Attack On Titan


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ラブソングをキミに


沈む世界と 6


「ねぇリヴァイ?」
「喋ってねぇで、エルヴィン見習って手動かせクソメガネ。」
「(俺を巻き込まないでくれ…)」
「失礼だな!ちゃんと動かしながら聞いてるだろ!?…それよりさぁ、」
「なんだ?」
「いくらあなたが『兵士長』って言う役職についたからって、今の状況はどうかと思うんだよねぇ…。」
「…なんのことだ?」
「またまたぁ!心辺りあるんだろう?仮とは言え、兵団の宿舎内の一室で男女が一緒に暮らすって、どうなんだろうね?ねぇ、エルヴィン?」
「(だから俺を巻き込むな)まぁ…、推奨はできない、な…。」
「…」
「だろう?『兵士長』自らそういう『風紀』を乱すようなこと、」
「おい、クソバカメガネ。テメェの言い方だと俺とフィーナが何かあるみたいに聞こえるじゃねぇか。」
「いや、だってこれはさぁ、」
「くだらねぇこと言ってんじゃねぇぞテメェ。…誰がガキに欲情するか。」
「「え、」」
「1人じゃ眠れねぇって喚くからベッド貸してやってるだけだろうが、くだらねぇ。ガキに手出すほど困っちゃいねぇよ。…エルヴィン、この書類を駐屯兵団に出してくるぞ。」
「あ?あぁ…。…………………おい、ハンジ。」
「これはまさかの展開じゃないかいっ!?」
「…フィーナはいくつになった?」
「今年で19だよ!もう成人もしてるし、どう考えても『ガキ』って歳じゃないよね!」
「と言うことはやはり、リヴァイはまだ知らないんだな…。」
「ようやく!あのロリコンネタが功を奏してきたんだよ!まさか『あの』リヴァイが!年齢気にして手出さないとか誰も思いもしないだろ!!」
「…ハンジはなんでそんなに必死なんだ?」
「別にリヴァイに壊された18個のメガネたちの敵討ちだなんて思っちゃいないよ!!」
「…18回もリヴァイに何をした…。」




同じ空間で生活をするからと言って、私とリヴァイさんに何かがあるわけがなく。
ただ…。


「…っ!!?……ハァ…ハァ…きゃっ!?」
「…寝ろ。」


夢に魘され、真夜中に飛び起きる私に、リヴァイさんは辛抱強くつきあってくれている。
ただ、それだけの関係だった。


「フィーナ、最近顔色良くなってきたね!ちゃんと眠れてるかい?」


ある朝、ハンジさんにそんなことを聞かれた。


「あ、はい…。最近は、…そうだな、連続で最低でも3時間は眠れてます。」
「そっか。…夢は?まだ見るの?」


私を見て泣き叫ぶ、血まみれのあの人たちの夢を見なくなったと言ったら嘘になる。
だけど…。


「良い夢も、見るようになりました、から。」
「…そう!なら良かった!」


そう言って笑ったハンジさん。
少しずつ、本当に少しずつだけど、みんなに笑顔が戻ってきた。
それはたぶん、私自身にも…。



「ハァ…、ハァ…!」
「た、たす、け、」
「待って!もう少しだからっ!!」
「死にたくないっ!助け、あ、あぁ、ぅわぁぁぁぁぁっ!!!!?」
「…っ、いやぁぁぁぁぁ!!!!」


私は無力だ。
差し伸べた手は決して届かない。
掴み損ねた命は、真っ赤な血と共に宙を舞い、地に堕ちる。
そしてもう2度と、動くことなどない…。
私はなんて、無力で、無能なんだろう。
どうして、今目の前にいる人すら、助けられないのだろう。
真っ白い翼でどこまでも続く空へと飛び立つはずの「自由の翼」は、その片翼を多くの犠牲者の血の色に染めた。
どうして、私は…。



「〜♪〜」


深くて浅い、眠りの淵で優しい声を聞いた。
大切な人のために歌う歌。
…誰が歌っているなんて、そんなのとうに知っている。


「…リヴァイさん…。」
「寝ながら泣けるなんて意外と器用な奴だな。」


目を開けると正面には、仰向けになって目だけこちらを見ているリヴァイさんがいた。
…本当だ。
私、いつの間にか、泣いていたんだ…。
泣いても泣いても、人と言うのは、涙が出る生き物のなんだと、改めて思う。


「〜♪〜」


リヴァイさんは負けず嫌いなんだと思う。
「あの日」私が発音がめちゃくちゃだと言って以来、決して歌詞を歌うことなどなくなった。
だけど…。


「〜♪〜」


なぜ泣いたのか?
どんな夢を見たのか?
そんなこと一切聞かずに、眺めるわけでもない天井を見つめながら、ずっとハミングしてくれていた。
大切な人に贈る、あの歌を。


「リヴァイさん、」
「〜♪〜」
「…良い夢、見れそうな気がします。」
「〜♪〜」


リヴァイさんは返事なんてしない。
…それでこそ、リヴァイさんだと思う。
だってそれでもなお、この歌のように、沈む世界の中で私の心を、救い出してくれるのだから…。
リヴァイさんはただただ、宙を見つめてずっと、子守唄のように、私に聴かせてくれた。

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bkm

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