Attack On Titan


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ラブソングをキミに


条件と期限 6


午後から訓練兵団の宿舎が開放されるようで、コニーはご飯を食べるだけ食べて訓練兵団宿舎に向かった。


「弟くん、もう行ったの?」


コニーを見送った後で、ばったり会ったエルドさんに言われた。


「はい。…ご迷惑おかけして、」
「ははっ!元気があっていいと思うよ?」
「…もうほんとに皆さんに申し訳なくて、」
「大丈夫、大丈夫。…ただ兵長の機嫌は、損ねたかもしれないけど、ね。」


エルドさんは苦笑いして言った。


「エルドさんは、」
「うん?」
「…気づいて、たんです、ね…。」


ハンジさんが以前、私とリヴァイさんが同じ部屋で暮らすこと、その仲であることの黙認は特例中の特例と言った。
「その仲」と言う部分は少し語弊があるし疑問に思うけど、でもその時私は純粋に、「これは公にしない方が良いことなんだ」と思った。
リヴァイさんとの実際の仲がどうであれ、漠然とこれは本来兵団内において秘密にしなければいけないことで、それに従っていた(リコちゃんを除く、だけど)
だから私自身何も話さなければ、ハンジさんはじめ先輩兵士が、そんなこと言いふらすわけないし、リヴァイさん自身も言うような人じゃない。
なら…、エルドさんは誰に言われたわけでもなく、1人で気づいた、と言うことだ。


「そうだね…。」
「…」
「確証はなかったけど、たぶんそうなんだろう、って。」


その言葉を聞いて、何をどう、とまでは考えが回らなかったけど、とにかくもっと気をつけないと、と自分自身に言い聞かせようとした時、


「どうしてかわかるかい?」


エルドさんが尋ねてきた。
その言葉にエルドさんを見上げると、穏やかに微笑んでいた。


「駐屯兵団は、調査兵団と憲兵団の関係ほどではないにしろ、いわゆる『余所者』だろ?なのに俺は、すぐに兵長の班に配属された。それがすごく意外でね…。」
「…はい。」
「だからたまたま2人きりになった時、聞いてみたんだよ。何故俺を兵長の班に入れたのか、って。」


エルドさんはそこまで言うと、スッと空を見上げた。
青く広がる、籠の中の空を…。


「『俺はまだお前を100%信用したわけじゃない』」
「え…?」
「『だがフィーナがお前は信用出来ると言った。アイツは人づきあいが下手だが見る目はある。そのフィーナが言うなら信用してみるだけの価値はあると踏んだだけだ』」
「…」
「『エルドよ、俺を失望させるな』…そう、言われた。」


エルドさんは困ったように、笑っていた。


−フィーナ−
−はい?−
−…お前、最近よく喋ってる奴がいるな?−
−え?…もしかして金髪の人ですか?−
−そうだ−
−あの人、駐屯兵団から来たんですけど、リコちゃんが言ってた通りすごく良い人で、−
−リコ…?あぁ、クソメガネその2か−
−クソメガネその2って…−
−ソイツがなんだって?−
−…エルドさん、リコちゃんと同じ班だったみたいで、リコちゃんからも良い人って言われるだけあって、すごく信用出来る人で…お兄ちゃんのような感じがして、ついいろんなこと話してしまって…−
−…そうか…−


…あれは、いつのことだっただろう。
でも、リヴァイさんの前でエルドさんの話をしたのは、その時1度だけだったはずだ…。


「『あの』リヴァイ兵長がそこまで信頼するフィーナって何者だろう、って、実は2人を観察していた。」
「…えっ!?」


エルドさんは、私に向きなおり、柔らかく微笑んだ。


「まぁ概ね、上官と一兵士と言う関係だったんだけどね。…ある時フッと気づいたんだ。」
「なに、に?」
「…全体訓練や会議で一同に会する時、兵長はいつもキミの姿を捜している。」
「…え?」
「状況把握をすることがとても早い人だからね。それはほんの一瞬なんだけど、…俺が間違っていなければあの人はまず、キミの位置を確認しているよ。」


エルドさんは優しく、柔らかく微笑んだ。
…リヴァイさんが、私の姿を捜している…?


「そ、んな、こと、」


ない、と、言い切れないのは、「ない」という現実よりも濃く、「あってほしい」という自分の願望が出てしまっているから。
…私、やっぱり…。


「でも決め手はさっきの食堂の出来事だけどね。」
「…」
「いくらなんでもイスの足を蹴り飛ばして折るなんてこと、普通はしない。」
「…」
「…どう考えても、まだ見ぬ『内地の男』たちに嫉妬したとしか、思えないから。」


そこまで言うと、エルドさんはポンポン、と私の頭に手を乗せ、去って行った。
…リヴァイさん、が、嫉妬?
その言葉がとても不思議で、どこか、擽ったかった。


「…た、ただいま、戻り、まし、た…。」
「…………」


その後、その日の雑務を終え部屋に戻るとすでにリヴァイさんがいて。
…私の言葉に返事がないくらいは、不機嫌さが継続中のようだった…。


「あ、のっ、」
「あ?」
「…す、み、ません、弟、が…。」
「……」
「まだ、子供なので、その…、コニーが言ってたことはなん、て、言う、か、」
「…………」


でもそこで、フッと気づく。
コニーは騒いではいたけど、別にリヴァイさんに直接的に迷惑をかけたわけじゃない。
だから騒いで煩くしたことには「すみません」だけど、それ以上は、…むしろ座ってたイスの足を折られたコニーが被害者なわけで…。
エルドさんは「嫉妬」と言ったけど、それが本当に「嫉妬」かどうか、なんて本人にしかわからないこと、だし…。
それに嫉妬されるほど、私たちに何かあるわけじゃない、し…。
なんて、ドアの前に立ったまま、俯き考えていたら、


「おい、フィーナ。」
「は、っ!?」


それまでソファに座っていたリヴァイさんが、いつの間にか私の目の前に来ていた。


「お前に確認しておきたいことがある。」


ドン、と、私の右肩のすぐ上の壁に片手をついたリヴァイさん。


「なん、です、か…?」


その目は真っ直ぐと私を見ていた。

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