Attack On Titan


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ラブソングをキミに


条件と期限 1


「おはようございます。」
「……ん……。」


リヴァイさんと、いつもの朝。
リヴァイさんはたぶん、朝に弱い。
辛うじて私の挨拶にたった一言で返し、しばらく身動ぎ1つせずにいると、


「……フゥ……。」


気だるそうに1つ、息を吐いてから起き上がる。
…この一連の流れを、リヴァイさん以外の誰かで想像出来ないのはたぶん…。


「パーティー、です、か?」


そんなある日の朝、リヴァイさんが今日は帰って来ないかもしれないと言ってきた。
まもなく、各兵団へ配分される新年度予算が発表される。
決めるのは内地、ウォール・シーナの貴族たち。
故、必然的に憲兵団への配当が1番多い。
…それは不条理なほどに。
そこから如何に調査兵団に分配させるか、と言うのも、エルヴィンさんの仕事の1つらしかった。
そしてそのエルヴィンさんが「行かないよりは良い」と、貴族たちへの所謂ご機嫌取りのため、招待されたパーティーに出席する。
…リヴァイさん道連れで。
もちろん1度は断ったリヴァイさんだけど、「人類最強」は、リヴァイさん風に言うなら「格好の見世物」のようで、エルヴィンさんの出席を知った貴族たちからリヴァイさんを連れて来るよう、言われたらしい。
普段なら、断るだろう。
でも、お金と言うのは大切なわけで。
あればあるだけ、武器や食料など物資の補強が出来る。
出来なかった場合、誰が困るかなんて、考えるまでもない。
背に腹は変えられないとでも言うかのように、リヴァイさんは承諾したらしかった。


「大変、です、ね…。」
「…………」


ここ最近、リヴァイさんの機嫌が日増しに斜めに傾いていった理由が、ようやく理解出来た。
そしてその日の午後、エルヴィンさんの班である私は、エルヴィンさんがパーティー出席の準備に向けて早々に班から離れて行ったのを見て、今ここにはいないリヴァイさんの眉間のシワが更に増しているんだろうと思った。


「…………」


リヴァイさんのいない夜は、とても長い。
あまり喋らない人だから、いても会話はないんだけど…。
それでも独りかどうかって、全然違う気がした。
…「記憶の中の世界」では、あれほど「独り」でいたのにも関わらず、今のこの気持ちはなんだか変な感じだ。
その思いに蓋をするかのように、早々に眠りについた。


「…………」


どのくらいそうしていたのかわからないけど、フッと意識が覚醒した時、


「…っ!?」


首筋にかかる息と、胸のあたりを触る手の感触に一気に目が覚めた。


「ち、ちょっ、」
「フィーナ。」


私の発した言葉に反応したのは、リヴァイさんだった。


「リ、リヴァイさん!何してっ、」
「動くんじゃねぇ…。」


私を後ろから抱き締め、首や肩にクチビルをつけるリヴァイさんの吐く息は、今までで1番、お酒臭かった。


「リヴァイさん!止めてくださいっ!」
「…」
「リヴァイさんは誰かと間違えてるんですっ!!」


私の言葉に、ピクリ、と胸のあたりにきいていた手が反応を示した。


「だ、れかと、間違えてるだと!?」


リヴァイさんはそれまで背を向けていた私の肩を、グィッ、と掴み自分の方に向きなおさせた。


「そ、そうです!」
「…」
「リヴァイさん、すごく酔ってるからっ、誰かと間違えてるんですっ!」
「…」
「だからっ、止めてくださいっ!」


薄暗い部屋の中でも、眉間にシワを寄せているのがわかるくらい、至近距離にいるリヴァイさん。


「……………」
「……………」


そのリヴァイさんに組み敷かれたまま、身動ぎ1つせずにいると、


「……やめた。」


リヴァイさんが短く呟いて、私から離れた。


「これだけ酔ってりゃ使い物になるかわかんねぇし、…何より興醒めだ。」


リヴァイさんはそう言って、顔を隠すかのように片腕を顔に乗せた。
だからリヴァイさんがこの時、どんな表情をしていたのか、私にはわからない。
何より、


「……っ………」


こんな時、何を、どう言えばいいのか、どう、行動すればいいのかわからない私は、さっきまでの突然の緊張の糸がプッツリと切れ、溢れてきた涙を隠すように、リヴァイさんに背を向け、声を殺しながら泣いていた。


「…ん…。」


翌朝目が覚めると、リヴァイさんはもう出掛けた後だった。
昨夜のことに、何を、どう思えばいいのかわからず、ただクチビルを噛んでいた。


「おはようございます。」
「あぁ、フィーナ。おはよう。」


朝、エルヴィンさんに会って挨拶をすると、エルヴィンさんは柔らかく笑いながら挨拶をしてくれた。
その隣にいたリヴァイさんは、


「…………」


私の方を向くわけでも、返事をするわけでもなく、ただ黙ってエルヴィンさんの隣にいた。
それはいつもと変わらない光景。
私とリヴァイさんと、誰かが一緒にいる時、リヴァイさんは率先して会話に加わらない。
だからこれは、いつものこと。
…だけど…。


「…」


痛む胸は、どうすることも出来なかった。
そしてその日の夜、


「お帰り、な、さい…。」
「…あぁ。」


リヴァイさんはまた少し、帰宅が遅かった。
帰ってきたリヴァイさんは、


「…っ!」
「…どうかしたか?」
「いえ…。なんでもありません。…おやすみなさい。」


少しのお酒の臭いと、女物の香水の臭いをさせていた。

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bkm

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