Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


反撃の狼煙 2


トントン


「入れ。」
「失礼します。」
「…フィーナ!」


ギィと音を立てて開けたドアの先には、右腕を失くしたエルヴィンさんが立っていた。


「君はまた随分と派手にやられたんだな…。」
「…お互い様だと思いますが…。」


私の顔を見ながら言うエルヴィンさんに、そう答えると、確かに、と苦笑いされた。


「右腕は、残念でしたね。」
「………」


私の言葉に、一瞬エルヴィンさんはおかしな顔をした。
直後、


「ははっ!」


声を出して笑った。


「…あ、の?」
「あぁ、すまない。…君はこの数年で無愛想な『アイツ』にすっかり似てきてしまったな。」
「え?」
「全く同じ台詞を言われたよ。」


エルヴィンさんは困ったような顔でそう言いながらも、どこか楽しそうに見えた。


「…別に報告するほどのことでもないですが、」
「うん?」
「『リヴァイ兵長』とはただの上官と部下です。そう言った発言はやめてください。」
「え?」


私の言葉に、エルヴィンさんは面を食らったような顔をした。


「……あぁ、そうか。」
「はい、そうです。」
「なら私が立候補しようかな?」


その言葉に、今度はきっと、私が面を食らったような顔を、したんじゃないかと思う。


「…そ、いう、冗談を言えるまで、回復して良かったですね。」
「おや、冗談と取られてしまったか。それは残念だ。」


エルヴィンさんはどこか楽しそうな声で言った。


「…動けるようになったらここに来るように言われたのですが…。」


それにどう対応すべきかわからない私は、話を逸らすことにした。


「あぁ…。私の現状を踏まえて、君がいてくれる方が助かると言うことになってね。」
「…右腕の代わり、と言うことですか?」
「まさか!」
「違うんですか?」
「…と、言うか、そう捉えていたことが驚きなんだがな…。」


エルヴィンさんは少しだけ、眉間にシワを寄せた。


「私は憲兵にマークされている。…厳密に言うと王政に、だがな。」
「…」
「かと言って何もしないわけにもいかないだろう。」
「はい。」
「だから出来る範囲で動くつもりだが、いつ内通者が現れるとも限らない。」
「…はい。」
「それも身内から出ないとも限らないだろう?」


エルヴィンさんの言葉では、104期の…ライナーとベルトルトを指しているのか、それとも他のことを指しているのかは、わからなかった。


「そこで、だ。君にはしばらくの間、私と行動を共にしてもらい、不審な『何か』が聞こえたら教えてほしいと思ってね。」


エルヴィンさんが自分の耳を指差しながら言った。


「こういうことは本当に信頼出来る者にしか頼めない。」
「…それは寝首をかかれると言うことですか?」
「その可能性もなくもないが、それよりも私の動きが中央に筒抜けになることを避けたい。やってくれるね?」


最後のその一言には、もう、先ほどまで冗談を言っていた「エルヴィンさん」の姿はなかった。


「それが『命令』ならば。」
「助かる。」


後にして思うのは、この瞬間から、私もこの不条理で残酷な世界に、反撃の狼煙をあげたんじゃないか、と言うことだ。



prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -