Attack On Titan


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ラブソングをキミに


変化した日常の定着 5


しばらくして目が覚めると、


「…」


カタカタと小さく音を立てて、リヴァイさんが掃除の準備をしていた。


「お、はよう、ござい、ます…。」
「あぁ…。」


コクリと頷きながらリヴァイさんは返事をした。
…いつも通りの朝だ。
いや…、「頷きながら返事」をした段階でいつもより機嫌が良いんじゃないかって思われる朝だ…(機嫌が悪いと頷くだけや、頷きすら返って来ない時もある)


「シ、シーツ!」
「あ?」
「洗います、よね?」


昨夜、リヴァイさんは私に言いつけるほど嫌っていた「制服のままベッドに入る」と言う行為をした。
そもそもその行為を嫌う理由は、綺麗な布団で寝たいからなわけで。
じゃあやっぱり、制服のまま寝てしまったシーツは洗うよな、と。
そう思って聞くと、


「当然だ。」


お前何言ってる?くらいの口調でリヴァイさんが答えた。


「じゃあ、洗います、ね。」
「フィーナ。」
「はい?」
「上もだ。」
「………え?」
「だからシーツだけじゃなく、掛け布団も洗えと言ってんだろ?」


…リヴァイさんは、綺麗好きを通り越して、潔癖症なんだと思う。
でも今回、この布団洗濯は元を正すと私が原因なわけで…。


「じゃあこっちも持って行きますね。」
「そのまま外に干せ。この天気なら、直乾く。」


反論することなく、布団とシーツを持って洗濯場に向かった。
私の「記憶の中の世界」は洗濯機と言うものがあったけど、電気自体のないここには、


「腰、痛ぁ…。」


全て手洗いしなければいけない。
いや、クリーニング店と思われるお店はあるものの時間がかかる上値段が高く私は滅多に利用しない。
シーツと掛け布団の手洗い…。
今日が休暇で本当に良かった…。
なんとか洗い終わって、絞り込み、気持ちの良い空の下干すことが出来た頃には、体がくたくただった。
普段使わない筋肉をフルで使った気がする…。
部屋に戻ると、今日の気持ち良い日差しが部屋に差し込んでいて、そのままソファでうとうととしていた。
あぁ…、あと30分くらいしたら裏表ひっくり返して…。
なんて考えていた時、


トントン


ノック音が聞こえた。
…私いつの間にか寝てたんだな。
誰か来たから起きなきゃ…、なんて思っても洗濯の疲労は取れずになかなか目が開かない。
そんな時、


「入れ。」


リヴァイさんの声が聞こえた。
…あれ?
リヴァイさんいつの間に帰ってきたんだろ…。


「失礼しま、っ、もっ!申し訳ありません!お取り込み中だったとはっ!!」
「構わん。用はなんだ?」


なんだか訪問者の酷く取り乱した声が聞こえた。


「はっ!先日政府に報告をあげた書類に関して、質疑文書が来ましたので団長から兵長にもお見せするようにと、」
「貸せ。」
「はっ!」
「…おい。」
「は!」
「………」
「も、もちろんであります!自分は何も見ていません!!」
「ならいい。行け。」
「は!では、失礼いたします!!」


その一拍後パタン、と扉が閉まる音が聞こえた。
なんだか随分畏まった人だったけど…。
リヴァイさんは「兵士長」って言う役職なわけで、いろんな報告、いろんな人がリヴァイさんのところにくる。
また難しい顔してるんだろうな、きっと…。
目を瞑っていても書類を睨み付けてるリヴァイさんがありありと想像出来た。


「おい。」


容易に想像出来る「難しい顔したリヴァイさん」に少し口角が上がった気がした。


「何笑ってやがる?」


そんな私に向けたかのような言葉が真上から降ってきた。
…………………「真上」?
そのことにハッとして目を開けると、


「…………」


私を見下ろしているリヴァイさんと目があった。
…………えっ!?


「っ!?」
「いっ!?」


ガバッ!と思わず飛び起きた瞬間、リヴァイさんの顎と私のおでこが激突した…。


「………テメェ、何しやがる。」
「す、すみませっ、」
「チッ!」


おでこを押さえながらリヴァイさんの方を振り替えると、顎を擦りながら私を睨んでいた…。
リヴァイさんは舌打ちした後、さっき渡されたであろう書類に目を通し始めた。
…少し、状況を整理させてもらってもいいだろうか…?
私は確かソファに座って、たぶん、寝ていた。
今もソファにいるんだからそれは間違いない。
ただ私がうとうととしはじめた時と違うのは、隣にリヴァイさんがいる、ってこと。
いつからどうしているのかわからないけど、リヴァイさんは優雅にソファに腰掛け書類に目を通している。
…そのリヴァイさんをさっき私は「見上げた」わけで、しかもその後「起き上がった」ことで私のおでことリヴァイさんの顎がぶつかったわけで…。


「おい、フィーナ。」
「は、はい!」
「起きたならシーツ入れてこい。」
「あ、でもまだ裏表ひっくり返してないので、」
「あ?」


それまで書類に目を落としていたリヴァイさんは、呆れたような顔で私を見てきた。


「今何時だと思ってんだ?」
「え?」
「1回裏返しにしてある。取り込んでこい。」


そう言われて窓の外を見ると、誰がどう見ても、夕方で…。


「す、すみませんっ、私すぐ取り込んで来ます!!」


リヴァイさんの返事を待たず、バタバタと外に飛び出した。
………私はさっき、リヴァイさんを「見上げた」わけで、しかもその後「起き上がった」ことで私のおでことリヴァイさんの顎がぶつかったわけで。
それはつまり、リヴァイさんの膝を枕替わりにして寝ていた、ということで…。
………け、今朝、の、アレと言い、リヴァイさん、まだ酔ってる…?
いや、でも普通に部屋の掃除をしてたし…。
なんで?どうして?って思いが渦巻く中、日が堕ちようとしているウォール・ローゼの壁を眺めた。

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bkm

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