Attack On Titan


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ラブソングをキミに


あの日の少年 5


「〜♪〜」


明朝、私たち調査兵団は壁外へ向けて出発する。


「〜♪〜」


部屋の窓を開けると、心地よい夜風が入ってきた。


「〜♪〜」
「上機嫌だな。」


窓を開けると無数の星。
ただ「口ずさんで」いただけのつもりが、思わず熱が入って歌っていた。
…ところに、帰ってきたリヴァイさん。


「す、すみませんっ、煩いですよ、ね…。」
「構わん。」


リヴァイさんは息を吐きながら、ソファに腰下ろし、ブーツを脱ぎはじめた。


「今日、」
「あ?」
「…知り合いに、会いました。」


どうしてその話をリヴァイさんにしたのかは、わからない。


「シガンシナ陥落の時に、亡くなってしまったと思っていた子です。」
「生きてて良かったじゃねぇか。」
「はい!」


でも、この「小さな幸せ」を、聞いてほしかった。


「…『夢の中』でも助けることが出来なかったのに、」
「…」
「ちゃんと自分の力で、生きていてくれました。」
「そうか。」


他の誰でもなく、リヴァイさんに…。


「ただ『生きていてくれる』ってことが、こんなに嬉しいことなんだなんて、忘れそうになってた。」
「…」
「…まだ3年も経っていないなのに、平和になれてきてしまったんですね、きっと。」


多くの血が流れたはずなのに…。
それを目の当たりにしてきたはずなのに…。
だからこそ、今を生きていてくれる、ただそれだけで、嬉しいって言うことを、忘れてはいけないのに…。


「Sail on silver girl Sail on by」
−さあ、立ち上がって!前に向かって歩き出すんだ!−


「Your time has come to shine All your dreams are on their way
See how they shine」
−暗闇が去り輝く時が来た。キミの行く手にはいくつもの希望がある。…みんな輝いているだろう?−


「おい。」
「は、はい?」
「窓閉めろ。」
「あ、す、すみません…。」
「明日から壁外行くってのに風邪でも引かれたら迷惑だ。」
「…はい。気をつけます…。」


そう言いながら、お風呂に向かう支度をしているリヴァイさんを背に、パタン、と窓を閉めた。
リヴァイさんは、本当に綺麗好きだから、この部屋は窓ガラス越しでも、十分星が綺麗に見える。
…こんな小さな窓からじゃなく、またいつか、「あの星空」を見る日が来るんだろうか…。
そう、思った時、


「っ!」


トン、と、私の背中の方から体のすぐ横を通り、窓枠についた手が見えた。


「…昨日だろうが、3年前だろうが関係ねぇ。」


耳元で、リヴァイさんの声が響く。


「どんな状況でも、生き残らねぇことには、何も生まれねぇぞ。」
「…っ、」
「わかったらさっさと寝ろ。明日からまたしばらくベッドはお預けだ。」


そう言いながら、私の耳と、首筋にクチビルを落としてリヴァイさんは部屋から出て行った。
…リヴァイさんのこういう行動は、正直まだ慣れない。
どう、反応するべきなのか、わからない…。
それを考えないように、熱の残る耳を押さえて、眠りについた。

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bkm

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