Attack On Titan


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ラブソングをキミに


信じるバカ 1


「昨日は急用が出来たそうですが、もう大丈夫なんですか?」


翌朝、ニックさんに朝食を届けに行くとそう尋ねられた。


「はい。突然すみませんでした。」


当初モブリットさんが言った通り、ニックさんの存在はやはり兵団内においてもあまり目立たないようにしなければいけないようで、昨日私が不在中はモブリットさんと同じ班(つまりハンジさんの班)の二ファが変わりにニックさんの世話をしてくれていたようだった。


「巨人がローゼに現れてから今日で4日…。王都がどうなっているのか、あなたはわかりますか?」


普段、ニックさんは話しかけてこない。
珍しくニックさんが私に声をかけてきたと思ったら、そんな内容だった。


「王都のことは、私にはわかりません。」
「…」
「ただ、ローゼの人間は模擬訓練通り、王都地下へ避難した、と言うことくらいしか…。」
「…そうですか…」


マリアが陥落した後、政府は「もし、ローゼが落ちたら」と言う想定の下、元々存在していた王都の地下に巨大な備蓄庫を含む街の整備を始めた。
もしもの場合は、ローゼの人間は全てその地下街に誘導される。
…でも…。
その地下街に備蓄されている食料は、1週間分と言ったところなはずだ。
つまり…、壁内最後の平和は、ローゼ陥落後、1週間で終わる…。
後はマリア陥落時、ローゼ内の治安が著しく悪化したように、きっと王都も含むシーナ全体が…。


「団長は、どうなりましたか?」
「一命は取り留めました。まだ起き上がることは出来ないようですが…。」
「そうですか…。不幸中の幸いですね。」


ニックさんは、ローゼの人間だと言う話だから、本来ならその地下街に行かなければいけないはずだった人だ。
そんな人が、世間から身を隠さなければいけないと言う理由で兵舎に住むだなんて、この人はいったい…。


「…私が何者か、気になりますか?」


私の思いに気づいたのか、ニックさんはそう言ってきた。
…気にならないと言えば、嘘になる。
だけど…。


「椅子職人のニックさん。『上官』からそう伺っています。それが全てです。」
「…そうですか…。」


何も、変わらない。
例えあの部屋を出たとしても、私のリヴァイさんに対する信頼は、変わらない。
ニックさんをここに匿うことはハンジさんの意思だそうだ。
でもこの非常時に、ハンジさんが独断でそんなこと(しかも本当にただの一般人なら尚の事)するだなんて、あり得ない。
ということは、エルヴィンさんの意識がまだはっきりしない今、これはリヴァイさんの意思でも、ある。
何かしらの理由があり、ニックさんを匿い、そしてなるべく人の目に触れることのないように過ごさせる必要があると、リヴァイさんが判断したことだ。
…ならそれを不信に思う方が、間違っている…。


「今日1日の報告だ。」


エルヴィンさんが倒れてから、リヴァイさんは1日の終わりに今いる兵士を食堂に集めその日あった出来事の共有を計っている。
…相変わらず、寝不足、疲労で顔色がよくなさそうだけど、リヴァイさんも、何も変わらない。
淡々と、起こった出来事を語る。
…そんな日が2日続いた。


「明日の予定だが、ハンジ率いる生体調査班がラガコ村に向かう。」


ここ数日の定例と化した報告会の最後の言葉に、ピクリと体が反応した。


「巨人発生当時のことを知りかつラガコ村出身者である104期コニー・スプリンガーを同行させるつもりだ。」


その言葉にリヴァイさんを見るけど、リヴァイさんは私の方は見ず、全体を見ながら淡々と語った。
そしてその日の「報告会」が終わり、リヴァイさんの元へ近づいた。


「リヴァイさん、」
「…」


リヴァイさんは無言で私の方を向いた。


「私も、ラガコ村に同行させてもらえませんか?」
「………ハンジが許可を出したらな。」


そう言ってリヴァイさんはチラッ、と、ハンジさんに視線を投げた。


「あぁ…、そうだね。コニーだけじゃなく、フィーナも、確認してくれると助かるよ。」


ハンジさんの言うこの「確認」と言うのは、ラガコ村の…私の家に現在も拘束されている巨人の確認作業だ。
コニー曰く…ママに似ている巨人、とのことだ…。


「じゃあ明朝、」


ハンジさんの許可をもらって、私もハンジさんの生態調査班に同行することになった。

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bkm

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