Attack On Titan


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ラブソングをキミに


変化した日常の定着 1


846年もあと少しで終わると言う頃。
私たち調査兵団のウォール・ローゼ内の本部兼宿舎が設けられ、巨人の侵攻で延期とされていた訓練兵の入団、歓迎式が行われた。


「グンタ・シュルツです。」


訓練兵期間である3年の間に巨人侵攻された今期の新兵は、その脅威を目の当たりにしたため、訓練修了者自体が少ないとのことだった。
だからなのか、


「エルド・ジン。駐屯兵団から来ました。」


他の兵団から編入してくる者も多数受け入れる、異例の年になった。
そしてこの年の入団、歓迎式からエルヴィンさんは正式に団長として、ハンジさん、ミケさんは分隊長として、そしてリヴァイさんは兵士長として壇上に立つことになった。
…何もかも、「あの日」から変わっていった。


「キミがフィーナ?」


聞きなれない声に振り返ると、


「…駐屯兵団から、来た?」
「そう。エルド・ジン。」


穏やかに微笑む、金髪の男の人が立っていた。


「リコ・プレチェンスカから聞いている。『入団前から調査兵団に目をつけられた哀れな友人』の話を。」


エルドさんはそう言うと困ったように笑っていた。
…リコちゃん、が?


「同じ班だったんだ。リコとは。」
「そう、なんです、ね…。」


予期せぬところからリコちゃんの名前を聞いて、驚いた。


「いつも聞かされていたよ。立体機動を扱わせたら右に出る者がいないとか。」
「そ、んな、ことは、」
「リコ自慢の親友だそうだ。」


エルドさんの言葉に、どこか気恥ずかしいと言う思いを、隠せないでいた。
その後二言三言、エルドさんと話、これからよろしく、と言って別れた。
今回の入団、歓迎式では、私が入団した時に在籍していた人数には遠く及ばないものの、それでも一時は壊滅寸前まで言った調査兵団に再び「活気」と言うものが戻ってきた気がした。


「…なんだ、まだ起きてやがったのか…。」


私は今だ魘され、眠れなくなる日があり…、だからなのか仮宿舎から本部兼宿舎に移行してもなお、リヴァイさんと同じ部屋で生活することを、ある種義務的にエルヴィンさんから言い渡された。
と、リヴァイさんが言っていた。


「あ、すみません。今寝ます。」


「兵士長」と言う役職になったリヴァイさんと同じ部屋で生活している、と言う点で、他人の目が気にならないわけじゃない。
でも本当に、私たちの間には何もない。
それが別に変だと思わないわけではないけれど、それが当たり前な日常と化してしまっていて、今さらどうこうと言うことはないだろうと思っている。
…それにリヴァイさんは、


「…!…」
「なんだ?どうかしたか?」
「…いえ、なんでもありません…。おやすみなさい。」


たまに、お酒と、微かにだけど…女物の香水の臭いをさせて帰ってくることがある。
誰と?何を?なんて…。
気にならないと言ったら嘘になる。
だけど、「それ」は私が聞くべきことではない。とも、思っている。


「変だろ、それ。」
「…そこまで変じゃないと思う…。」
「絶対変だ。」


たまたま休暇のタイミングが合って、以前約束した通り、リコちゃんとご飯を食べに出かけた。
…巨人によるシガンシナ侵攻、ウォール・マリア陥落時の尊い犠牲者となった同期の調査兵団兵士たち。
唯一無傷で残った私は、新兵ながらエルヴィン・スミス団長率いる班の班員として兵役についているため、他の兵団でもちょっとした噂になっていたようだ。
それを気にかけてくれていたリコちゃんが直球で「お前最近どうなんだ?」と聞いてきたため、ポツリポツリと現状を語った結果がこれだった。


「でも、」
「うん?」
「もう1年近く、そうやって過ごして着てるから…、慣れた?」
「…お前のその少しズレてるところ相変わらずだな…。」


リコちゃんは困ったような顔をしながら、お酒の入ったグラスをグィッと傾けた。
その姿は、訓練兵時代からは考えられなかったけど、すごく様になっていた。


「なん、か、」
「うん?」
「不思議。」
「何が?」
「こうやって、リコちゃんとお酒飲んでることが…。」
「あぁ…。」


リコちゃんが連れてきてくれたお店は、訓練兵の時にみんなが使っていた食堂のような活気はなかったけど、それでも店内にはお客さんがいて、それなりにみんな、前を向いて進んでいるような、そんな雰囲気のお店だった。


「いろいろあったな…、この1年。」
「…そう、だね…。」
「けど、」
「うん?」
「…お前とまた会えて良かった。」
「…リコちゃんも、ね。」


前を向いて進む=忘れるということではない。
「彼ら」の思いや意志も全て受け継いで、進むということだ。


「そう言えば、エルドさんと話したよ?」
「あぁ!良い奴だろ、アイツ。どこかのチビと違ってエラソーに先輩面しないし。」
「…それリヴァイさんのこと?」
「私は一言もそんなこと言ってないけど?」


その意志は、とてもとても、重い。
それに押しつぶされないように、些細なことでも、笑っていた。

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bkm

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