの誰が未成年だ?テメェ知ってたんだろ?知ってたんだよな?」
「…や!でもそこは私も知らなうおっ!?」
「知らなかったとは言わせねぇぞ、おい。俺がどんな思いでこの2年」
「それなんだけど、リヴァイ意外と我慢強いよね!見直しちゃっぐはっ!!」
「テメェが2度と人語を喋れねぇようにしてやるっ!」
「ち、ちょっと待っぐおっ!?」

「モブリットさん!リヴァイ兵長を止めないとハンジ分隊長がっ!!」
「冷静に考えろ!今行っても無駄だ!」
「で、でも、あのままじゃハンジ分隊長がっ、」
「あの人には『懲りる』って言葉を覚えてもらういい機会だし、さすがにリヴァイ兵長も虫の息止まりで止めは刺さねぇだろ…。」
「見捨てるんですね…。」
「…鬼の形相した『人類最強』を誰が止められるんだよ…。」

「リ、リヴァイ、ちょっ、」
「まだ喋れんのかクソメガネ!」
「ぎゃあああああああ!!」
「カイン!お前は私の痛みをわかってくれるね!!?」
「安心しろ。テメェもその間抜け面も俺が責任持って殺してやる。」
「「ぎゃあああああああ!!」」




「あ…、れ?」
「フィーナ、どうした?」
「今、巨人の声に交じって人の悲鳴が聞こえた、よう、な…?」
「あぁ、またハンジがカインと一緒に叫んでるんじゃないか?」
「そう、です、か、ね…?」
「それより明日の配置だが、」
「はい。」


そしてこのしばらく後、ボロッボロになったハンジさんを見ることになった。

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