Attack On Titan


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ラブソングをキミに


反撃の狼煙 3


「エレンの硬質化実験、です、か?」


表向きエルヴィンさんの世話役としての任務についた私。
そこで今後の兵団の方針について聞いた。


「…君は何も聞いていないのかい?」
「私はアニを拘束した直後、ローゼ内にいるミケさんの分隊と合流すべくストヘスを出たので…。」
「あぁ…、その後ウトガルドでのことがあったんだったな…。」


エルヴィンさんは左手で顎を摩りながら頷いた。
…ミケさんのジャケットの切れ端を拾ったこと、誰に言ったわけでもないけど、みんながもう、「ミケさんは、そういうことだ」と思っているようだった。


「ニック司祭については聞いたかい?」
「それも椅子職人だと聞いていたんですが、ウォール教の司祭だったんですよね…?」
「………」


私の言葉に、ふぅ、と、エルヴィンさんは大きなため息を吐いた。


「…あの?」
「あぁ、すまん。いや何、…今更こんなことを言っても困るだろうが、リヴァイは本当に君を前線から外していたのかと思ってな…。」


エルヴィンさんは苦笑いしながらそう言った。


「現段階で、ウォール教は『壁の秘密』を知る組織と言うことが判明している。」
「はい。」
「だが、壁の秘密はウォール教の一存では公表できず、決定権はシーナ内の一貴族にある。」
「…それがクリスタ・レンズ…、本名ヒストリア・レイスの、」
「あぁ。王家ではなく、地方の一貴族に過ぎないレイス家の者が壁の秘密を知ることができ、そして人類に公表する権利があるそうだ。」


104期のクリスタ・レンズは、シーナ内にいる貴族の1つ、レイス家の領主のご落胤、と言うことだそうだ。
そのクリスタの、いや、ヒストリアの血筋が…、人類最高権力者である王家ではなくレイス家が、壁の秘密を知り公表しる権利を有している…。
なぜ、レイス家なのか。
なぜ、王家ではないのか。
そしてなぜ、王直属の兵士…中央第一憲兵が、ニック司祭を拷問の末殺し、エレンを狙っているのか…。


「全ては王都に行ってから、です、か?」
「あぁ。」


エルヴィンさんは、容態が安定し、自力で動けるようになったので、政府から王都招集がかかった。
そこで、探りを入れるようだった。


「同行しましょうか?」
「いや…。君はここに残っていてくれ。」
「大丈夫ですか?」
「……仮に、」
「はい?」
「仮に今日の話し合いで、今私が思い描いている最悪のケースになった場合、『我々』は人類最高権力に宣戦布告するつもりだ。」


エルヴィンさんの言うこの「我々」と言うのは、私たち、調査兵団のことだ。
そして「人類最高権力」は、つまり王家と、王政を、指すのだろう…。


「…そうなった場合、1人でも多くの『顔の割れていない兵士』が必要になってくる…?」
「そういうことだ。」


エルヴィンさんの顔は、既に「団長」の顔、そのもの。


「わかりました。」
「話が早くて助かる。」


じゃあここは任せた。
そう言って、エルヴィンさんは1人、王都へ向かった。
………エルヴィンさんはさっき、人類最高権力に宣戦布告する、と言った。
つまりそれは、壁内での内紛を、意味する…。


「………」


人同士で争うなんて…。
少し前までは、そう、思ったかもしれない。
だけど…。
ハンジさんの検証の結果、今回ローゼ内に現れた巨人が、ラガコ村の住人である信憑性が増した。
と言うことは、極論からすれば、壁外にいる巨人=人間、と言うことも、可能なわけで…。
私たちは既に、人殺し集団、と言う、ことになる…。
その姿がただ、大きいか、小さいかの、違い。
言語を介してコミュニケーションが取れるか取れないかの、違いなだけなんじゃ、ないだろうか…。
そこが大きな違いだ、と、言われればそれまでだけど…。
あの日の巨人化のきっかけは、獣の巨人が何かしらしたからだ、と言うことをユミルが教えてくれたらしい。
だからあの巨人がいない今、壁内に巨人が現れることは、ない。と、思う。
…もし本当の本当にラガコ村の人々が獣の巨人の手により巨人化したとしても、あの日、私が討伐した巨人の中に、ママはいなかったはずだ。
ラガコ村で今も拘束されている巨人が私とコニー、そして第三者のハンジさんからみても「そうだろう」と言われているあの巨人が、恐らく本当に、私たちのママなんだろう…。
けど…。
パパは、あの場にいたのかも、しれない。
ナナバさんたちを目の前で殺した巨人は、パパだったかもしれない。
そして、そのパパを、私は殺してしまったのかも、しれない。
例え誰が「違う」と言っても、その思いだけは、いつまでも拭い去ることは、出来ずにいた。

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bkm

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